家族というもの

母親からの言葉でよく覚えているものが一つある。

「あなたたち（私と姉）はお父さんと血が繋がってるから良いけど、私（母）だけはお父さんとは血の繋がっていない他人だから。どこまでいっても他人だから。」

確かにそうだよなと思った。

家族って、父と母は他人なんだよなと。

母親に「あなたのそういうところはお父さんそっくりで嫌になる」的なことを言われたこともあった。（全くひどい母親だ）

おそらく幼少期の私は飽き性、割と短気、家の中で整理整頓ができない子だったので、その辺りのことを言われた気がする。

母親は自分の子どものことは辛うじて面倒を見ていたが、父親に関しては、鬱陶しい他人が一緒に住んでいる、経済力さえあれば早く離婚したいと思っていたと思う。

実際、中高生のころに「なぜお父さんと離婚しないのか」を問うたことがあり、返答は「自分のパート代だけではあなたたちを大学まで行かせる金銭的余裕はない。片親というハンデを持たせたくないので、あなたたちが結婚するまでは離婚しない。でも絶対熟年離婚してやる」だった。

まぁ熟年離婚する前に父親は死んで母親は未亡人になったんですけどね。

しかも姉妹2人30超えても未婚だし。
つくづく思い通りにはいかないもんですね。

家族というものを再考した時、やはり父と母は他人であり、そこに子どもがいた場合、それぞれは子どもに対してはそれなりの愛情を向けられるだろうが、父と母は子供に向けるのと同じぐらいお互いへ愛情を注ぐことは果たしてできるのだろうか、と思う。

こんなことを考えるのは、おそらく両親不仲で育った家庭環境が原因だとは思うが、家庭環境なんて、離婚再婚を繰り返していない限りn=1でしかないので比べようもない。

中高生の頃、友達の両親が2人で旅行に出かけるとか2人で音楽ライブに行くとか、そういう話を聞いて青天の霹靂だったことがある。世の中の夫婦ってそんなドラマで見るようなカップルみたいなの？と。

でも一般的にはどうやらそうらしい。

先日出会った年上のお姉さんにも「自分が両親を見ていて、その両親に憧れを抱くような家庭環境ではなかったのなら結婚したいとは思えないだろうね」と言われて、なんとも言えない気持ちになった。

自分の家は家庭環境悪かったのかどうかすら分からない。どんな家でも夫婦喧嘩はするんじゃないの？え、しないのかな。

私が覚えている夫婦喧嘩は、昨日の冷凍ご飯が夕飯に出てきて、その日に炊いたご飯じゃないことに腹を立てた父がお茶碗を投げてご飯が食卓を舞ったこととかですかね。

こういうしょうもない父親のキレ症みたいなのがいつどこで発症するか分からないので、父親以外の家族が毎日神経すり減らして家の中で生活していたり。（というかこっちのほうが喧嘩よりもしんどかったのかも）

できるだけ父親が怒らないように。波風立たないように。でも原因不明でキレることもあるので、その時は各々の部屋にさっと帰り、コトが落ち着くのを待ったり。

まあそういうのがないんでしょうね。一般的に仲良いと言われる夫婦や家族には。

父親が死んでから家族の形もかなり変わったと思う。
姉は頻繁に実家に顔を出すようになったし、母親は父親が生きている時にはなかった、のびのびとした生活をしているように思う。それぞれ父親に縛られていたことから解放されたように見える。

なら苦しんでいるのは私か。私なんだろうな。

父親が死んで正直ホッとした自分もいて、それを認めてはいけない気もして、定期的に来る虚無感というか罪悪感に苛まれて、どうしようもなくなって、ただ無性に涙が出る。

歪な家族だったかもしれないけれど、私は割と好きだったんだなと思う。忘れたくないんだと思う。残った母と姉がどう思ってるかは分からないが、私だけは父のことを忘れてはいけないと思うし、忘れたくない。おそらく家族の中で1番父とコミュニケーションを取っていたから、その役目が自分にあるとさえ思っている。

そしてそんな家族（父）を失った悲しみをもう二度と味わいたくなくて、父親が死んでから、自分が結婚するということ、家族を持つということになんか後ろめたさというか違和感を持っているのかもしれない。

　

例えばだけど、結婚相手や子どもが自分より先に死んだら、もう私は立ち直れる気がしないな。そりゃそうよ。もう悲しみたくないよ。

家族がいて幸せな人たちは、家族が辛い時にはどうするのかな。支え合うのかな。うちの父親は見捨てられたけど、やっぱ見捨てる人もいてるよね。そういうの怖いよね。だって父と母はどこまで行っても他人だからね。子どもが辛い時は寄り添うけれど、夫婦のどちらが辛い時には見捨てるかもね。

あとはこんな卑屈な自分のせいで、相手も卑屈に引っ張り込んでしまう可能性があるのが不安だよね。引っ張り込んだ結果死なれたりでもしたら、本当にどうしようもないもんね。

あとは子どもがいたとして、子どもも卑屈になって死にたいとか言い出したらもう終わりだ。

あー、やっぱり私は家族を作る資格はない(笑)
なのでできるだけいろんなコミュニティを持つことで自分を保っていきたいと思う。