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臨床工学技士の学校選び② | 臨床実習はどこでやる?附属病院の有無

いのちのエンジニア ー 臨床工学技士は医療機器を通じて「いのち」を支える存在です。医師や看護師といった医療の国家資格のひとつで、今の医療には欠かせません。そんな大切な役割を担う臨床工学技士になるにあたり、どのような視点で学校選びをするとよいのでしょうか?

大学専門学校はどちらがいい?立地は?偏差値?国家試験の合格率?他には何を比べればいいの?学校を選ぶためには様々な要素がありますが、その中でも、特に大事にしてほしい視点をご紹介したいと思います。今回は臨床実習附属病院の有無です。

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教職課程にいる学生が実際の教育現場で教育実習を受けるように、医療職を目指す学生も実際の医療現場で実習を受ける必要があります。これを臨床実習臨地実習といいます。

臨床工学技士の学校選びのときに、臨床実習のことを気にする人はあまりいないと思います。でも、どこの学校でも臨床実習には必ず行くことになりますので、どんな臨床実習になるのかは非常に大事なポイントです。

これは学校によって臨床実習に行くことになる病院が違うからです。病院が違えば経験できる症例や充実度も変わりますし、臨床実習期間中の負担がまったく変わってきます。今回は、臨床実習に行く病院によってどのような違いがあるのか紹介していきたいと思います。


1.臨床工学技士の臨床実習 


医療職によって必要な臨床実習の時間は異なりますが、臨床工学技士の場合、1ヵ月半~2ヵ月程度臨床実習が行われます。なお、臨床実習は以下のような目的で行われます👇

医療における臨床工学の重要性を理解し、かつ、患者への対応について臨床現場で学習し、チーム医療の一員としての責任と役割を理解する。 また、臨床実習前後の到達度評価により、臨床実習に臨むために必要な知識・技術、患者対応及び臨床実習の効果を確認し、臨床工学技士としての基礎的な実践能力を身につける。

 
出典:臨床工学技士養成所指導ガイドライン 別表1 

具体的には生命維持管理装置医療機器について、病院の臨床工学技士がどのように操作保守管理を行い、患者さん・他の職種とどのような関わりをしているかを学びます。さらには学生ではなく社会人医療職として病院に出るための接遇医療の基礎的な知識や技術も求められます。

臨床実習に臨む学生が備えるべき接遇や基礎的な知識・技術
出典:臨床工学技士養成所指導ガイドライン 別表4

2.臨床実習を行う病院の条件 


臨床実習を行うことができる病院は、当然ながら臨床工学技士がいて実習に必要な内容の業務を行っている病院です。附属病院を有する大学であれば、自施設で臨床実習を行うことができますが、多くの学校は病院を有していません。そのため、臨床実習のために学生の受け入れを近隣の病院に依頼することになります。しかも、臨床工学技士臨床実習を実施できる病院にはさらに一定の条件があります👇

臨床実習に関する規定 3)遵守すべき事項
臨床実習指導者講習会を修了した臨床工学技士が配置されていること
・指導者は5年以上の実務経験、十分な指導能力を有するものであること
・指導者の数は、学生5人当たり1人以上とすること  など

出典:2024年度版臨床実習指導ガイドライン

ここで大きなハードルとなるのが、指導者の条件である「5年以上」と「学生5人当たり1人以上」です。これにより、病院にいる臨床工学技士の数によっては、同時にたくさんの学生の臨床実習はできないことになります。

学校側としても学生がバラバラの期間に臨床実習に行くことはいろいろと不都合があることから、全学生が同時期に行く必要があります。そこで、多くの学校では複数の病院に学生を分散させて、同時期に臨床実習を受けることになります。

しかし近隣の病院といっても、全員が学校近くの病院に行けるとは限りません。学校とは遠く離れたエリアの病院になることもよくあります。そうすると臨床実習の期間だけ遠距離を通うことや、一時的に住居を借りるようなことが必要になります。必ずしも希望通りの病院に行けるかも分かりません。

臨床実習のイメージ

3.学生目線で臨床実習を考える 


学生目線臨床実習を考えてみます。
臨床実習は普段の学校とは異なる環境で行われます。病院の時間に合わせて、普段より早起きして通わなくてはなりません。病院は学校とは別の場所で先生はいません。いるのは本物の臨床工学技士患者さん、多くの医療職の人たち。学校では机で座っていれば授業が進みますが、臨床実習は立っている時間が多く、少人数で指導を受けるため気が抜ける時間はありません。

このように臨床実習の期間は、学生にとって心身ともに負担が大きいことになります。この期間をどのように過ごすことができるかというのは、学校選びに重要だと思いませんか?

あくまで私の考えになりますが、2パターンの学校の臨床実習の例を挙げ、具体的なメリットとデメリットを挙げてみます。

同じキャンパス内の附属病院で全員の臨床実習ができる学校
🔵メリット
・学校と同じ場所に病院があるので、病院へ通う負担が小さい
 ➡勉強休息に使える時間が確保しやすい。
全員が同じ内容の臨床実習ができる。
・学校の先生に相談に行きやすい。
大学病院ならではの最先端の医療・設備で実習ができる。
・同じ学校の先輩がいるかも。
・附属病院が複数あれば、複数の病院で学べる
・(臨床実習とは別に)1年生のうちから見学ができる。
🔴デメリット
・気が抜けやすい、緊張感に乏しくなる。
・大勢を受け入れる=個人間の関係を築きにくい。
(もちろん個人のコミュニケーションスキルにもよる)

少人数ずつに分かれて遠方の病院で臨床実習を行う学校
🔵メリット
・普段と異なる環境だからこそ、緊張感をもって望める
・少人数のため、病院の技士との関係が築きやすい
・これまで知らなかった病院に目を向けることができる。
🔴デメリット
・場所によっては病院に通うのに時間がかかる
 ➡勉強休息に使える時間が減ってしまう。
・または、一時的に住居を借りるホテル住まいとなる。
 ➡普段と異なる生活環境もストレスの要因になる。
・実習できる内容が学生によって異なる
(病院によって業務内容が異なるため)
・ひとつの病院でしか臨床実習ができない。

両極端な例かもしれませんが、進学する学校によってはこれほど臨床実習環境の差につながってくるのです。学生の負担という目線の話が多くなってしまいましたが、臨床実習は自身のモチベーションが上がったり、さらなる学習の理解につながったり、将来の就職を考えたりするなどとても大事な期間です。これを入学前に考えるのはとても難しいのですが、臨床実習学校選びのキーワードのひとつとして考えてほしいと思います。

4.まとめ


最後までご覧いただきありがとうございました。
今回は、いのちのエンジニア ー 臨床工学技士になるための学校選びに必要な情報として、臨床実習はどこでやるのか、附属病院の有無で臨床実習はどう変わるのかについて紹介しました。

学校選びは進学してからの学生生活だけでなく、その後の人生を左右する大きな選択になります。やり直しはできません。そのためには、それぞれの学校の特徴をきちんと見極める必要があります。医療の学校選びには、臨床実習の施設や附属病院の有無といった要素を必ずチェックしてください。

これは臨床工学技士だけではなく、すべての医療職に当てはまります。立地偏差値国家試験の合格率という要素だけでなく、臨床工学技士になるための学習臨床実習の環境というものをきちんと比べて学校選びをしてほしいと思います。