5月16日 旅行について
結論からいうと、旅行というものは無くなったと言っていい。
というのも、自動車の自動化によって生活そのものが旅行になっている人が大半だからだ。
最初期は、一部のNEETが自分たちのことを「高等遊民」と呼称していたことを捩り、絶えず移動しているということで「高速遊民」と呼ばれていた。
しかし、ホテル暮らしをしていた人や芸能人などの定住らしい定住をしない人たちが多く増えたことにより、それを真似し「住所不定」の人が急増した。
困ったことが一つあり、郵便物が届かないという問題が生じたが、ある方法で解決された。それを知って祖父は「そういう方法があったか」と独り言ちていたそう。
Metaverseを拠点にする人が増えた影響とも言われているが、探索者には物をなるべく持たない所謂ミニマリストが多い。
当初は想定していなかったお客さんが増えたことで、インバウンド向けのファッションレンタル業界は、探索者の需要が増えたことで、その市場規模は実に二倍へと一気に拡大した。そもそもは、バックパッカーなどの巨大な荷物を抱えた観光客の荷物を軽減させることを目的としたサービスで、レンタルは実店舗やオンラインで出来、翌日の昼間でには届けるサービスで少しずつニーズを増やしていった。このサービスの発案者が意外にレンタルが多いと感じたのは、靴だった。日本は特に湿度が高く通気性の良いスニーカーを履いてくる人が多いが、雨が降ったりすると難儀してしまう。そのため、替えの靴や雨靴、サンダルなどのレンタルが多い。合わせて、預かりサービスを実施しているのも好評を博している理由の一つだ。
あまり日本人には馴染みがないかもしれないが、サングラスをレンタルする人も多くい。最近では少なくなってきてしまっているが、海外旅行の際に必ずと言っていいほど必要となっていたらしい変換プラグ(コンセントの形状が異なるため)は無くなった。
このサービスが、探索者の生活に刺さった。モノと場所、時間を予約するだけで、受け取ることは勿論、同時に返却することができ、荷物を増やすことなく季節や天気に対応して服装を決められる(まだ、規模としては小さいが、身長や足の大きさなどのデータを登録しておくことで、AIが自動で季節や天気だけでなく、好みを反映させてレンタル品を届けてくれるBenefitというサービスもある)。
探索者が急増したことで、旧時代から各地にあった、野菜や果物などが安く売りに出されているところという認識しかなかった直売所や道の駅は様変わりした。今では単に「宿」と一字でしか表記されることが多い「ぷち宿」が、急増した。半官半民の影響の所為《せい》か、廃れつつある『ぷち』という言葉を使用したことで、古い遅いと揶揄されたこともある。呼び方としては、「やど」「しゅく」が多い。最近では、一つの建物だけで収まらないところも現れていることから「宿場」「宿場町」という呼ばれ方も増えている。
「ぷち宿」の前身は、道の駅に自動車の自動化によって増えた個人車に必要なものを補充・補給したり、ゴミを処理したりするための施設を増設しただけのものだった。
ただ個人車の増加に伴い宿泊施設を利用しなくなったことで、主に公的な機関が運営していたが、大打撃を受けた旅館やホテルなどの宿泊施設が参画するようになって区分され始めた。
現在は、マッサージやヘッドスパ、温泉(足湯を含む)、映画などのサービスや処方薬の処方や歯医者などの医療的行為、懐石料理などの料理を受け取ることができたりする豪華な道の駅といった認識。食事のために利用する探索者が多く、受け取った料理のお皿等は別の宿で返却することができ、自分の車で食べながら次の目的地へと行くことができる。当初は、使い捨てが多かったが環境への配慮や質の高さを表現されるために陶器などが使用されるようになった。
宿によっては、PITを併設しているところもあり、車両整備を受けることができ、その間に旅館に泊まるところもあるらしい(利用したことはない)。宿泊割引を受けられるPITや整備割を受けられる旅館も多く存在する。
受けられるサービスも旧時代と比べたら様変わりしたと、親以上の世代はことあるごとに口にしている。
探索者の悩みとしては、海外に行くことが難しいということがある。個人車で渡航することができないからというのが大きい。ただ、MotoRailのシステムを流用して、海外に行く方法を考えているところもあり、個人車でのMultimodaal transportが数年で実現しようとしている。個人車で、豪華客船に乗ることができるかもしれないとして注目されつつある。