ちなんでばかりの人生を送ってきました。

これまで幾度、ちなんできたのだろうか。
接続詞多めでお送りいたします。

言葉には人の軌跡が宿る。使うワードのチョイスも、アクセントも、抑揚も。ぜんぶに人生がにじむ。
細部にまで人生がにじむから、同じ言葉でもちょっとずつ違う。なのに、自分の枠の中にいるとすぐ忘れちゃう。自分の言葉は世界共通だと思い込んでしまう。

でも、自分では気がついてない「癖」に、突然気がつくことがある。誰かから言われたり、なんとなく書いたものを読み返してたら引っかかったり。そんなとき見つかる自分だけのスタンダード。

口癖、書き癖。

話し手や書き手側の位置にいるときは気がつけないけれど、時間が経ってそのときの自分と距離を離れると、急に気になる。
そんな言葉に出会ったとき、ある種の囚われる感覚に落ちいる。気になり過ぎて、話しにくくなったり書きにくくなったり。消化不良みたいな、胃もたれする言葉のしこり。もう一度自分のものに腹落ちするまで、その感覚はつきまとう。

そう、そいつは唐突に。出会いは突然に。
ある日、わたしの心を刺して居座った。

「ちなみに」

気づいてしまったが故のカジュアルな呪い。気になってからアンテナ張ってみると、めっちゃちなんでる。もう毎日ちなんでるんです。お話でもメールでも文章でも。そういえば、めざましどようびのTOP OF THE WORLDも好きだった。ちなみが過ぎる。

調べてみたら、ちなみにはこんな意味らしい。

前に述べた事柄に、あとから簡単な補足などを付け加えるときに用いる。ついでに言うと。

わたし毎日補足のなかに生きている。前略、補足的人生の歩み。インスタントちょい足しを駆使しながら白米をかっこめるようにしていく。うん、それもある。ありありのありである。

でも圧倒的に多いのは「ちなみに+質問型」の構文じゃないだろうか。
ついでに言うと、この言葉が気になってから耳を立ててたらそこかしこで使われてた。だから、わたしだけじゃないと思う。えっ嘘、わたしだけ?あなたのちなみはどこから?わたしは口から小手先。

ちなみに、ちなみには「因みに」と書く。でかい口である。ちなむときは、けっこう核心を聞いている気がする。ちなまれると気になっちゃうし。なんでわざわざ聞いたんだろう。えっ、気になる。

「ちなみに、これどう?」
「えっ……、別に……」
「……ふーん、そっか」
「…………。ちなみに、何で聞いたんですか?」
「えっ……、別に……」
「…………。そうですか」
「ちなみにさ………。」

エンドレスちなみ合戦になる。察しと思いやりを尊ぶ日本人にとって、外堀から核心に迫るこの質問型構文は相性が良すぎるのかもしれない。
ちなんだほうが本題やないか!って、めちゃくちゃ思い当たる節あるな。ちなみに、と上司やクライアント、自分より決裁権がある人がちなむとロクなことがない気がする。

または、口のなかに大事が残ってるとも言える。完全に言い忘れたとき専用の言葉だなこれ。
もしくは、言葉にできなかったあの想い。あるいは、伝えられなかったあの気持ち。

そんな感情の澱みたちが追いついてきたら、積極的にちなんで書いていきたい。



ちなみに、好きです。

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