冨士さん泊まり。
冨士さんというのは、この古民家に一緒に住む予定の友人である。
ひょんな事故から入院してしまい、復帰まで待っている状態なのだ。
もう退院して、現在はリハビリをしながら仕事をしている。
そして今日、冨士さんは一時滞在でお泊まりに来たのだ。
というのも、近所にこの8月で終わってしまう居酒屋を見つけたので、もし時間があれば一緒に行きたいと話していた。
仕事終わりにそのまま来るとのことで、気持ち家の中を綺麗にして待っていた。
少し時間が押してしまい、遅れるとの連絡が来ていた。
私は自室にいると、少ししてピロピロピロピロ〜!!と大きな音がしてビックリした。
なんの音かと思ったが、この音にとても聞き覚えがある。
網戸に引っ掛けていた防犯ブザーが鳴ったのだ。
私は事前にこのブザーを網戸から外しておくべきだったのだが、いつもの習慣で付けっぱなしにしていたのだ。
そしてそんなことを知る由もない冨士さんは鍵を開けて普通に入ってきて、網戸を引いたということだ。
玄関には、どうしたら良いか分からなずにあたふたして、防犯ブザーのスピーカーを抑えている冨士さんがいた。
申し訳ないのだが笑ってしまった。
防犯ブザーの説明をしながら音を止める。
冨士さんはそのまま自室に荷物を置き、私は家を出る準備を始めた。
夜というのは日焼けをする心配がないので楽である。
いつも夏はほとんど半袖になることはなく長袖か、もしくはアームカバーをつけるが今日はいらないので嬉しい。
準備を整えて家を出ようとサンダルを履こうとしたが、サンダルがない。
どこにやってしまったのだろう。
もしかして実家に帰省した時に忘れて帰ってきてしまったのだろうか。
なんということだ。
もしくは車か。
仕方がないので靴下を履き、靴を選ぶ。
2人で夜道を歩きながら話した。
この道のこと、最近のこと、腕のこと。
居酒屋が見えてきた。
しかし明かりがついていない。
暗い。
張り紙を見てみると、定休日であった。
なんということだ、せっかくこのために来てくれたと言っても過言ではないのに休みなんて。
リサーチ不足であった。
しかし悲しいかな、これがとみおクオリティ。
他のご飯屋さんを探しに行こうと夜の街を彷徨くのであった。