非常勤講師渡り歩記② 〜映像制作会社から出戻り〜
非常勤の現場を傭兵の如く渡り歩いた記録を連載しているこのシリーズですが、私は副業フリーランスデザイナーでもあります。
デザイナー専業として映像制作会社に勤務した事もありましたが、結局非常勤講師に出戻りしました。
今回はその辺りの話をします。
シリーズの記事↓
憧れのスタイル
専門性を副業にしている非常勤講師に憧れがあった。
というのも、高校時代の恩師が非常勤講師兼デザイナーだったのだ。
その道の実力者で、他の教員とは違う雰囲気があり、授業中に度々してくれる業界の話も新鮮で面白かった。
大学もその先生の母校を選んだ。
今は憧れの先生と同じスタイルで結構満足している。
しかし、自分の実力に賭けてみたい気持ちになって無茶をしてみた事もあるのだ。
オチを先に言うと、ヤバい会社に足を突っ込んだ事で、教職の良さを再認識し出戻りした。
”でもしか先生”上等!
「''でも、しか''で先生になれる人は結局才能があったんだ」という言葉を頼りにしている。
結果的にはやってみてよかったし、経験を積ませてもらったし、今の選択にも満足できているので、オーライ!
事のいきさつ
社会人1年目、初任校の夏休みの時期に、大学の卒業制作で声をかけてくれた方の事務所の手伝いに行った。
美術セット制作の仕事だった。
夏休みが明けてからも業務委託契約を結んで、絵コンテや小道具、衣装などの手伝いをしていた。
面白いし、大きい仕事をどんどん任せてもらえて楽しかった。
それなりに稼ぎも良かったし、誘ってもらえたのが嬉しくて、専念しようと年度末を期に一旦教職から離脱した。
仕事は面白かった!
映像制作会社の業務内容は自分の得意分野と合っていて、楽しかった。
片手で足りる程度のメンバーの小さな映像制作会社で「大道具、小道具、衣装デザイン&制作、絵コンテ、イメージボード、グラフィックデザイン」等を担当していた。
十徳ナイフみたいな範囲の広さだが、高校美術科からの美大工芸科で、かなり網羅的に一通りやっていた賜物である。
元々アーティストよりもデザイナー寄りで、ニーズに合わせて作ることが得意だったので向いていたように思う。
現場仕事の時はロケのアシスタントや、放送の手伝い、ADなんかもした。
いつも締め切りに追われていて、出張も多かったけれど、撮影ロケは面白かったし、ホテルや食事は毎回豪華だった。
あと事務所に猫もいた。ネコチャン!!!カワイー!サイコー!!
大学を出たばかりの小娘に目にかけて、こちらが心配になる程投資してくれた。
今もその経験のおかげでデザインを副業にできているのでその点はとても感謝している。
しかし…大問題。
遵法意識がクソだったのだ。
辞めてから一年足らずで、税務署から訴訟されたらしい。あぶね〜!
違和感を感じた時に突っ込んでみたところ、雇用契約に関する認識がかなりずれている事が判明。
更に掻き回してみると、「雇用形態もへったくれもなく、そもそも契約書も法律に詳しい人から物言いが入ったとかなんとか、突き返してくる。あなたと法的な交渉をするつもりはないです。クライアントや業界の慣習が勝り、民法どうのこうのじゃないのです。」(原文ママ)
…こりゃあもうお話になりませんわね。
遵法精神を真っ向から否定する相手との雇用契約は危険過ぎる。
こうなったら三十六計逃げるに如かず。
こういう時にカネやモノを惜しむとより多くのものを取り落とす事になる。
ここにいては何かしらの片棒を担がされかねない。
お世話になりました!楽しかったです!さようなら!!
どうやら、私は社長の事を雇用主だと思っていたのに対して、社長は私の事を舎弟だと思っていた。
そう考えると、知らない間に舎弟だと思われていた私も災難だが、舎弟だと思って金も目も掛けて世話してやっていた相手に雇用契約を理由に逃げられた社長も気の毒である。
しばらくは私がする前提で組んでいた案件が立ち行かなくなって各方面でトラブったりもしているのを、あちゃ〜と思いながら外から眺めていた。
その後、関係各所から漏れ聞こえてくる噂によると、給与未払いだとか税金トラブルだとか、展示会出禁だとかか、かなり大変だったらしい。
最近確認したら会社のホームページも無くなっていた。
早めに違和感に気付いて逃げられて本当によかった。
教育現場はなんだかんだ風土が良い。
教職は良い。人間たちに遵法精神がある。おかしいことはおかしいと言える空気がある。
綺麗事が言える風土最高〜!
各々の専門分野を持った鍋蓋型組織最高!
相手の意見をとりあえず聞く良識がある!
パワハラセクハラはいけない事だってみんな知っている!
現状を変えなければいけないと現場の人間たちが思っている!
他業種と比べると男女間格差もかなりフラット!
よほど困窮しているのでなければ、遵法精神や改善意識のないグレーより、あるブラックの方が精神的にかなりマシだ。
お陰で今日も #教師のバトン は元気良く燃えている。
結構な事じゃないか。
現状に問題意識を持てる遵法精神の確かな人間が現場に多い業界で、声を上げて改善したいと思える使命感とやりがいがある。
なんだかんだ辞めずに、声をあげて改善に期待している。
本当に楽しい仕事、良い同僚、良い職場だよ。
(それに胡座をかいたシステムは本当にどうかと思う。)
今回はお気に入りの現代短歌を紹介して終わりにしたいと思います。
次回、出戻りによって年度途中から赴任したのは、短ランボンタンスタイルのトラディショナルヤンキーの闊歩する中学校。
非常勤教科主任!欠員に次ぐ欠員!怒鳴り込む保護者!事件!波乱!
お楽しみに!!