PYREXと秋 うまくいく日もいかない日も
すっかり秋らしくなり洗濯物が乾かない季節がやってきた。雨は降っていないはずなのに湿った空気が身体を包みいつまでも離れない。こんな日に末っ子が学校でトイレに行けなかったため濡れてしまった服を毎日のように洗うのは少し憂鬱だ。ビタミンDもそろそろ飲まなきゃ。少し不良なわたしは一年のうち秋冬しか飲んでいない。
授業が始まってからてんやわんや。まだ二つだが10月末からプラス二つ、そしてほぼ勉強できないワンオペ冬休みから1月始めのテストと締め切り。また息子の補習校や現地校の宿題からまだ詳細は決まってないが年末から来年にかけて忙しくなるPTA活動に娘のぷちぽん活動。キャパが広くないわたしには頭と手があと何個も必要なくらいのストレスっぷりだ。全然手と頭は動いてないのに心が右往左往していて忙しい。
世の中には私の上位互換のような人がいる。この表現、失礼かな、、根底にある考え方や生き方の軸は似ているが、わたしの何倍もパワフルでエネルギッシュでポジティブモンスターであり有名大学を経て大手企業を乗り越えて海外に出てさらにキャリアを積んでいく女性たち。わたしも一応留学していたがイギリス人すらほとんど知らない田舎の大学でしかも閉校済み、決して大手ではない中堅企業、これからも大きなキャリアを掴むことはないだろう。別に有名大学も大手企業も入りたかったわけではない。ただ選ばれた人間として得られる他者からの評価を無視できるほど強くもないのだ。
彼女たちが考えるように考えよう。行動的な人の思考には全てがつまっている。フランスの哲学者アンリ・ベルクソンも言っているではないか。
わたしは行動的な人ではない。思慮深くもないのだが。彼らと自分の違いは、わたしの中にあるこのうじうじとした感情。小さな違和感や不条理さを無視できない肥大した感受性なのではないかと思う。
今朝スーパーで買い物をした。朝早く子ども達を送迎後に行ったので髪もぼさぼさ、眼鏡に部屋着。たんまりと食料品を買い込む他に初めてPyrexの保存容器を買ってみた。19ユーロもするので迷ったが、絶対使えるだろうし安物のプラスチック容器には飽き飽きしていたのだ。迷わずセルフレジに進む。自分のペースで荷物を入れることができるので気に入っている。普段見慣れない若い女性の店員がなぜか見張るように後ろに佇んでいた。気にせず全て会計を終えたところ、彼女が何も言わず私が使ったセルフレジでレシートを再度出した。気にせず外へ出ようとすると「Pyrexのお会計した?入ってないよね?」と話しかけてきたではないか。もちろん会計済みなことを伝えてレシートを見せると問題なく出れたのだが。
これってなんだろう。私がぼさぼさでお金があまりなさそうなのにPyrexを購入したから盗んだと間違われた?外国人、アジア人の見た目だから?また彼女は新人でスリについて気を付けるよう言われてたとか。セルフレジなのに大量に買い込みすぎて怪しかったから?答えはないし彼女は聞いただけなのだ。答えた後も言いがかりなどもつけてない。なのにこのもやもやは何なのだろう。こんな時人種差別と結びつけるのは簡単だがそんな安易な結びつけはしたくない。正義という言葉で彼女の行動を裁きたくもない。でも傷ついたり悲しかった自分を無視するのだけは決してしないと決めた。人種の授業をとったのに人種差別に正面から向き合うエッセイは今のわたしにはまだ書けない。
こんな時いつも会える同僚や同級生がいたら笑いながらこの話を伝えたのに。わたしはすごく1人だ。昨日予期せぬ残業で21時近くに帰ってきた夫は今日は何時に帰ってくるんだろう。昨日は子ども達にもうまくいかない自分の家事やその他もろもろで怒ってしまい、その事実にさらに落ち込んだ。今日は夫が突然残業になってもイライラしないようできるだけ軽い夕ご飯にしよう。
そんなうまくいかない日々は少しさぼってお気に入りの本や漫画で自分を慰める。お迎えまでの時間だけ。家事も勉強もさぼって何かに没頭したら少し忘れられる気がする。決して強い人間ではないけど、たくさんのことを今まで乗り越えてきた。コーヒーと普段買わないチョコレートのドーナツで秋の陽ざしを浴びながらしばし過ごそう。