ネグレスコ・ホテル
*本作はBOROの「ネグレスコ・ホテル」をイメージしたオリジナルショートストーリーです。歌詞とは一切関係ありません。
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俺は太陽と賭けをした。マルセイユからA50には乗らず、海岸線をニースへと向かう。傾いた夕陽が俺のクーペのサイドミラーに囲われてるうちに、あのホテルに着けたら俺の勝ちだ。
何を賭けたかって?そりゃ、決まってる。アイツが俺の元に戻ってくること。頼むぜ太陽。アイツを返してくれ。もしも俺が負けたら… そうだな… 太陽、お前を自由にしてやる。どこにでも行きやがれ!!粉々に砕け散って宇宙の藻屑になっちまえよ!!そして、独りよがりの俺を笑ってくれ…。
行き場のない苛立ちが涙に変わるのを抗うように俺はアクセルを目一杯ふかした。何度も何度も。わかってるさ。あの日のステップはもう踊れない。
俺は勝ち目のない最後の賭けに向けてホテルネグレスコを目指した。
抜け殻とノイズ引き連れネグレスコENDの文字は霧に紛れて