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一般参賀と東京と。その3

5月4日

一般参賀当日。

宿を4時過ぎに出て、秋葉原駅から山手線外回りで東京駅へ向かいます。

土曜日の早朝、秋葉原駅のホームに上がり中央・総武線、山手線、京浜東北線各ホームの探索です。

どのホームも人はまばらで、時折E233系がVVVFインバータを響かせやって来ては出ていくのを繰り返してます。

山手線ホームに戻ると同時に外回りが到着。

ガラガラの車内で過ごすこと約10分で東京駅5番ホームに到着し、丸の内出口へ向かう途中で

「1回目の陛下のお出ましが10時、トイレのこともあるし、ご飯や飲み物どうしようかな?」 

としばし思案。

結局カロリーメイト2つとミネラルウォーターを1本買って、改札を出ます。

行幸通りを皇居へと進み、内堀通りへ近づくとそこにはすでに数百人の人が「早朝者1」のプラカードを掲げた警察官のいる大きな枠の中にいるではありませんか。

どうやら行幸通りをいくつかの枠に分け、一定の人数ごとに管理するようです。

私は「早朝者1」の枠に陣取る事ができ

「早起きしてよかったぁ」

と一息ついて大きめのハンカチを敷き腰を下ろすことに。

そこで内堀通りに目を向けるとそこにはかなりの人数の一団が!

徹夜組が500人位、歩道の一角を埋め尽くしています。

その一団とは別の、さらに皇居前広場に近い歩道の一角に、趣の異なる雰囲気漂う人たちが数十人陣取っています。

周囲にいる警察官に咎められる様子もないので

「道路の占有許可でも取ってるのかな?」

なんて勘ぐりながら隣に座った方に朝の挨拶をし、フル充電してきたiPhoneで時間潰しのゲーム「Threes」に没頭することに。

トイレに行きたくなったので、敷いた大きめのハンカチの上にペットボトルを置き、隣の方に会釈して少し離れた場所にあるトイレへ行ってみるとそこそこの行列ができています。

「朝ごはん控えておいて良かったぁ」

としみじみ。

大きめのハンカチを敷いた場所に戻り、隣の方へ

「トイレ行くときは遠慮なく言ってくださいね」

と軽くコミュニケーションを取りながら再び「Threes」に没頭することに。

ベストスコアが出たところでバッテリーも半分になったので、iPhoneをポケットにしまい、周りを見渡してみると‥

時間は6時過ぎ、後ろの方は凄いことになってます。

人が埋め尽くす枠はいくつも出来、ツアー客の枠も増え、各メディアがインタビュー取材をあちこちで始め、周囲のざわつきが波のようにこちらに伝わって来ます。

とにかく皇居前は異様な雰囲気です。

この光景の中で印象的だったのが、私のいる一団の中に5人くらいの家族と思しき方達がいます。

その方達の中にはかなりのご高齢の方がおられ、サポートする方の荷物の中に紙おむつと汚物を入れると思われる容器のようなものが見えました。

陛下にご拝謁するための凄い覚悟を感じ、胸が熱くなりました。

7時前なったころ、趣の異なる一団に礼服に身を纏った数人が近づき、それまで陣取っていた人たちが一様に深々と頭を下げ、その場を入れ替わっています。

それからも続々と礼服に身を纏った方達がその一団に加わります。

どうやら、政治結社の方のようです。

もう一度トイレに行き、人波が動き始めるのを待ちます。

そして7時半過ぎ、警察官を先頭にその一団が動き始め、徹夜組がそれに続きます。
徹夜組が皇居前広場に入るとすぐに私のいる「早朝者1」の一団も内堀通りを渡り、皇居前広場を先の一団の後に続きます。

道中、日の丸の手旗を配るボランティアの方から手旗をもらい、更に列に続きます。

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途中、皇居前広場にある検査場で身体検査を受け、持っているペットボトルの水を警察官の目の前で飲むよう促されます。危険な液体を持ち込ませない為のようです。

私は事前に調べていたので、手荷物を東京駅のコインロッカーに預けておいたので身体検査はそれだけで済みましたが、手荷物がある人は違うレーンの列に並べられ、手荷物をテーブルの上に置き、中を見せており時間を取られています。

幟を掲げた先頭集団がゆっくりと進み、正門から二重橋へ右カーブしながら一定の歩幅とスピードで陛下がお出ましになる宮殿へと徐々に近づきます。

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宮殿前の広場に皇宮警察官の誘導で規則正しく並び、その時をじっと待ちます。

上空にはたくさんの報道ヘリがホバリングしてこの様子を伝えているようです。

一定間隔で配置されている皇宮警察官の鋭い目が周囲を警戒する中、喉が渇いたので水を飲もうとペットボトルのふたを開けた瞬間、近くにいた皇宮警察官が私にその鋭い目を向けます。

緊張感漂う中に身を置き続けること約40分、女性の声で

「まもなく皇族御一家がお出ましになります。なおその際、天皇陛下がお言葉を述べられます」

とアナウンス。

周囲に漂う緊張感はさらに数段高まります。

燕尾服に身を纏った皇居の職員が、宮殿の2階を覆うガラスの向こうに現れると、先頭の幟が降ろされ辺りは時が止まったような静寂に包まれます

‥ガラスの向こうの障子が静かに開き始めるのと同時に、地鳴りのような歓声とともに広場のあちこちから

「天皇陛下、バンザーイ。天皇陛下、バンザーイ!」

その興奮のるつぼの中、両陛下を皮切りに皇族方が静かにお出ましになりました。

地鳴りのような歓声はさらに声量を増し、手旗を振る音も大きな波の音の如くあたりに響きます。

私も涙を滲ませながら手旗を振り、伊勢神宮のことを思い出し陛下を拝謁させていただきました。

陛下が胸ポケットから原稿を取り出し始めると再び静寂が周囲を包みます。

陛下がお言葉を述べられるのを涙ながらに聞き入る人、じっと頭を下げたまま聞き入る人、胸に手を合わせ聞き入る人‥

‥陛下のお言葉が終わると同時に再び地鳴りのような歓声と、手旗を振る大きな波のような音、そして

「天皇陛下、バンザーイ。天皇陛下、バンザーイ!」

の声が大合唱のように広場を包み、上空を漂うヘリにまで届きそうです。

やがて、皇族方が手を振りながら襖の向こうへ姿を移します。

再び幟が掲げられ、先頭の一団が国歌斉唱を始めました。

私もそれに加わり、斉唱が終わると坂下門へ名残惜しさを抱きながら向かいます。

こうして私の人生初の貴重な体験は終わり、皇居を後にしました。

坂下門を出るとそこには凄まじい人並みが広がっており、後で知ることですがこの日は14万人越えの人出だったとのこと、それも納得です。

コロナ禍の今、このような体験をする事ができない状況がいつまで続くのかわかりませんが

「出口のないトンネルは無い」

先人たちが幾度もの困難を乗り越え、この国を私たちに委ねている今、とにかく生き抜き、明日を迎えようと心に刻んだ1日でした。





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