30代でクリエイターからマーケターへ。デジタルアシスタント技術の最前線で輝く創造力 〈アイプロスペクト・ジャパン〉
ルーティンタスクなし。既存スキルと新たな挑戦の掛け合わせで描くグローバルキャリア
英国を本拠地に56ヶ国以上に94のオフィスを展開、デジタルマーケティング業界をリードするグローバルマーケティングエージェンシー、アイプロスペクト。日本支社であるアイプロスペクト・ジャパン株式会社で、主軸ビジネスのデジタル広告運用の部署とは別に、2019年新たに立ち上がったのがiP Labである。Leaderを務める土田晃子さんは一般的な広告代理店勤務者とは一線を画すキャリアパスを辿ってこのポジションに就いた。翌春で現職に就いて丸1年。音声検索に代表されるVoiceのマーケティングへの応用や、ニューロサイエンスを加味した新しいマーケティングアプローチの研究・調査・企画・開発を行うチームで、彼女は自分のペースをしっかりと保ちながら日本で発展途上のテクノロジーの普及のため日々奔走中。キャリアチェンジ後の現在とグローバルビジネスの第一線で輝く働く女性としてのモチベーションについて尋ねた。
ウェブデザイナーとして仙台の大手企業に。現キャリアへの伏線となったクリエイター経験
現在所属するiP Labではマーケター、リサーチャー、プロモーターなど、実に幅広い領域の職務を担当している土田さん。過去のキャリアと語学力を生かし、ウェブサイトのローカライズや構築、イベント販促物のデザインやロゴ作成をこなしながら、AmazonやGoogleといったデジタルアシスタントビジネスをグローバルに手掛ける企業とのプロジェクトやイベントなどフロントに立つ役割も兼ねているというから驚きだ。そんなマルチに活躍する彼女はグラフィックデザイナーとしてキャリアをスタートし、個人事業主としてフリーランスも経験している。Webデザイン、フロントエンジニアリングなどクリエイターやエンジニアとして仙台の大手企業で勤務後、30代に入ってから次なるキャリアアップの舞台としてマーケティング業界を選んだ。
「20代は日々納期に追われる毎日でした。紙媒体のグラフィックデザインからキャリアをスタートし、WEBデザイン、コーディングなど今の仕事にも生きるスキルを養うことが出来たので、忙しい毎日の中でも自分のものにするため努力できたことは良かったなと思っています。」
オンラインビジネス全般に言えることだが、ウェブデザインやフロントエンジニアリングの仕事はとかく多忙を極める。20代だったからこそできた無理もあっただろうし、まずは目の前の仕事をこなすことで習得できた力もあっただろう。 仕事をひと通り自分で回せるようになり少しずつ余裕も出てきた頃、キャリアについて考えるようになったという。
多忙な会社員時代を経てフリーランスへ。組織も個人も経験し芽生えた働き方ポリシー
紙媒体を扱うデザイン事務所の転換期を迎え、勤めていた出版系のデザイン事務所が解散したことをきっかけにフリーランスへと転向した。バリバリ仕事を取って拡大させる意図などはなく、地道に東京のクライアントを相手に仙台でフリーランサー生活を送ることになる。
独立志向が強く意気込んで個人事業主になった訳ではなく、一つの経験としてそれまで培ったウェブデザインのスキルを生かしてみた。しかしこの経験を通し、思いがけず仕事をする“意識・姿勢”について気付きがあったという。
「会社員の時は色んな意味で守られていたのも事実。フリーランスで仕事をすると全ては自分の肩にかかってきますよね。お仕事をしなければ収入はゼロな訳ですし、沢山詰め込めば年収も上がる。全ては自分次第で、会社員であってもフリーランスであっても、ルーティンワークや与えられた仕事をこなすだけではつまらないし成長もあまりないなと気付いたんです。自分で次を考えて動いていくことの大切さを痛感したように思います。」
30代になり、ロケーションも新たにキャリアチェンジをしようと次なるステージへと歩み始めた。
世の中に伝わってこそ意味がある。市場との繋がりを追えるいま、見えてきた新たな挑戦
「デザイナーの仕事は好きでしたが、自分が作ったものがどんな風に世の中で使われて、その成果はどうなっているのか。納品して終わりではなく、影響力などを効果測定しその先まで知りたいという気持ちが少しずつ湧いていました。マーケティングという業種に興味を持ったのはそのためです。」
クリエイターとしてモノを作りリリースするだけではなく、何故その設計にする必要があったのか、制作物は実際どんな風に使われているのか、改善点はどこなのか、人々に浸透しているのか等、ヒト・モノの流れを加味したビジネス領域に興味を持った。
作って終わりではない、作ったものが実際に浸透し使われなければ意味がないと感じた彼女は、デジタルマーケティングの道へとキャリアチェンジしたのだ。縁あってアイプロスペクト・ジャパンへ入社し、クライアントのWEBサイトにおけるUI/UXによるコンバージョンの改善提案業務に就く。
3年後、物怖じしないスタイルと黙々と自分のペースでクリエイティブに仕事をする確かな姿勢が評価され、立ち上げメンバーとしてiP Labデジタルアシスタントイノベーションのリーダーに抜擢された。
日本のVoiceビジネスの可能性を拡げたい。大変と背中合わせのやり甲斐が今は楽しみ
土田さんはいま、自社のグローバルネットワークを活かし、国内外のデジタルアシスタント業界のマーケティング調査や動向のキャッチアップを行い、日本におけるデジタルアシスタント普及と利用率向上を目指したマーケティングのサポートなどを行っている。
「新しい技術や情報からサービスを新規開拓していく仕事は、大変ですがやりがいがあると感じています。某日系自動車企業の音声認識アプリ開発を姉妹会社と協業したり、デジタルアシスタントのスキル開発会社とイベントを共催したりと、初めて取り組むことも盛り沢山で、日々奮闘中です。」
聞けば、日本では音声認識アプリをコマーシャルツールとして活用する例がまだほとんどないものの、米国やAPACのいくつかの国々では既にVoice First Market(音声認識が最優先事項として扱われるマーケット)になりつつあり、そのプロモーションやデジタルアシスタント普及の一端を日本で担えることにモチベーションが湧くのだそう。
2019年末には、アイプロスペクトの全グローバルオフィスを対象にわずか10名が選ばれるライジング・スターという、飛躍が目立った社員に贈られるステータスに見事選ばれた。
自らの得意分野や習得済みのスキルを存分に生かしつつ、押しつけがましさのないリラックスした雰囲気でプロジェクトをリードし、確かなキャリアパスを歩む彼女はこれまでのバリキャリ系ワーキングウーマンとは全く異なる、現代のグローバルビジネスウーマンなのかもしれない。