見出し画像

【会社員とアート】どうしたら個性を持って自己表現できるのか

写真を撮ったり、SNSにアップしていると、
よく目にする声として、自己表現や個性、
といった言葉が聞こえてきます。

アートの分野に触れているからこそ、
自分の場合はどうか、
ということをよく考えますが、
なかなか答えを出せずにいました。

まだ、解決には至っていないものの、
一つのプロセスがヒントになり、
解像度があがったことで、
少しずつ理解が深まり納得できる答えに
行きつくことができそうな気配があります。

ぼんやりと考えてきたプロセスについて、
言語化して共有させていただくことで、
より解像度を高められればと思い、記事を書きました

はじめに

「私には個性がない」
「自己表現ができない」
という悩みは写真やアートに限らず、
例えば仕事やSNSのアカウント設計などでも
悩みとして持つ方が多い印象です。

作業というよりは企画などの
創造的な分野、仕事において
顕著になっているように感じます。

しかし、この感覚の裏では、
個性や自己表現に対する
根本的な誤解が潜んでいるのでは、
という仮説を自分の中で持ちました。

なぜ多くの人が難しいと感じるのか、
実際にはどのようなプロセスを経て、
個性や自己表現が生まれるのかを
考えていきたいと思います。

自己表現の難しさの原因

自己表現が難しいと感じる人々に
共通する特徴を考えてみました。
それは以下の点です:

経験や意見の内的処理(反芻)の不足:
多くの人は日々の経験を単に通過させるだけで、
深く考察する機会を持ちません。
自己表現のためには、経験を深く掘り下げ、
その意味を探ることから始まると考えます。

経験知としての形成不足:
断片的な経験や知識は、
それだけでは自己表現の素材にはなりにくいです。
経験を積み重ね、それらを関連付けて
体系化することで、
初めて表現に値する「経験知」が形成されます。

事象との接点や観察の不足:
自己表現は真空の中では生まれません。
外部の事象や他者との接点を持ち、
それらを深く観察することで、
自己の内面と外部世界との対話が生まれます。
この対話が不足していると、
表現すべき内容そのものが乏しくなってしまいます。

自分の意見・経験と外部事象の比較不足:
単に経験を積むだけでなく、
その経験や自分の意見を外部の事象と照らし合わせ、
類似点や相違点を見出すプロセスが大切だと考えます。
この比較のプロセスを通じて、
独自の視点や解釈が生まれると考えています。

これらの要素が不足していると、
「何を表現すればいいのかわからない」
という状態に陥りがち
です。

しかし、これは決して
個性の欠如や表現力の不足を意味するものではありません
むしろ、自己表現に至るプロセスの
理解と実践が不足しているから、と考えました。

経験学習モデルの視点

この課題を理解する上で、
企業の人材開発において非常に有名な理論があるので、
活用できるのではと考えました。
コルブの経験学習モデル」という理論です。

このモデルは以下の4段階のサイクルを提唱しています:

  1. 具体的経験

  2. 内省的観察

  3. 抽象的概念化

  4. 能動的実験

このモデルを自己表現のプロセスに適用すると、
以下のように解釈できます:

具体的経験:日々の出来事、感情、他者との交流など、あらゆる経験がここに含まれます。
内省的観察:これらの経験を深く観察し、その意味や影響を考察します。
抽象的概念化:観察から得た洞察を、より広い文脈や概念と結びつけます。
能動的実験:形成された概念や洞察を実際の表現(アート、文章、行動など)に移します。

このサイクルを繰り返すことで、
経験は単なる出来事から、
表現に値する洞察や概念へと昇華されていきます

自己表現の困難さを感じる人は、
往々にしてこのサイクルの一部、
特に内省的観察と抽象的概念化の段階が
不足していることが多いのでは
、と考えました。

「内側から湧き出てくるもの」という誤解

自己表現について、
よく「内側から湧き出てくるもの」
という表現を耳にします。
しかし、この考え方を表面的にとらえると、
誤解が生まれやすいと考えます。

この「湧き出る」というイメージは、
自己表現が突然、
無から生まれるかのような印象を与えます。
しかし、実際の創造的プロセスはそれほど神秘的なものではないと思います。

むしろ、自己表現は
以下のような要素の複雑な相互作用から生まれます:

蓄積された経験と知識
外部からの刺激や影響
内的な処理と解釈のプロセス
技術や表現手段の習得

「湧き出る」という表現は、
このプロセスの複雑さを見落とし、
結果だけに焦点を当てています。

これは、自己表現の本質を誤解させ、
「私には湧き出てくるものがない」
という誤った結論に導きかねません。

実際の自己表現プロセス

では、実際の自己表現のプロセスは
どのようなものでしょうか。
以下に、より現実的なプロセスを提示します:

経験の蓄積:
日々の生活、学習、他者との交流などを通じて、
多様な経験を積み重ねます。
この段階では、意識的に「自己表現のため」
と考える必要はありません。
むしろ、好奇心を持って
幅広い経験を積むことが重要です。

