凄すぎて言葉が見つからない 藤井新名人誕生
「凄い!」を超えたようなことに出会うと言葉が見つからない。
昨日、藤井聡太六冠が史上最年少名人と七冠を達成した。
将棋を知らないのにミーハーな私は、彼が棋士デビューから29連勝して以来ずっと彼のニュースを追っかけている。将棋はわからないので、もっぱら勝負の結果と彼のコメントや師匠や名だたる棋士たち(この方たちだってめっちゃ凄い)のコメントが楽しみである。
昨日の勝利直後の会見も面白かった。
記者が色んな質問をするが、彼が答えて口を開くまでの時間が異様に長い。困ったようにウーンと目を閉じて「あぁーハイ」とか細い声でボソボソ答え始めるまでに短くて10秒長いと30秒はかかっている。30分近い記者会見だったが、あまりの返答の遅さと壮絶な勝負の直後とは思えないゆったりとした受け答えに思わず眠気を催したほどである。頭の回転は常人を遥かに超えているはずだし言語能力も人並みではない彼が、返答になぜこんなに時間がかかるのか?
今日の朝刊に「考え抜く藤井名人 無限の可能性」というタイトルで寄稿された彼の師匠•杉本昌隆八段の文章にその答えはあった。
『藤井名人は「考える天才」である。あれだけ直感が鋭いのに、正解はわかっているだろうに、対局では更なる最善手を求めて時間を使う。子供の頃のその蓄積が今の藤井名人を支えている。』
杉本師匠は出演した今日お昼のTV番組でもこのように語っている。
「小学生の頃も、何か問いかけると沈黙が長くつづき答えがすぐには返ってこなかった。答えを急がせずに待った」
答えを急がせずじっと待った師匠も凄い。
天才であっても自分独りだけでは天性のものは開花しない。
幸運な出会いと環境があっての今だろう。
新聞記事の師匠の言葉からもうひとつふたつ。
『今、世の中はインターネットで情報を得て、AI(人工知能)で瞬時に答えを弾き出す。・・・だが、この時代だからこそ人が考えることに意味があるのではないか。考え抜いて指された藤井名人の指し手は「AI超え」と評されることがある。私はそこに人の無限の可能性を感じるのだ。』
近年、名人経験者がAIと将棋を指して敗れている。
藤井名人とAIの対戦が見てみたいと今思うのは邪道だろうか?
今回名人を獲得した最終局で勝負を決めた一手も興味深い。
藤井六冠(対戦時)は角を敵陣に打ち込んだのだが、将棋に詳しいTV出演者によると、素人には角の自殺行為としか思えなかったという。それもわずか30秒ほどの早指しであった。数10分や1〜2時間の長考が珍しくない名人戦の重大局面での早指しに渡辺名人は戸惑い、それまで明らかに自分が優勢だった局面に疑いをもち1時間半の長考の末に悪手を打って一挙に形勢が逆転したという。
もし渡辺前名人がAIだったら勝負はどう展開したのだろうか?
人間とAIとの違いは?興味が尽きない。
最後は、藤井名人の今後の目標について。
『名人、そして七冠の現在、次なる目標は当然・・・。それをファンは期待するのだろう。だが、藤井名人の目標は形あるものではないという気もする。本人がいつも語るように「成長」こそが藤井名人の源泉。』
同じようなことをMLB大谷翔平選手の折々のコメントからも感じる。
凡々と生きている自分にとって、彼らはまさに成層圏を超えてはるか宇宙空間を仰ぎ見るような次元ではあるが、残りの人生、自分も形あるものを目指すのではなく、たとえわずかでも成長したいと思わされる藤井名人誕生であった。
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