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「明日役立つ本は、すぐに役立たなくなる」 福原義春さんが残した言葉の意味
ゴルフが人気復活だそうです。「おじさんの接待ゴルフ」ではなく、最近はウェアもおしゃれになって、気軽に始める人も増えている様子。
私はゴルフをしませんが、実家の家族はほぼ全員(姪や甥まで)ゴルフをするので、私も一瞬迷ったことがあります。始めようかな、でもほかにやりたいことが多すぎるし……と。
その私の悩みを吹き飛ばしてくれたのが、当時資生堂の名誉会長だった福原義春さんです。15年ほど前、インタビューをする機会に恵まれました。
福原さんは本と植物を愛し、自宅で蘭を育てていることでも有名です。経営者として忙しい中でどう時間を捻出されているのか、という問いへの答えでした。
「僕はゴルフをやらないんです。その時間に本を読んでいるんですよ」
ビジネス書も小説もさまざまなものを読み、特にエッセイが好きだとのこと。インタビューではエッセイの愛読書を紹介してもらいました。内田百閒、植草甚一、寺田寅彦、團伊玖磨、メーテルリンク……すらすらと出てくる書名からは、「エッセイは生き方を考える本」だと話す福原さんの人生への思いが見えるようでした。
そして一言、「実利を求めて本を読む人も多いけれど、明日すぐに役に立つ本は、たいていすぐに役に立たなくなる本なんです」とも。ゴルフをしないのも、エッセイを読むのも、そこに「好き」という思いと強い意志があるのを感じました。
今週、福原さんが92歳で亡くなったと報じられました。執務室にきちんと掛けられたシックなジャケットや、古典から新刊までが並ぶ豊かな本棚の様子が思い出されます。
(2023.9.7)