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1人用ボードゲームに未来がありそうで面白い(#ソロダンProject の所感)

この記事は、Board Game Design Advent Calendar 2022の24日目に寄稿したものです。
他にも良記事がたくさんなので、ぜひ読んでみてください!

特に13日目のくじらだまさんの記事が、ちょうど1人用ゲームについてで、この記事と合わせて読まれると深まるかと思います!

今回の私の記事、だいぶ長くなってしまったのと、文体とか整ってないし色々直したいんですが、勢いで公開してしまいます!

本記事から得られるメリット

  • 1人用ボードゲーム(ソロボドゲ)のゲームデザイン知見が増える。

  • 上記を知ることで、ソロボドゲ以外のゲームデザインの造詣が深まる。

  • 「ソロダンProject」が何かわかる。

本記事における「ソロボドゲ」とは、「複数人プレイが主軸で、1人プレイも可能」というものはひとまず除外しています。
あくまで「1人プレイを主軸としてつくられている」ことを重視しており、その上で複数人プレイができるものもOKとしています。

自己紹介

のざくに https://twitter.com/nozakuni

  • 1987年、神奈川県横浜市生まれ。東京工芸大学 芸術学部 アニメーション学科 ゲームコース(現ゲーム学科)卒の1期生。卒業制作で2人用デッキ構築対戦ゲーム『INKLUDE』をチームで制作。http://2nks.web.fc2.com/

  • 大学生だった2010~11年頃からゲームマーケットに参加・出展(当時は浅草)。2014年からボドゲPodcast「モテゲー男子更衣室」をやったり、ボドゲイベントを色々やったり、参加したり。

  • アナログゲームメーカー「アークライト」に2015年4月から所属。国産ボドゲ編集者。2022年夏から編集長に。

  • 役割はプロデューサー、ディレクター、ゲームデザイナー、ルールライター、「アークライト・ゲーム賞」審査員など。一時期はゲームマーケット事務局の中心運営メンバーでもあったが、今は制作に軸足。

  • 携わってきたタイトル:『ito』シリーズ、「Kaiju on the Earth」シリーズ(企画言い出しっぺ)、『タイガー&ドラゴン』(ゲーム原案)、『タイムボム』、など70タイトル以上。

  • 目標:面白さと遊びやすさの真理を追求して、100万本ヒット。

  • ソロダンProject主宰。

  • 生きがい:携わったボドゲがたくさん売れ、仮説が証明できたとき。2人の子ども(3歳♂、2歳♀)と触れ合っているとき。

  • 苦手なこと:時間を守ること。興味ないことをやったり覚えたりすること。興味あることをほどほどで終えること。我慢すること。出たがりな自分を抑えること(本当よくない。精進します……)。

ソロボドゲに未来がありそうとは?

以下のようなことを考えており、日本にソロボドゲ市場をつくりたい(拡大したい)と思っています。

  • ボドゲをやらない(買わない)理由としてよく言われるのが「でも自分は一緒に遊ぶ人がいないから」。その理由をソロボドゲで埋められないかという仮説。

  • 「映画・アニメを観る」「マンガ・ラノベを読む」といった体験は1人ですることが多いため、真にIPと相性がいいボドゲってソロボドゲなのでは?という仮説。人気ソロボドゲをつくれれば、IPボドゲに展開できるのではないか。

こういったことから、ボドゲ市場をさらに発展させるのにソロボドゲが重要なのでは?という仮説があり、ただ自分一人でできることは限られているので、みんなで一緒にやれないかと考えました。

この検証を仕事としてやろうとすると、「時間がかかる」ことと「見返りが不透明」なので、まずは趣味の範囲でやってみようと考えました。

コロナ禍でのボードゲーマーの様子を観察し、ソロボドゲ市場の余地はありそうかもな?と思ったのも、実際に動く後押しになりました。

なぜ「ソロボドゲProject」ではなく「ソロダンProject」なのか?

