マーダーミステリー、推理を楽しむか、物語を楽しむか
マーダーミステリーの楽しみ方について、個人的な考えを書きます。
マーダーミステリーの2つの楽しみ方
マーダーミステリーには大きく2つの楽しみ方があります。
【1】推理、PvP / 正体隠匿を楽しむ
【2】物語、RPを楽しむ
※PvP…Player versus Playerの略。プレイヤー同士が戦うこと。
※正体隠匿…各プレイヤーが自キャラクターの役割や目的を隠して遊ぶゲームシステム。代表例は人狼ゲーム。
※RP…Role Playの略。キャラクターを演じること。
私の肌感覚では、多くのマダミスプレイヤーは (濃淡の差こそあれ) この両方を楽しんでいるわけですが、中にはどちらか一方の楽しみ方を強く重視しているプレイヤーもいます。それは楽しみ方の違いなので、全く悪いことではありません。
楽しみ方の違いによる不運な事故
しかし、たとえば【1】重視のプレイヤーと【2】重視のプレイヤーが同卓した場合、お互いにモヤモヤした感情を抱く可能性はあります。それは端的に言えば、それぞれが従う「ルール」が異なるためです。
ゲームというものは、各プレイヤーが同じルールに則って、ある程度共通の行動原理 (ex. 設定された目標を達成する、得点を増やす) に基づいてプレイすることで、ゲームとして成り立ちます。ところが【1】と【2】の違いは、各プレイヤーの根本的な行動原理を変えてしまう可能性があります。そうすると、お互いにどことなくすれ違い、自分のプレイが空回っているような感覚を覚え、(人によっては同じルールで遊ぼうとしない相手に憤りを覚え、) 気持ちよく遊べなくなってしまう、ということがあり得ます。
そのわかりやすい例が「犯人による自投票」、つまり原則としては犯人であることを隠し他のプレイヤーに罪をなすりつけなければならないプレイヤーが、キャラクターの気持ちを汲み取ることを優先した結果、自分自身が犯人であるという投票をする (≒自白する) というプレイです。【2】に理解のあるプレイヤーであれば、その選択を受け入れてくれると思いますが、【1】を重視するプレイヤーにとっては、それは「勝負を投げ出す」行為に等しいため、モヤモヤした気持ちを抱くと思います。
繰り返しになりますが、これは楽しみ方の違いであって、良し悪しの問題ではありません。しかし、できることなら上記のような不運な事故は避けたいところです。では、そのために何ができるでしょうか?
みんなで楽しむためにできること
まず大上段として、マーダーミステリーに関わるすべての人が、このような「楽しみ方の違い」が存在するということを理解しておくことです。自分とは異なる価値観を持っている人が世の中にはいる、ということを (共感はできないとしても) 理解しておくことは、あらゆる争いを未然に防ぐための最も基本的なスタンスです。
その上でできることですが、私はよくGM (ゲームマスター) をする人間なので、プレイヤーの皆さんには基本的に好きなように遊んでほしいと思っています。最低限のマナーや気配りは必要ですが、プレイヤーは遊ぶ人でありセッションの主役ですから、必要以上に気を遣わず、思うままにのびのび遊んでほしいと思います。
ではGMにできることはといえば、大きく2つあると思います。
1つめは、もし可能であれば、同卓するメンバーを同じ「楽しみ方」ができるプレイヤーで揃えること。あまり神経質になる必要はないと思いますが、明らかにどちらかの楽しみ方を重視している方がいる場合は、親和性の高そうな方と組んであげた方が、結果として全員が楽しめる場になりやすいと思います。
2つめは、セッション中にGMが媒体の役割を果たすこと。具体的にやるべきことはそのときのシナリオやプレイヤーによって変わるため一概には言えませんが、すべてのプレイヤーが楽しめるように、適宜フォローを入れていくことです。たとえば状況説明の読み方に情感を込めてプレイヤーがRPしやすい雰囲気を作ったり、中盤でそれまでの情報を整理してプレイヤーの推理を促したり、といったことが考えられます。
共通の目標は「みんなで楽しい時間を過ごすこと」
さて、ここまでマーダーミステリーの楽しみ方の違いについて書いてきましたが、プレイヤーがどんな楽しみ方を求めていたとしても、共通して言える大目標は「みんなで楽しい時間を過ごすこと」だと思います。そのために (自分も楽しみながら) できることをするのが、GMの役割かなと思います。
余談ですが、人によって楽しみ方が異なることについて、良し悪しではないと書きましたが、私はこの「楽しみ方に違いがある」こと自体はむしろ歓迎すべきことだと思っています。それは、さまざまな楽しみ方のバリエーションがあることが、マーダーミステリーという文化が今後より発展していくためにはプラスに働くと思うからです。木がさまざまな方向に枝を伸ばし葉をつけるように、楽しみ方が多いということは、そのそれぞれに特化したシナリオが生まれたり、特化したプレイヤーが登場したりと、新たな遊びの可能性が広がっていくことに繋がります。まだ生まれて間もないこの遊びが、今後さらに盛り上がり、末永く遊び継がれていくことを、一人のマーダーミステリー好きとして願っています。