本質を探るトレーニング「思いこみを捨てる」(2/4)
本質を探る旅、2つ目のキーワードは、「思いこみを捨てる」です。
当たり前を疑う、「それは本当だろうか?」と常に自問する…これはどの分野でも大切なことです。
一般には、分からないことは事典で調べたり、ネット検索したりします。しかし、事典の情報が古かったら? 間違っていたら?
あり得る話ですよね。専門分野では、事典の改訂に携わる同僚が多いです。第一線で学会誌への投稿、発表の場に身を置いているからこそ、固定された情報が古いことがよくわかっているのですね。
辞書においても、最新版を手元に置くことが好いとされています。例外はラテン語の辞書くらいでしょう(笑)。
本質に近づくには、データの出典元がはっきりしていることと、可能な限り自分の目でオリジナルを見て確認することです。私も勉強する時は、現代譜と原典(写本が複数ある場合は原典同士の比較も)すべて見ます。現代譜の場合は、改訂責任者の解釈によって、または印刷ミスが原因です。原典同士の相違点は当時の写字者の癖や写し間違えが原因です。「写し違え」? そうです、当時の写字者も元にした楽譜があったはず。そうなると、作曲家が作品を書いた時点をゼロとすると、現存の複数の写本も写字者の対応の仕方から、ゼロからの距離感がわかってくるのです。
専門の音楽文献学と写本学の例えから、「思いこみを捨てる」には、自分の目で見て自分で理由付けすることを習慣にするのだ大切だと分かります。