アルバイトを経て15年。人材育成に情熱をそそぐ研修のプロが歩むキャリアの軌跡 〈日本マクドナルド株式会社〉
人それぞれの考え方、価値観が日々の学び。多様性を感じる研修の場は感動と発見がある
東日本マクドナルド本部でコンサルタントとして、店舗リーダーとなるシフトマネージャー、デパートメントマネージャーと、2クラスの人材育成や研修を担当する芦野さん。店舗運営を担う人材候補者を育てるのが彼女の仕事だ。芦野さんの研修では一方的なマニュアル伝達ではなく、様々な年代の意見や価値観を吸い上げ共有することを大切にしている。「人それぞれ考え方、価値観が違って当たり前。研修ではいつも感動や発見がある」。嬉々とした表情でこう語る芦野さんだが、この考えに至るまでには店舗時代の苦悩があった。彼女はどんなキャリアを歩んできたのだろうか。
アルバイト時代の経験が転機に。失敗をどう活かすか一緒に考えられる存在になりたい
もともとオペラ歌手の道を目指していた芦野さんは、イタリア留学を目指しながらマクドナルドのクルーとしてアルバイトをしていた。夢を追いかける一方で、マクドナルドで働くことも楽しく、辞める踏ん切りがなかなかつかなかった。そんな中、マクドナルドが当時行っていた音楽イベントにかかわる機会があり、“音楽はどこにいても携われるし、続けられるのでは“と、気持ちに変化が表れたという。さらに、彼女がマクドナルドで働き続けることを選択したもう1つの理由がある。それは当時の店長の存在だ。
一般的に、芦野さんが影響を受けた店長は違っていた。
「当時の上司は、アルバイトに対しても社員に対しても怒らずに指導する方でした。『成長段階だから大丈夫』とミスを受け入れ、責めることなく一緒に対策を考えてくれる。こんな人がいるんだ!と、私自身の価値観を大きく変える存在でした。」
若手は上司の背中をしっかり見ている。芦野さんもその一人だ。上司の生き様を胸に、芦野さんの人材育成への決意はここから始まる。将来、上司のような指導ができる自分になりたい。そして、人を育てることでマクドナルドに貢献したいという気持ちが生まれ、上司の背中を追い続けることとなった。
新人時代に感じた苦悩。人を動かす極意は自分が変わること
芦野さんは5年間の現場経験を経た後、憧れだったハンバーガー大学でリーダーシップを学び店長の職に就くこととなる。今では人材育成のプロとして、様々な年代の多様性や価値観を取り入れながら日々研修に活かしているが、入社当初から順風満帆だったわけではない。入社して初めて配属された店舗は、店舗で働いているベテランクルーとのコミュニケーションに苦戦したと笑う。
現場で長年働いているクルーにはそれぞれのやり方があり、成功体験がある。特に長年続く店舗なら、なおさらだ。そこで自分より若い上司が配属され、やり方の変更や提案をされた場合、今までの自分達の実績を否定されたような気持ちになってしまうのだ。
当時は経験が浅く、なぜ現場は受け入れてくれないのかと苦悩した芦野さんだったが、上司に相談する中で解決の糸口を見つける。
「当時の私は自分自身の意見しか伝えず、店舗のスタッフがどんなことで困っているのか、耳を傾けていなかったのです。だからスタッフの声を聞いた上で、自分の考えを共有するように意識と行動を変えました。そうすることで協力体制が整い、人間関係が円滑になり、店舗内の活気にも繋がっていったのです。」
この現場での経験が、芦野さんを内面から成長させる大きな起爆剤となり、後のコンサルタント業務にも活かされている。現場のクルーの大変さや苦労を予測し、店長世間一般の対応の仕方も想像ができる。両者の声を聞き取る力が身についているからこそ、適切なアドバイスができる。彼女の人材育成は表面的なものではなく、人と人との深い関わりまで考えた育成業務なのだろう。
多様性を感じる人材育成。価値観を変えてくれる存在が自身の成長を促す
芦野さんは現在、アルバイトや社員へ向けてリーダーシップに関する研修を行っている。以前は対面での研修が主流であったが、現在はオンラインに切り替えて、3つのクラスを担当している。学生や主婦など年齢層の異なるクルーが一緒に参加するため、コミュニケーションにおいて気をつけていることも多い。
「先輩も学生も主婦も、同じリーダーを目指す仲間です。誰に対しても話し方は変えていませんが、声のトーンはすごく気をつけています。そして参加者の国籍、性別等問わず、一人一人を尊重して話すよう心がけています。」
また、オンライン研修では挙手をして発言をする場面が多いため、発言しやすい雰囲気づくりやファシリテートも意識する。クラスに参加している方々は年代が幅広く、バックグラウンドもさまざま。中には自分の発言に自信が持てないと感じる参加者もいるため、初めは発言を遠慮してしまうそう。他の人とは違う見解を話すことに抵抗を持つ人も多いが、芦野さんはどのような方法で解決しているのだろうか。
「“考え方は人それぞれ違う。発言することには決して間違いはない“と強く伝えています。ひとつ世代が違うだけで、時代背景や価値観がまったく異なります。それを違和感としてとらえるのではなく、新しい視点として次の研修に活かす。そうすることで世代間のギャップを埋め、組織全体で価値観がアップデートされていくのです。」
さまざまな年代が集まる研修の場は多様な価値観に触れる絶好の機会だ。このように多様性から学ぶ場を提供できることに非常にやりがいを感じていると、芦野さんは目を輝かせる。
キャリアを諦めない女性へ。ライフステージが変わっても自分の信念を持つ社会を願う
クルーの成長や人材育成に情熱をそそいでいる芦野さんだが、家族や友人と過ごすプライベートの時間も大切にしているという。年齢を重ねるごとに、北海道にいる家族や友人と会う時間は尊いものであり、有限であると感じたからだ。
キャリアアップしていくと有給や長期休暇が取りづらいという声がいまだに聞こえてくる世の中。ましてやマクドナルドはお客様を相手にする業務のため、休みの調整は難しいのではないだろうか。
「マクドナルドでは店舗でも営業でも、上司でも新入社員でも、有給取得は必須です。お客様を相手にする職種の場合、休暇の取得は難しい部と思うかもしれませんが、店舗全体で協力体制を整えていれば調整は十分可能です。私も店長時代、クルーに支えられながらしっかりお休みは取っていました。」
このチームワークは、産休育休に関しても当てはまる。マクドナルドでは、産休育休の制度や女性が様々なライフステージを迎えても働き続けられる環境を整えている。この環境を活かして活躍している女性社員も数多く在籍する。キャリアを重ねると、相対的に男性よりも女性の数は少なくなるが、これから社会に出る女性には、ライフスタイルが変わってもキャリアアップを諦めてほしくないと、芦野さんは強く願う。
「ライフステージが変わっても、自分が将来どうなりたいか、 常に自分の理想を持ち続けて欲しいです。子どもを生んだとしても、キャリアを目指すことを諦めないでほしい」
芦野さんは、ある女性上司をロールモデルにしている。彼女の背中を追いかけながら日々邁進する芦野さんはどんな夢を描いているのだろうか。
「マクドナルドに興味を持つ人がどんな想いを持って入社を決めるのか。その考えにとても興味があります。今後は採用担当の立場でいい人材を採用し、マクドナルドに貢献したいです。」
“人”を軸にした仕事で経験を重ねていきたいという強い意志が伝わってくる。彼女の目線の先には常に尊敬する上司たちが存在する。きっと芦野さんも多彩なキャリアを歩むロールモデル後輩に背中を見せていく存在になっていくだろう。
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