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マシュマロ見習いがみなさんの小説を読んで感想を語る企画第六弾【購読者感謝企画】

インタビュー企画「エデンの住人たち」を連載中の、創作初心者マシュマロ見習いが、みなさんの小説を読んで感想を語る企画第6弾!

いつも小説を送ってくださってありがとうございます。
今回は優雅にお紅茶を飲みながら読みたい……と思いきや雲行きの怪しいお話です。今回も素敵さをお届けできるように頑張ります!

送っていただいた小説がこちら↓

初めて会った時。君は、僕専属の女中だった。田舎から稼ぎに出されたのだと、慣れないメイド姿で笑っていた。
 女中に恋をするなどあってはいけないことだろうけど、僕は次男だからか、言い寄ってくる女性も少なくて、結局一番長く共に過ごしたのが君だった。だから、それが仕事としての笑顔であっても、僕は君に恋をした。
 屋敷の外にすら出してもらったことがなかったので、中庭の花を摘んで、握り締めて、夜になってからようやく渡した。萎れてしまった花を花瓶に飾って、やんわりと、花がかわいそうだとたしなめられた。
「身分だとか、君の立場なんて関係ない。僕は、あなたが好きなんだ。たとえ結ばれない運命だったとしても、この気持ちは偽れない」
 そう言うと、君は困ったように笑った。
「光栄です」
次に会った時。君は、街角で花を売っていた。僕が一輪買うと、驚いたような顔になって、それから笑った。
 その次に会った時。君は、靴磨きの仕事をしていた。僕を旦那さんと呼んで、安い代金にしては十分すぎるくらい、ピカピカに磨き上げてくれた。
 その次に会った時。君は、有名な女子校の制服を着て走っていた。遅刻しそうだ、と半泣きだった。
 その次に会った時。君は、今をときめく売れっ子シンガーソングライターだった。ヘッドホンの向こうから聞こえる声に、僕だけが違う理由で涙した。
 その次に会った時。君は、白く美しい翼を持っていた。
 その次に会った時。君は、小さな花弁に朝露を受けていた。
 その次に会った時。君は、僕と同級生の少年だった。
 その次に会った時。君は、
「ずっと」
 君は、焼けた丘の上から、大地を見下ろしていた。
「ずっと昔。夢をよく見たんだ」
 兵士のコートを脱ぎ捨てて、僕と君は並んで夕日を眺めている。君の細い手が、夕日に向かって伸びていた。
「こんな夕日の中で、プロポーズされる夢」
 日に焼けた顔で、君は笑う。
「うん」
 僕は、懐から、一輪の花を取り出した。すっかり萎れて、色褪せてしまった赤い薔薇。
「……諦めようって、思わなかったの?」
「思わないよ」
 君が。人間の世界から連れてこられた君の命の運びが、僕と交わらないままで終わったとしても。幾千万の夜を超え、命を超えてきた先に、結ばれる時がある。
 それが、世界の終わりの日だったとしても。
「僕は、君を愛するために生まれてきたんだ」
 女中だった君も。花売りだった君も。靴磨きの少年の君も、お嬢様の君も、歌手の君も、白鳥の君も、朝顔の君も、同級生の君も、少女兵士の君だって。
 君という存在を愛するために、僕という存在は生まれてきたんだ。
「僕は君に恋をしたあの瞬間から、今日のために、幾度の生を重ねてきた」
 たとえ君が全て忘れていたとしても。僕は何度でも、何度だって、君にはじめましてを言うだろう。
 それが、刹那を生きる人に恋をするということだ。
「受け取ってもらえるかな」
 萎れた薔薇を、君が握る。僕の驚きと喜びを吸って、薔薇が背筋をしゃんと伸ばした。
「もちろん」
 ああ、ようやく、最後まで君の傍にいられる。

めちゃめちゃいいですね〜〜!! 最高〜〜〜!!!!
全編読んでからもう一度頭に戻ると「初めて会った時。」が効きますね……! 

屋敷から出ることもできず、中庭の花を渡すところから少年なのかな? と思っていたのですが、「身分だとか」からの最初の告白の言葉遣いが大人びていたので思っていたよりも年齢を重ねているのかな? 10代半ばから後半くらいでしょうか……?

女中の「君」はやんわりと嗜める様子から「僕」とは歳が離れているのかな? と思ったのですがどうでしょう?

身分差のある恋愛最高〜〜!! もどかしい〜〜!!
どうなっちゃうの〜〜!? と思って読んでいたのですが、次の場面で「あれ??」となりました。

街角で花?? 女中はやめたのかな? 転職……?
その次、また次、次……と読み進めるうちに何が起こっているか理解して、大きな衝撃を受けました。

めちゃめちゃ輪廻転生まわってる……ずっと好きだって……。「君」がどんな仕事をしていても、女性でも、男性でも、人間ですらなくたって好きとは……。はちゃめちゃに大きな愛じゃん……。

告白する時には2人が同じ方向を向く関係性というのも素敵ですね。今までは店員と客で向き合った関係だったり、身分差があったりして、真横に並んだ関係ってなかった印象なので新鮮です。やっと隣に並べるんだね……よかったね……。

隣に並べるようになっても花を贈るまでに様々逡巡し、悩んでいたというのは微笑ましいですね。相変わらず花が萎れるまで躊躇してしまうのですね……。

最後までひたすら愛で、なんていうか、本当に胸がいっぱいになってしまいました。

もしかしたら、ベタですらあるのかもしれないストーリー展開で、きっと最後は結ばれるだろうと安心して読めるお話だと思います。

でも、転生を繰り返している時の描写が丁寧で、すぐに生まれ変わりだと分からないようになっていたために「あれ?」が生まれて引き込まれていきました。
そして、どんどんスピードアップしていくことで読んでいる私の気持ちもはやりましたし、「僕」が「まだ、まだ…」と気持ちが急いている様子も想像できてすごく感情移入ができました。

最後はやっぱり想像した通り幸せそうなのだけれど、「なんだあやっぱりかあ」とかはまったく無くて、「よかったあ」とホッとする気持ちでした。これは途中で「僕」に感情移入して「もう会えないのでは…」という気持ちになっていたからだと思います。
「ハッピーエンドはピタリ賞」ってこういうことかと腑に落ちました。(ハッピーエンドはピタリ賞が気になる方は「面白さの構造」の記事を読んでみてね!)

まさに憂鬱な月曜の夜にふさわしい、素敵なお話だったと思います。
今回も送っていただきありがとうございました!

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