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告白は ディナーの後で
「今日 夜 ヒマですか?」
昨日夕方 息子のサッカーのチームメイトのお父さんから 珍しく連絡があった。
休職中なので ヒマでないわけがない。
退職の手続きをしているので正確には無職に限りなく近い。
ヒマしかないのだ。
ウチに来ても良いかという内容で 家族ぐるみで仲良しなので
二つ返事でOKをした。
そのうち 妻の帰宅をまって 仲良し家族が 自宅を訪ねてきた。
昨日までの夏日とはうって変わって 一枚羽織るくらいで丁度よい
とても肌寒い夜だった。
子供たちは 学年は違うのだが 入ったころからの仲良しで ムスコの入団初日には 自分も必要なのにムスコの為に縄跳びを貸してくれた。今でも仕草や服装まではっきり思い出すことができる。
切磋琢磨し 試合では長く一緒に出たりもしていた。
休みには 遊びに来たり 泊まりにきたりする仲だ。
子供たちは とても気が合うらしく ムスコはその子といると 本当に生き生きと遊び 心から楽しむ表情をする そして大声で笑う。
なので 僕としても その子が来るのは大歓迎だ。
告白は 静寂のあとに 突然に
急に決まったので おもてなしの準備も料理も何も用意してなく
あるもので ちゃちゃっと おつまみ程度に何品か作った。
それをつまみながら お酒と会話を楽しんだ。 そして子供たちは 子供部屋に行ってしまった。
しばらく歓談を楽しんだころ 少し静寂があり
「伝えたいことがある」
「チームやめる」
「一番初めに伝えたくて」
なんとなくは感づいていたのだが あらためて「言葉」として耳にすると
つらく さみしい。
色々悩まれたそうで 「もう一度 同じチームでサッカーしたい」という思いで練習を頑張ってきたが チームの方針と学年が違うため それが叶わなく 子供本人の「揉まれる環境でやりたい」という覚悟を尊重した決断であったようだ。
そして その子から ムスコに「辞める」ことを 直接伝えたかったらしく お父さんに頼んで連絡してきたそうだ。
その健気さというか エピソードだけで泣けてくる。
おわかれを 伝えるのは難しいよね。受け取る側もね。
しばらくして 子供たちが僕らの部屋に戻ってきた。
「ムスコに伝えなくていいの?」
奥様がその子に 促していたが
タイミングではないらしく なかなか言い出せなくていた。
夜もだいぶ更けてしまい 明日 学校ということもあって お開きとなった。 結局 その子が ムスコに「伝える」ところには遭遇しなかった。
「勇気がいるもんな。 仲いいからって なんでも話せるわけではないか」
そんな風に思って「おやすみ」を伝え 見えなくなるまで 車を見送った。
そのうち 暗闇の中 布団に入るムスコの口から
「(その子の名前) 辞めるってさ・・・」
子供部屋でレゴで遊んでいるときに
「オレ( チーム名)10月で辞めるけー。 (ムスコの名前)に会ってから言いたかったんよ。」
と伝えられたらしい。
とても悲しい気持ちの伝わる表情をもった声で 聞こえてきた。
泣いているのもわかる。 そこからしばらく泣いていた。
遊んでいる時は 涙を我慢していたようだ。その子が悲しまないように。
ふた月前にも 一つ上の面倒見の良い仲良しがひとり辞めていて その時は 帰りの車から寝る直前まで泣いていて 翌日も思い出しては泣いていた。
僕は 抱き寄せて 「サッカーうまくなって 大きくなったら同じチームでまた一緒にやれるように頑張れ その子も頑張るって言ってた。」
とムスコに伝えた。
これからその子と一緒にサッカーできない寂しさを埋める言葉が 僕には見つからなかった。 これが精いっぱいだった。語彙力のなさを痛感した。
励ます言葉の語彙と容量を増やさないとな。
一晩経ってムスコはまだ元気のない様子だったが 今週末に泊まりに来る約束をしたからか ある程度は立ち直っている様子だった。
子供ながらに 二人とも逡巡して 考えて 答えを出して 純粋に 無垢に 相手を思いやって そして前をむいて行動していく姿に 悲しい出来事ではあったが 頼もしささえ覚える。 陳腐な表現だが とても感動した。
大人より大人で すがすがしかった。 たくさん学ばせてもらった夜だった。 人間ドラマだな。
人生も終盤だが人生って 子育てってオモシロイ。