こういうタイプの試みは、最初にアンテナの高い人が乗ってきてくれて、だんだんマスに普及していくものかと思っています。
最初は中心地の熱量の高さが重要で、かつまずはゲームの種類が増える必要があります。
なので、ボードゲームデザイナーが乗り気になってくれて、参加ハードルが低くなるように名称やレギュレーションを考えました。

「ダンジョン」はゲームでよく使われるモチーフなので、あえてそれで縛ることで、ゲームがつくりやすくなり、最初はその方が広めやすいと考えました。自分がダンジョンとか好き、というのも大きいです。
仕事ではマス向けのことをやっているので、中々「ダンジョン」みたいなのは優先度を上げづらいので、せっかく趣味でやるなら普段なかなかできないことをやりたいなと。

デジタルゲームのローグライク系の体験を、アナログでサクッとやれないか?とか、MtGなどTCGのデッキ一人回しの感じをサクッと味わえるボドゲってないのか?といった個人的欲求もあったので。

さらに言えば、自分が数年前から育児などするようになり、なかなかオープンなボドゲ会に行く時間を捻出しづらくなり、特に若者の流行やボドゲに対する反応を観察できる機会が激減してしまったので、今回の件を口実に、若者との接点も増やせないかなと思ったりしていました(NamikiさんにソロダンProjectのロゴデザインを依頼したのもその一環)。

途中では「本当に需要ありそうか?」を確認したくて、探りのツイートをしてみたりしました。

この頃はまだソロボドゲについて今以上に探り探りだったので、1本いいソロボドゲがつくりたいなーというくらいだった気がします。
(まぁウラではコロナ前からKaiju on the Earth4弾としてソロボドゲ『クアント』を仕込んでいたんですが、他のソロボドゲもやってみたく)

ただこのツイートが予想外に反響をいただいたのと、その反響に「つくりたい」側と「遊んでみたい」側の両方があったので、これはもっと大きなムーブメントにできるかもしれないぞ!?と思い、企画を広げ、「ソロダンProject」という名称でまとめてみました。

ソロダンProjectとは?

企画発表ツイート

企画書はまとめ直して、最新版は↓noteに上げてあります。

企画書の中に思いなど書いているので、この記事では省略します。よかったら見てみてください。
最新情報はTwitterをご覧ください。

ソロダンProjectをやってみて気づいたこと

ゲームデザインの側面

  • ソロボドゲは、ルールを間違って遊んでいた場合にその間違いを指摘してくれる人がいないため、より直感的でシンプルなルールであることが求められる。→つまりマスに受け入れられるゲームデザインが研究されるスピードが早いのではと思った。

  • 「人間同士のやりとりの面白さ」に頼れないので、それ以外で「わざわざプレイする価値」を発生させるための研究が進むはず。→この研究は複数人用ボドゲにも応用できるはず。既存のゲームメカニクスも、ソロボドゲで使うといつもと違った効果が出ることがあり、面白い。総じてソロボドゲにはまだ掘られていないゲームデザイン空間が多く存在しそう(ゲムマ2015の頃に感じていた感覚、というか)。

  • ストーリー系ボドゲと組み合わせた発展の余地を感じた。

ちょっと脱線。
ゲームデザインを勉強していると必ず通るであろう、ロジェ・カイヨワの「遊びの4要素」という有名な分類がありますが、野澤はそこに、『パックマン』の岩谷徹さんや『ゼビウス』の遠藤雅伸さんから学んだ知見をミックスして、以下の自論としています。
 1.アゴン:競争、勝負
 2.アレア:運、ギャンブル
 3.ミミクリ:ごっこ遊び、コスプレ、やってみた
 4.イリンクス:めまい、非日常
 5.ロジック:物語、起承転結、考察、推理
特筆する点としては、イリンクスを「非日常」と翻訳していること(遠藤雅伸さん理論)、5要素めにストーリーや考察の楽しみを追加していること(岩谷徹さん理論を野澤が発展解釈)かと思います。

