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島で暮らした日々のこと①〜上陸編〜

人口1800人弱の島で暮らして3年が経った。
今は、内地に戻るための引越し準備中だ。
たった3年だが、ほぼ都心育ちの私には驚くことがたくさんあった。
まず、島に引っ越してきたときのことから思い返してみようと思う。

※以下は別のnoteに投稿したものを再編集し加筆したものです。



2021年4月

スーツケースをガラガラさせて、島に上陸した。

引っ越し代をなるべく安く済ませるために、35ℓのリュックを背負い
トートバックを持ち、スーツケースにビニル傘をぶっ刺して
さらにそこに100均のビニル素材の大きめエコバックをぶら下げるという夜逃げ感満載の出立ちで降り立った。

心機一転の土地に降り立つにしてはあまりにもダサすぎる。

夫は仕事の都合で上陸早々別行動の予定で港に迎えにきていた車に乗り込んだ。
島は車社会で、港にはたくさんのお迎えの方の姿があり
夫同様に島についたほとんどの人は迎えの車に乗り、村に消えていった。
心細さを抱えつつ、自分は車に乗れない(迎えがない)という恥ずかしさで
脇目も振らずに歩き始めた。
・・・歩かないと泣くと思った。

重いスーツケースをガラガラさせて歩き始めてすぐ
私の横を夫が乗った車が走り去っていった。
・・・泣いた。

一応、説明しておくが夫が非情なわけでは決してない。
夫はすぐに仕事に向かわなければならなかったし
当時私たちはまだ籍を入れていなかったので「家族」ではなかったし
赴任早々に「恋人も来てるので同乗させたい」などと言える状況ではなかった。
私自身が、自分の出立も相まって感傷的になっていただけなので
夫を責めないでほしい。

少し歩くと砂浜が現れた。とても綺麗な砂浜だった。
海は青く澄んでいて、海独特の磯臭さすら感じない。
水平線が丸く、ずっと先まで海だった。
その綺麗さに感動しつつも、涙はなかなか止まらなかった。
この時点で、車とバイクにはすれ違うものの歩く人には一人も出会わない。

島暮らしは、憧れだった。
人ごみは苦手だし、忙しなく生きていたくなくて島で海を眺める生活を送りたいと、本気で、思っていた。
だから、島で暮らすことが決まって嬉しかった。

住まいは、夫の仕事で用意されていた。
築何年なのかもわからないような古い建物で
網戸は建て付けが悪くほとんど機能していない。
何の??と思うほどあちこちに隙間が空いていた。

新居に着いたらまず虫対策をせよ!と
夫から◯ース◯ッドを焚く仕事を任されていたので、早速取りかかった。
モクモクさせている間の2時間、海をただ眺めて時間を潰した。
説明書には2時間以上経ってから部屋に入るーと書かれていたが
夕方の海が寒すぎて、2時間きっかりでドアを開けた。
心配になる程に煙っていて、喉が痛くなって、涙が出た。

いろんな意味の涙だった。

窓を全て開け放ち、空気を入れ替えている間に夕食の買い出しに行った。

見知らぬ土地で道に迷うこともなく、あっさり島唯一のスーパーに辿り着き
とりあえずのお弁当を買って帰った。

みんなが「どこの人かしら」「見ない顔ね」と言っているような気がした。

シンとした知らない部屋で一人、夫の帰りを待つのが怖かった。

寂しすぎたので退職日に大好きだった上司からもらった手紙を読み返した。
逆効果。号泣した。
(この手紙を、読んでは泣く・・・という日々を3〜4日過ごした)

家から出ると海が見える。うるさいほどに波の音が聞こえる。
苦手だったたくさんの音から解放されて、過ごしやすい環境にきたはずなのに
なかなか心は落ち着かなかった。

海を見るたび「来てしまった」と思った。
「やっと来れた」ではなく。

私がどんな気持ちでいても、時間は流れるし、ここに来たことは変わらないし。
大切な夫は、隣にいるし。
怖いけど、不安だけど、やっていくしかないんだと海を見ながら考えた。

さて、引っ越しといえば荷物だが。
海を渡って引っ越し荷物を運ぶのはなかなか大変だった。
まず、夫の仕事上内示が出るのが遅い(3月)ので
引っ越し業者の手配を始められるのも遅い。
3月過ぎてから4月1日に配送を完了するように諸々手配しなければならない。
しかも、船で送るのでコンテナの手配もある。
結果、4月1日に新居へ荷物を配送してもらうのは無理だった。

エアマットをスーツケースに入れて持ち込み
3日間、エアマットで寝て、洗濯もせず
スーパーの惣菜で過ごした。
なかなかハード。
体的にも、胃的にも。

配送されるはずの日。
荷物が来ない。待てど暮らせど、うんともすんとも。

業者に電話してみると「今日?持っていっていいの?」みたいなリアクション。
どうやら催促の電話を入れないといけなかったらしい。
何そのシステム。

こうして私の島暮らしが開幕。
不安しかない。

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