外部事象との遭遇:
新しい情報、出来事、作品など、
外部からの刺激に接します。
これは、ニュースを読むことかもしれませんし、
美術館で作品を鑑賞することかもしれません。

内的な反応の発生:
外部事象に接したとき、
私たちの内面で何らかの反応が起こります。
これは、
「面白い」「悲しい」「もっとこうあるべきだ」
といった感情や思考です。
この反応は、蓄積された経験や知識、価値観と
外部事象との相互作用から生まれます。

反芻と解釈:
この内的反応を深く掘り下げ、その意味を探ります。
なぜそう感じたのか、
それは自分の過去の経験とどう関連しているのか、
社会的な文脈ではどう解釈できるのか、
などを考察します。

表現媒体への変換:
解釈された思考や感情を、
具体的な表現形式に変換します。
これは、言葉、テキスト、写真、絵画、音楽など、
様々な形を取り得ます。
この段階では、技術的なスキルも
重要な役割を果たします。

アートへの昇華:
単なる表現を越えて、
より普遍的な価値や美を持つ
「アート」へと昇華させます。
これには、より深い洞察、技術的な卓越性、
独自の視点などが必要となります。

このプロセスは線形ではなく、
しばしば反復的で螺旋状です。

また、各段階は明確に区別されるわけではなく、
しばしば重複し、相互に影響し合います。

重要なのは、このプロセス全体を通じて、
個人の独自性が徐々に形成され、表現されていくという点です。
「湧き出る」のではなく、
徐々に、そして意識的に構築されていくのです。

個性と自己表現力の育成方法

以上の理解に基づいて、
個性と自己表現力を育成するための
方法を考えてみます。

多様な経験の蓄積:

  • 様々な分野の本を読む

  • 異なる文化や環境に触れる

  • 新しい趣味や技術に挑戦する

これらの活動は、表現の素材となる経験を豊かにします。

観察力の強化:

  • 日記をつける習慣を持つ

  • 芸術作品を鑑賞し、その印象を言語化する

  • 日常の小さな変化に注目する

観察力を鍛えることで、外部事象からより多くの刺激を受け取れるようになります。

内的処理(反芻)のトレーニング:

  • メディテーションや瞑想の実践

  • 経験や感情について他者と深く対話する

  • 定期的に自己分析の時間を設ける

これらの活動は、経験を深く掘り下げ、意味を見出す力を養います。

表現技術の習得:

  • 興味のある表現媒体(絵画、写真、文章など)の基本的な技術を学ぶ

  • 様々な表現スタイルを試す

  • 他者の作品を分析し、その技術を理解する

技術の習得は、内面の思考や感情をより正確に外部に表現する能力を高めます。

フィードバックの活用:

  • 自分の表現を他者に見せ、感想をもらう

  • 批評を恐れずに受け入れる

  • フィードバックを基に改善を重ねる

外部からの視点は、
自己の表現をより客観的に見る機会を提供します。

継続的な実践:

  • 定期的に創作活動を行う

  • 完璧を求めすぎずに、まずは表現することを重視する

  • 長期的な視点で自己の成長を見守る

自己表現は、継続的な実践を通じて
徐々に深まっていくものです。

これらの方法は、
単独ではなく組み合わせて実践することで、
より効果的に個性と自己表現力を
育成することができます。

実際に企業で人材育成を担当しているときに、
こういった考えをもとに
育成プログラムを検討したりしています。

単体の研修で課題が解決しない理由は、
他の手法と組み合わせることで
解決することが多く、成功例も多いので、
複合的に検討する必要があると考えます。

結論

個性と自己表現は、
決して生まれながらに完成されたものでも、
突然湧き出てくるものでもない
と考えています。

それは、経験の蓄積、深い観察と内省、
そして継続的な表現の実践を通じて、
徐々に形成され、磨かれていくもの
と個人的に定義しています。

「個性がない」「自己表現ができない」
と感じる人々は、
このプロセスの一部が欠けているか、
十分に発達していない可能性があります。

しかし、これは決して固定的な状態ではありません。
適切な理解と実践によって、
誰もが自己の個性を発見し、
豊かな自己表現を行うことができる可能性があります。

重要なのは、自己表現を単なる「表出」ではなく、
経験と内省の深い相互作用の結果として捉えることです。

このプロセスを意識し、継続的に取り組むことで、
個性と自己表現はより深く、より豊かなものになると考えます。

アートの創作において、
この過程は特に重要だと思っています。
なぜなら、
アートは単なる技術的な熟達以上のものだから
と捉えているからです。

それは、
個人の内面世界と外部世界との対話の結果であり、
その対話を通じて
普遍的な何かに触れる試みだと思います。

自己表現の価値は、必ずしも
他者からの評価や認知にあるのではありません。

それは、自己と世界をより深く理解し、
その関係性を探求するプロセスそのものでは、と。

以上です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?