今村夏子といういま読むべき作家
皆様、小説はお好きですか?
このNOTEのような限られた空間で楽しまれている方々は
私の想像では小説や映画(単館系)などを嗜み、自分流の
娯楽などが充実しているように勝手に妄想しておりますが…
現代、再注目小説家の1人「今村夏子」について少々。
もちろん、芥川賞受賞作家でもあり
三島賞も受賞、本屋さんで小説コーナーなどを目にする人には
もう、知っていて当然のような女性作家であります。
長編小説「星の子」も映画化され、話題でもあります。
でも、この作家の書く文章。通常の作家とはちょっと違う。
文体は、非常に分かりやすく 単純な日本語が、ただ連なる
小説初心者にも優しいいわゆる「読みやすい」文章なのだが
どのタイトルの小説も、読んでいて「ちょっと違う」と思わされるのだ。
刊行されている本もそう多くない
『こちらあみ子』(2011年1月・筑摩書房/2014年6月・ちくま文庫)
『あひる』(2016年11月・書肆侃侃房/2019年1月・角川文庫)
『星の子』(2017年6月・朝日新聞出版/2019年12月・朝日文庫)
『父と私の桜尾通り商店街』(2019年2月・角川書店)
『むらさきのスカートの女』(2019年6月・朝日新聞出版)
『木になった亜沙』(2020年4月・文芸春秋)
と、たったこれだけ。
名作「こちらあみ子」を書きあげたのち
少し小説から身を引いていたらしいのだが、復活ありがとうございます。
その中でも私が一番オススメするのは
『父と私の桜尾通り商店街(短編集)』に収録されている
「せとのママの誕生日」だ。
この話こそ、真骨頂のように感じる。
せとのママとは、老舗スナックの大ママで齢そこそこの老婆を思わせる描写
そのせとのママの誕生日に集まった3人の元ホステスが、
脇で眠るせとのママが起きるまで、過去の思い出話に浸る
という、いたって普通?のシチュエーションなのだが
今村夏子の異常性が、過去のエピソードに凝縮され
なんだか気持ち悪く、ものすごく少しだけ嫌な気分にさせてくれる。
そして、文体があまりにも奇をてらっていないため
読んでいる自分が、「あれ?これってフィクションだっけ?」
という、変な気分にさせてくれる。
当たり前のようにフィクションなのに、なんだか今村夏子を信じてしまっている怖さみたいなものを感じさせてくれるのだ。
現実を超越した、非リアリティを
その辺にあるかもしれないモノに描き出し
それでも、こちらのリアリティラインを軽く行き来する
巧みなストーリー展開が、心を揺さぶってくれる。
あと、独自のユーモアセンスの高さも相まって気分良く読めてしまう。
だいたい、この人の小説は笑える。
発想の飛躍や角度が、すごい。
大喜利してもかなり面白いのだろうと感じる。
この人にしか、感じ得ない独特の切り取り方。
人間の感情や行動を、シニカルに眺め分析し
予定調和ではない、なんだか変なところに着陸するので
裏切られ感嘆する。
今村夏子はいま読むべき作家であり
この感覚を享受することができれば小説といわず
「あらゆるジャンル」で使える今最も熱い思考システムを
手に入れる事が出来るだろう。
うらやましい。
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