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マダミス制作日誌 vol.15

▶マダミスとはパズルゲームか否か?

一時期、界隈で話題にもなっていたが、私は人狼ゲームが苦手である。

それはもちろん、論理パズルのようなゲームシステム――何人中何人が人狼だから、ここであれをこうすれば勝てる――というような、ロジックが成り立ち、それを記憶することで勝率が上がる……という部分もあるし、だからこそそれができない、理解していない初心者へのヘイトが向けられる、というディスコミュニケーションの部分もある。

同様に、マダミスにおける時系列精査も苦手である。
特に、それを行うことで明らかに犯人ではない人が出てきたり、確実に犯人が絞り込める……という要素が確定する場合だ。
とある作者さんが「時系列で犯人が分かるなら、それは『推理』ではなく『整理』なんだよ!」という名言を残していたのだが、それには私も同意である。

そもそもそれ以前に、自作品のあとがきでも書いたが、私は(なんでそんなに細かく自分のタイムライン覚えてるの……?)という部分ですら気になって引っ掛かってしまう人間なのだ。

私がボードゲームをあまりやらないのも同じ理由で、私はパズルゲームが苦手であり、そこにどうしても『ストーリー』や『意味』を見出したくなってしまう、《物語原理主義者》だからなのである。

▶マダミスとは演劇か否か?

もちろんこれは個人の好みの問題なので、そうした部分を楽しむ人を否定するものではない。
だが、マダミスとは一度しか体験できないゲームなので、事前情報が得られないうえに、そのミスマッチが致命的となったりもする。

私はマダミスの一番の特徴が、その『没入感』だと思っているので、それを最大限に活かしたいと考えている。そのためには、ストーリーラインというのは重要だ。
それは、作品自体のストーリーもそうだが、何よりキャラクター自身のストーリーがさらに大事だと考えている。

該当する方には気分が悪い話になるかもしれないが、例を挙げさせて頂く。念を押すが、あくまでこれは個人の好みの問題だ。

例えば、突然『あなたは快楽殺人鬼です。なんとなく人を殺したくなって特殊な環境で人を殺しました』というHOが与えられても、全く感情移入ができない。
私の心の中の物語原理主義者が、「じゃあなんでこんな特殊な状況で殺したんや!街中でやれや!」とか「もっと捕まらないよう工夫せいや!」とか突っ込み始めてしまう。

例えば、ものすごく深い復讐心を持ち、つらい状況を乗り越えてその復讐を遂げた人物が、犯行後に凶器に繋がるちょっとした手掛かりをゴミ箱に捨てるだとか、「そんなことしたら君の秘密がバレるやろ!」という行動を行っていると、私の中の突っ込みさんが出てくる。

さらには、狂人枠を無理やり作りたいがために、何の脈絡もなく人外キャラが投入されていると、世界観が台無しだな……と思ったりもする。

これらのような要素が垣間見えると、マダミスにおける折角の没入感が(作者の都合で無理やり与えられた配役だな~……)という感覚になり、一気に削がれてしまうのだ。
たまにある、モブキャラ的なHOの場合も同様だろう。

▶マダミスにおけるご都合主義

まあ、作品が増えるに従って、作者も増えるにつれて、こうした『ご都合主義』的な部分が出てきてしまったり、そうした作品も許容されて楽しみましょう!という雰囲気が醸成されるのも仕方がないとは思っている。

しかし、我々もそんな暇ではない。人生の中の貴重な120分くらいなのだ。
せめて、最低限の対策は取ってほしいものだと思う。

まず、作者自身がご都合主義を自覚し、あえて投入しているのであれば、そのような表現や説明を注意書きする。
あからさまなご都合主義は、私にとってはコメディの部類に入るものだ。

多少譲って、どうしても作品的にこれらの要素を入れざるを得ない場合があるとする。であれば、せめて『理由を付け、伏線を張って欲しい』ものだ。

例えば、真性の殺人鬼であるならば、その生まれや生い立ちに軽く触れることで、(こいつはそういうどうしようもない奴なんだな……)という納得感ができたり、用意周到な復讐犯がしょうもない凡ミスを犯しているならば、連日のシミュレーションや感情の高ぶりによって、疲れからついミスしてしまった……など。
明らかに世界観と違うキャラクターが出てくるならば、どこかに『少し不思議』なニュアンスを含めておくなど、この隠し味のひと手間で、プレイヤーの没入感は変わってくると思うので、ぜひ取り入れてほしい。

▶最近の界隈について

余談だが、マダミスが広まるにつれて、シナリオのクオリティの担保が難しくなってきたフェーズに入っていると思う。
特に有料シナリオの場合、マダミスの特性上、クオリティコントロールがされなければ、業界全体の客離れにも繋がりかねないな……と、最近少し心配している。

……マダミスなんて、依存症のようにあまり毎日やるものではないよ。

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