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特急「しまかぜ」と外宮と内宮と。その3

3日目の朝、昨夜呑みすぎた割にはスッキリと目が覚め「これもお伊勢さんのおかげかな」なんて、もう参拝したかの如くバチ当たりなことを思う私。

まずは今日1日のカロリーを摂取すべく、朝食バイキングの会場へがある2階のフロアへエレベーターで降ります。

7時前にもかかわらず、すでに多くの方が朝食をとっていて

「座るとこあるかな?」

と空席を探しつつバイキングの列に並びました。

並べられた料理はというと、なかなか豪華なラインナップで朝からワクワクしてきました。

なんでしょう、宿の朝食って普段の2〜3割増しの量が食べれるのは私だけ?いや、皆さんそうじゃないかと。

このあと歩くことを考え、満腹の一歩手前で箸を止め、さあいよいよ初めてのお伊勢参りです。

そもそも、なぜ今お伊勢参りを思い立ったのかと言いますと、上皇様が生前退位をお決めになられた時からこの旅を考えておりました。

加えてこの時期、仕事の休みが取りやすかったので思い切った次第です。

そして、このお伊勢参りがこの年の5月4日、皇居での一般参賀に行くことを決意させることになります。

朝食会場から部屋へ戻り、伊勢神宮へ趣くのに失礼がない服に身を包み、ガイドセンターから届いたメールに示してある集合場所、外宮「日除橋」前へと向かいました。

宿から約10分、昨夜美味しい料理を頂いた「伊勢網元食堂」の前を通り、外宮「火除橋」へ到着。

ガイドさんはそれらしい出立ちで、すぐに見つける事ができました。

お互い自己紹介を済ませ

「他の方はまだ来られてないですね」

と尋ねる私に

「今日はnozomi99さんお一人ですよ」

とガイドさん。

なんと、ガイドさんを独り占めです。

まず、神宮内が写真撮影禁止であることを告げられ「えっ」っとなる私に

「神宮内にあるもの全て神聖なものですので、くれぐれもお願いします」

とガイドさん。

iPhoneをカバンにしまって、ガイドさんについて火除橋を渡ります。

歩きながら参道の歩き方や鳥居をくぐるときの作法などのレクチャーを受けます。

神宮の中に入ると空気が一変。

ピーンと優しく張り詰めたような感じで、気持ちが引き締まります。

手水舎(ここにも作法が)で手と口を清め、この外宮は「天照大御神」のお食事を司る「豊受大御神」をお祀りしていること、衣食住、産業の守り神として崇敬されている事などを学びながら御正宮へと向かいます。

別宮もそうですが、特に御正宮は質素でありながらも崇高な雰囲気漂う別世界のもののように思えました。

「この外宮と内宮では建物の造りが明らかに違う部分があるのでよく見ておいてください」

と、いくつかのポイントを教わりました。

ここでガイドさんから

「神宮では何かをお願いするのではなく、日頃の感謝をお伝えし、お礼を申し上げるところ」

であることを学び、しっかりと感謝の気持ちをお伝えして外宮を後にしました。

外宮と内宮は思った以上に離れており、バスで約20分ほどかかるとのこと。

そもそも神宮と呼ばれているのは、建物だけではなく周辺の山や川を含む約5500haもの敷地全て、との事です。

バスで移動中、猿田彦神社の前を通るとき

「この道路は真珠王の御木本幸吉氏が米寿を迎えた際に、外宮と内宮の移動時間短縮のため資金提供して造られたもの」

という物語を教えてもらい、真珠養殖の創始者の偉大さの感じながら内宮へと向かう車窓を眺めバスに揺られました。

内宮へ到着し、よくメディアで目にする「宇治橋」を渡り、再び張り詰めた空間へと足を踏み入れます。

外宮で教えてもらった作法を思い出しながら、皇室のご祖神である「天照大御神」をお祀りする内宮をゆっくりと進みます。

外宮もそうでしたが、ここ内宮も木々がかなり生い茂っており、ガイドさん曰く

「神宮にあるもの全て神聖なものなので、倒れかかってきたりして危ない場合以外手を加えないんです」

とのこと。そうやって先人たちもこの神宮を後世に託してきたんだと感じました。

御正宮でのお参りを終え、宇治橋へ向かう際に

外宮と内宮の建物の造りが違うポイントの最終レクチャーを受け

そして、この国にある神社は外宮か内宮のどちらかの造りを模して造られていることを学び

神宮では祝い事の際、紅白の幕は使わず、黒白の幕を使うとのこと

そもそも黒白は神だけが使うことを許された崇高なもので、俗世の人間が祝い事で使う事を許されているのは紅白であると

人生で一度だけ黒白を使ってよいのは寿命が尽き、仏になった時だけであることを教えられ、私の死生観が変わりました。

そして、天皇陛下が毎日、国家国民の平穏を神に願うお祈りを捧げてくださっていることを聞き、神宮の凛とした空気に包まれていることもあり、涙が溢れました。

そして、日頃の感謝の気持ちをお伝えする為に5月、天皇陛下がお出ましになる一般参賀の場にこの身を置くことを心に決めました。

約4時間、ここには書き切れないくらいの、この国が神を崇めてきた歴史や皇室の歴史、神宮のことなど、知らなかった事をたくさん教えてもらい、私の人生初のとても有意義な時間は終わりました。

ガイドさんの詰所でガイド料を支払い、お世話になったガイドさんにお礼を伝えると

「nozomi99さん、とても興味深く質問をしてくれたので私もつい、案内するのに熱が入りました。本来なら3時間のコースだったのですが、nozomi99さんの熱心さに応えていたらつい時間が過ぎていました。まだ、神宮にきた事がない方に今日覚えた事をお伝えください」

と言っていただき、握手を交わしお別れしました。

胸を熱くしたままおかげ横丁を散策し、伊勢うどんを頂き、地ビールでクールダウンして宿へと向かいました。

ん?まだ15時前だぞ‥

特急「しまかぜ」と外宮と内宮と。番外編へつづく‥



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