  • ストーリー系ボドゲというのは「5.ロジック」の要素が活かされているボドゲ。→ストーリー系ボドゲは「同じルール(ゲームデザイン)で複数のゲームが遊べる」展開ができ、それが1人で楽しめるとなると、これまでにない形でのマスへの広げ方ができそう。ただしネタバレ厳禁系にするとSNSなどの口コミ拡散の障害となるので、工夫は必要。

  • 『ドラクエ』のような存在の国民的ソロボドゲがつくれないか?→1人用。自分のペースで進められ、時間さえかければ誰でもできる。シリーズごとに基本のゲームデザインは共通している。でも毎回新要素があって、多くのファンがいる、という構造。『ポケモン』のような、他プレイヤーとのゆるい関係性までデザインできたら、さらにすごいことができるかも。

  • 売り場や展開の仕方が既存のボドゲビジネスから逸脱できる可能性。→「遊ぶ相手が必要」「(買う自分が)ちゃんと遊べるかわからない」という心配がクリアできるなら、売る際にコンシェルジュが必要ないので、専門店以外の色々な売り場に置かれやすい。→また、デジタルと組み合わせて、例えばボドゲのプレイ内容で展開を分岐させて、エンディングに応じてネットにつないでストーリーを展開して……といったアナデジ組み合わせの体験がつくれるかも。代替現実ゲームなどのノウハウが応用可能?

  • 配信者やMODとの相性がいいかも。→例えば『マインクラフト』が配信やMODで盛り上がって広まっているイメージが、ボドゲにも転用できるかも。ボドゲにUGCの概念をどう持ち込むか(どう制御し演出するか)の研究はまだあまりされていないように思う。ハウスルールなどはUGCと言えるが、それをゲームデザイナー側が想定・利用し演出するような試み。上手くやれれば定期刊行ビジネスが成立する?

  • 手癖でやれる、脳トレや占いのようなものの可能性。→クロスワードパズル雑誌のように定期的に商品を買ってもらえる方式でないとビジネスにしづらいから発展しにくい?「いまやる」「わざわざアナログでやる」をどう演出するかが課題。タロットカードなどのノウハウが応用可能?

  • ハイスコア系とデジタルの組み合わせの可能性。→スコアをSNSなどに上げて比べる遊び。面倒だと「完全デジタルでいいじゃん」となるので、どう実装・演出するか。

イベントの側面

ソロダンProjectを遊ぶイベント「ソロダンMeeting」というのを数回やってみて、初めて気づいた発見が色々ありました(主催してくれている、あいくさん(https://twitter.com/aiku666)ありがとうございます!)。
毎月やっているので、よかったら↓イベントページも見てみてください!

  • 「参加者が1人いればイベントが最低限成立する」というのは実際やってみて安心感が大きかった。→特定人数が必要なイベントのように当日キャンセルなどで慌てる必要もないし、人を誘う際に「1人でも楽しめますよ。なんせ1人用ゲームのイベントなんでw」と言えて気楽。

  • 少人数でイベントが成立するので、平日のボドゲカフェでのイベントとして発展の可能性がある。→ボドゲカフェの人からよく聞く話で、「休日はお客さんが多いため、むしろイベントすると邪魔になる可能性がある」「平日のお客さんが少ないので増やしたい」というのがありますが、ソロボドゲのイベントは店の隅でもイベントが立てられ、上記の取り回しのよさなので、芽があるかも。

  • ソロボドゲをみんなでやってみたら、以外と面白かった(ボドゲの現物を複数用意するのがオススメ)。→同じソロボドゲを同時に3人で横並びで3卓立ててやってみたら、ソロでやっているのに、不思議と一体感があった。隣の様子をチラ見して茶々を入れ合ったりしても面白かった。結果を隣同士で比べ合ったり、展開がどうだったか話し合ったりするのも面白い体験だった。

  • 遊んでいたソロボドゲが終わったらすぐ別のソロボドゲを始められる。何なら「合わないな」と思ったら途中でやめることすらできる。他の人がそのソロボドゲを遊んでいる様子を見て、ルールを把握しながら、説明を聞いて、すぐ参加できる。待ち時間が発生しない。→イベントの途中参加、途中退出が気軽で、そういう意味でも平日に向いている。

  • ソロダンMeetingの場合、ゲームデザイナー同士が集まるので、制作の情報交換もでき密度が高い。

最近の注目ソロボドゲ6選

普段「これが面白い!」みたいなのは政治的な側面から、あんまりツイートしにくくなってしまったのですが、ソロダンProjectには大義名分があるので、せっかくなので最後にいくつか紹介させてください!

