ぎっくり腰とスポーツ時の軽いケガ
ひと月ほど前にぎっくり腰をして、それから本調子に戻らない、というお客さん(=Pさん)が来られました。「1か月! もっと早くに来られたら良かったのに!」と私が言うと、あの状態で1時間、電車に乗って通ってくるのは怖かったのです、とPさん。……確かに。しかもメチャクチャ暑かったですしね……。
以前の記事にも何度か書いたことですが、ぎっくり腰への施術は簡単です。15分くらいあれば大概カタが付きます。開きっぱなしになった蛇口をキュッとひねって閉めたときのような確実な手応えが得られれば実質の作業は完了で、残りの時間は水浸しになったそこら辺を拭きまわるイメージ。それからあとは、お客さんの身体がきっちり血液を流して痛み物質をさっぱり片付ける、ハイそれで元通り、という感じです。
なのでぎっくり腰における整体への来どきは、した当日、なのじゃないかと私は思っています。「あ、やった!」となってから1~2日で痛みが憎悪し、動けなくなり、そこからまたなんとか動けるようになるまでに人によっては1週間かそれ以上かかる、ようです。
だからその手前の、〈やった〉直後のまだ動ける状態で来院し、悪化させずに収めてしまう、これが最善手かと思います。これなら大抵、1~2日で収まる勘定ですし、痛みのピークももちろん低くて済みます。
ちなみに、施術すべき〈水道の蛇口〉に当たる部分は人それぞれです。足まわりにある場合が多いような印象はありますが、絶対、足!とも言い切れない。ただし検査をすればわりと簡単に見つかりますので、問題としての焦点というかスポットライトが当たった状態にあるのは確かなのだろうと思います。
で、今回もう一人紹介したいのが3か月前にサッカーをしていてボールをスカ蹴りし、それ以来、足首が痛い、腫れて、いくらか熱もあるというお客さん(=Qさん)です。
同じように腫れていても、熱がなければただの血行不良かな、と想像しますが、熱があるなら明らかに炎症が起きています。「3か月も炎症が続いているんですか?! もっと早くに来られたら良かったのに!」。驚く私に、いや、そのうち治るかと思って……とQさん。近所でレントゲンは撮っておられて、骨に異常は無いとのこと。じゃあ靭帯か何かでも傷めてるってことかしらん。
スカ蹴りはしたけれど、蹴ったところは痛くない、根元の足首が痛い、というのが興味深いところです。念のため、足首周りに関連しそうな筋肉その他を広範囲に検査・施術していきます。施術しては、立ってもらって・動いてもらってしつつ、30分くらいで粗方、熱も腫れも引きました。ご本人の立ったときの足の感触も無事改善。
これでまたサッカーをしたら再燃する可能性はありますが、そのときはまたお手数だけど来院願って、再度の施術でトドメを刺すことになります。こればっかりは、実際のハードな動きをしてもらわないことには〈仕上げ〉ができません。
Qさんの場合、そこそこ簡単に改善したところをみると、靭帯なり筋肉なりが切れていたとは考えにくい。まあ、ちょっと、スカ蹴りの際にうっかり変にストレッチしちゃって、その加減が具合悪く働いて自力回復が難しくなった、くらいの状態かと想像します。それで3か月炎症が続く、というのもすごいことですが、まあ、そんなこともあるのでしょうか。
そしてこの場合、ぎっくり腰ほどピンポイントな〈蛇口〉は見つからず、複数のバルブというかネジをあちこち締めた時点で私には、「お、いけたぞ」の満足感が得られます。
起こっている根本の問題は、Pさんのぎっくり腰もQさんのストレッチ傷めも、同じことなのだろうと私は想像しています。
むかし習った知識を引っ張り出して想像すると、どちらも、筋肉の長さを感覚する神経系統(固有受容器)が不具合というか誤作動を起こしている、というアレだろう、と理解しています。そしてこの誤作動は、対処方法さえ知っていれば簡単に解除できます。だから改善の手間も少ないし、施術をしていて得られる手応えも実によく似ている。けれど何故だか、ピンポイントか・複数のバルブ的かが異なる場合がある。
この違いは何に由来するのかな……と考えながら記事を書いていて、気付きました。
・ぎっくり腰は、ケガではない。
・ストレッチ傷めは、それ自体がケガでもある。
この辺りの差が関係するんでないかしら?
記事を書いて、今後の宿題にしようと思っていたのに、いきなり当たってそうな仮説を思いついてしまいました。まあでも、これが正解かどうかはわかりませんから、しばらく、この路線で観察・考察を続けてみようと思います。