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離婚のはなし

1年、こつこつ書類をそろえ、家裁で調停してもらい、夏に離婚した。温和に、だけど、絶対に話を戻さない強さで進めた。

ずっと陰鬱な海をモンスターに見つからないよう、抑えて静かに移動しながら、船を進めるような日々。
多分、読み手にその大変さは伝わらないけれど、夫は精神疾患で手帳もちで、強烈な他責。
俺の痛みや不幸や不快はお前のせい、どうにかしないお前が悪いから、俺は悪事を働く!という理不尽な脅しや行動を向けてきて、説得不可だった。

依存があり、必ず何かにはまった。
女や、ガチャや、掻きむしる、買い物など、普通には考えられない度合いだった。
痒くてかくと、肉が紫になり骨が見えるまで掻きむしる。
女に貢ぐと家計が赤字で、引き落とせなくなるまで貢ぐ。

だいたい無差別殺人のニュースがながれたら、絶対「あれ気持わかる、やりに行きたい」という。
私が仕事にいくとき「帰ってくるころには子どもも俺も死んでるかもな」という。
実際にやらないのだけど、今は殺人を匂わせても警察が動くため、彼のツイートで警察が会社に踏み込んだこともあり、私が身元保証でサインした。

いつも、彼は、息をするように嘘をつく。
自分の意見や心の軸がないから、目の前の人に調子良い話をする。別意見の人がいたらそちらにあわせる。
だから、約束が守れないし、どちらかを選べず時間切れまで放置する。
初対面は優しそうだし、とても印象がよいけど、数年すると破綻する。その繰り返し。


誰にも言えないし、言わない。

それを何十年もやると、人間という集団に属さない違う生き物のような自分になる。愚痴は仲間同士であるから言えるもので、私は、この苦しみを誰かと共有できると全く思えなかった。
とにかく、この元夫、息を吐くように嘘をつき、極端な他責、女好き、浪費、依存、そうなるのは私が悪いという絶対変更しない思い込み。

私はそれでも、彼が家族でいたい、と何度も頭を下げるから、極力、穏やかに暮らした。

でも、今回、北関東に義理妹と同居している義母が認知症になり、私が世話をしないことにストレスをため、毎日毎日、声が聞こえる範囲に私がはいる瞬間から、あー頭が痛い、疲れた!と、いうようになった。顔が見えた瞬間に必ずにらみつけてきた。
一度、いたたた、と言うから「どこが痛いの?」と聞いたら、別に痛くない、と言い出したので、さすがに笑った。
お前が悪い、という圧。彼が家族を捨てずに実家に凱旋するために私の死を願われていた。

その中で、子どもを義母の話し相手として派遣したい、と言い出した。
子どもが望むなら構わないけど、望まない場合に、子どもをにらみつけて支配したり脅したりしないでほしい、と返事したら、「はい、わかりました。さよなら。」ときた。

このチャンスを絶対のがさない。
たとえ彼が冗談のつもりだとしても、言質を消させない。
私から言えば、この人はストーカー化する。
これが、生きて逃げるチャンス。

そこから、書類をあつめ、弁護士に相談し、
離婚の調停がはじまると、彼は元の優しそうな姿にもどった。
私が他人なら、彼の痛みや苦しみをどうにかする責任は私ではない、という理屈かもしれない。

円満離婚ということになる。
ものすごく深いダンジョンをそっと探りながら、ようやく地上で空を見たような。

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