1.『私は一人、ダンジョンで目が覚めた』

Tempered GAMES https://twitter.com/asclannasdango

  • メカニクスをシンプルに味わえる系。最近話題の『アーク・ノヴァ』に採用されているアクション選択式を用いているので、面白さは担保されている。またタイムトラック式の手番管理との組み合わせも上手くまとまっていて面白い。

  • 何度も遊びたくなる要素として、ストーリーと死に覚え要素が効いている。メカニクスの拡張、変更だけでなくストーリーの追加変更などで商品展開の未来が見える。

  • 現状で完成度が高い。

2.『だんじょにんぐべい!』

ボボン・ボン・ボジワーイ連邦 https://twitter.com/venture0

  • ローグライクゲームやゲームブックの体験をほぼカードのみの小箱で、短時間・比較的シンプルにまとめてある。→デジタルのローグライクは当たり前ながらデジタルゲームに適したゲームデザインがされているので、単にアナログに移植しても面白くならない(煩雑になって「デジタルで良いじゃん」となるパターンが多い)。そんな中で、上手く落とし込まれている。拡張性も感じる。

  • 個人的には、現状まだちょっと用語や要素などが煩雑に思えるので、整理したパターンを研究してみたい。

3.『迷子の夜』

KOAXA https://twitter.com/593koaxa

  • 現状出ている版は運要素がかなり高く荒削りだが、すごろくがベースでシンプルなので、手癖でできる+ローグライクのような中毒性を出せるかもしれない可能性がある。

  • ソロダンMeetingにてダンジョンフレーバーの改良版を持ち込んでくださっているので、その行く末に期待中。

4.『まっくらダンジョン』

SoLunerG https://twitter.com/SoLunerG

  • 「これはやられた!」と多くの人が思ったに違いない。子どもの妄想を現実にしたかのような一作。文具×ボドゲという部分でも興味深い。

  • 遊んだ人たちが自分のダンジョンをつくれたり、それをUPして他のプレイヤーに共有できる仕組みをやられており、前述したUGCの演出まわりのことをまさにやられている部分も興味深い。

5.『破宮のデクテット』

ヨフカシプロジェクト https://twitter.com/yofukashipj

  • 実はまだ未プレイなんですが……1人用だからとストーリーを味わう部分を強化した一作。ストーリー系ソロボドゲ。

6.Kaiju on the Earth『クアント』

アークライトゲームズ https://twitter.com/ArclightGames

  • 最後に思いっきり自薦ですみませんが、60~120分級の本格ソロボドゲが成立するか、というチャレンジも含んでいる一作です。

  • ゲームプレイとしてはハイスコアを目指す、攻略(効率化)系です。2023年春発売予定。制作大詰め。遅れ気味。頑張ります……!

番外.ソロダンMeetingの試作品たち

  • 毎回色々な試作品が持ち込まれています。面白いゲームがいくつも制作されていっているので、ここ何年かのゲームマーケットが楽しみです。

  • ゲームシステムやフレーバーも色々で、魔法学校、デッキ圧縮、ワーカープレイスメント、釣り、などなど、多様なゲームが遊べます。

  • 興味を持たれた方は、ぜひご参加ください!(プレイ専門での参加も大歓迎です!)

雑まとめ

  • ボドゲの5年後10年後の未来にソロボドゲが重要なのでは?と思っているので、ソロボドゲ市場を拡大したい!

  • まずは「ソロダンProject」として動いているので、ぜひ一緒に盛り上げられたら嬉しいです!

  • 月一くらいでイベント「ソロダンMeeting」やっているので、ぜひご参加いただいて、直接お話できたらと!(ここには書けなかったことも、まだまだあるので!)

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