【完結記念】『正反対な君と僕』たちへ
ジャンプ+にて大好評連載されていた『正反対な君と僕』が本日最終回を迎えました。
このnoteでは「完結記念」ということで、今までの単行本を再読して感想等をまとめながらこれまでの『正反対な君と僕』を振り返りつつ、最終回の余韻に浸ろうと思います。
君と僕のこれまで
1巻(1~6話)/2022年7月発売
1巻から”走り出したらもう止まれない”感が全面に表れていて愛しさマックスです。鈴木がナベサトヤマダに対して、自身の谷くんへの想いを打ち明けるシーンでいまだに涙腺にキてしまう。ここで一気に作品に引き込まれた気がします。
ラブコメヒロインとして中々に尖ったデザインの鈴木ですが、少女漫画/少年漫画の型に嵌らない新しい時代のヒロイン像だな、と感激した記憶。
「タイラズマ」のワードも1巻から登場していたんでしたね(4話)。この二人の唯一無二の関係性も作品の大きな柱になっていきました。
2巻(7~14話)/2022年10月発売
ジェラったり、見栄を張りたがったり、夏祭りで優勝したり、着実に仲を深めていく谷と鈴木は、鈴木の元カレ・岡の登場を経て次の段階へ。
この作品はキャラクターの「本名」が判明するタイミングが作中の一つの区切り(到達点)として描かれていきます。ここまで来れば安泰、みたいな。
そして西さんを「好きになりにいく」山田。この作品はキャラクターを簡単に陽キャ/陰キャで括らないところにも信念を感じる。
3巻(15~22話)/2023年3月発売
「失敗するのが怖い」と言う西に対して「俺相手に失敗すればいい」と言う山田。こんなん好きになりますよ。
鈴木家へ訪問する谷。健全な中高生の恋愛だと割と早い段階でお互いの親とも接触すると思います(健全な中高生恋愛を経験しなかったので知らない)が、鈴木家の人々は賑やかで楽しい。父とのエンカウントもお約束です。この巻はデートばかりしているタニスズキ。
タイラズマの流れが少し変わるこのシーン。他人を突き放すのも簡単じゃないから、と雑に扱われ慣れていた東に対する平の言葉。
自分以上に物事を「自分事」として捉えてくれる存在っていくつになっても貴重で、このシーンは東を通して平に救われたと感じる人も多いのではないでしょうか。この後ひどく自己嫌悪に陥る平もセットで良回の一つです。
4巻(23~31話)/2023年7月発売
ほぼ一冊まるまる関西修学旅行編。ラブの波動も広がりますが、等身大な学生像がいつも以上に共感性高くて良かった。風呂上がりのシーンとか大好きです。
地味に学級員のモリモとミニが作中のお気に入りキャラ。こういう子らのありがたさが今なら学生時代以上によく分かります。二人ともいわゆる「学級委員キャラ」の造形じゃない上に割と自分から進んでなった感があるのもいい。
5巻(32~40話)/2023年11月発売
クリスマスとお正月の年末色一色な巻。おうちデート初キス未遂(?)回でどんだけパロ入れてくるんや(『ロマンティックあげるよ』『ホームアローン』『シャイニング』…)
本当に烏滸がましいけど、作中一番自分と重ねて見てしまうのは平です。なんか勝手に好意的に見られて勝手に失望されて誰も信じられなくなる。自分のダサさが周囲にバレるのが怖くて怖くて仕方がない。
元旦。急遽、谷家へお邪魔することになった鈴木。やることなすこと全てが裏目に出てしまい涙する彼女に対して、谷がかけた素朴な言葉にこちらも思わず涙を誘われます。そこにいない誰かを想うこと、即ちそれが「愛」なんだよな。
冬休み最終日にみんなで初詣に行く回もお気に入り。渡辺の身軽さ、本当に尊敬する。
6巻(41~49話)/2023年3月発売
本名判明の確定演出からのヤマダニシカップル誕生。この二人が一番少女漫画っぽい分かりやすい進展の仕方だったので、なんというか「安心」しましたね。
変わりゆく自身の感情との向き合い方に戸惑いながら想いが溢れる西さん。「恋愛」ってある種の「変身」だと思うから山田と出会ってどんどん変わっていった西さんもまた主人公の一人だったと言えます。本ちゃんと西さんの回も大好き。
バレンタインデー・ホワイトデーを終え、あっという間に学期末。平によるティラズマ(タイラズマ)の一年間の総括も必見。
一筋縄では行かない平の思考回路。卑屈すぎるだろと言いたくなるくらい、前向きに後ろ向きな自己分析。もう頭が下がる思いです。
6巻冒頭、東の「ごめん」より「ありがとう」を、という何気ないセリフは卒業式への伏線というか、布石でした。
7巻(50~58話)/2024年8月発売
3年生の半分くらいをスッ飛ばしたのは意外でした。でも、こういう大胆さが作品の魅力でもある。にしても8月時点での感想が短すぎる。なんかもういっぱいいっぱいになって言語化を放棄した記憶。
タニスズキは熟年夫婦感が漂い、ヤマダニシは初々しく順調。ナツミチャン呼びのシーン好きすぎる。西さんの「奈津美」感すごくしっくり来る。この二人実は西さんが攻めなのもまた良いんですよ。
タズマ(タイラズマ)もいよいよ大詰め。東は平への気持ちを自覚してしまい、平は「東はもしかして自分のことが好き?」と思いながらもあり得ないと決めつけて、すれ違う。
ずっと自分の内面ばかりと他者から見た外面だけに目がいって、自分を曝け出して歩み寄ることを放棄したまま、受験期は過ぎていく。
平妹も登場。この冷たい視線が残酷且つ「家族っぽい」です。
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最終回を含め、単行本化していない59話〜65話に関してはここでは割愛します。(単純にもう書くのしんどくなってきた)(単行本が出たら追記するかも)
最後に
本作には「ガパチョ」という謎の人物が登場します。
これまでのガパチョ
・谷と鈴木の手繋ぎ下校を目撃(1話)
・谷への想いを打ち明けた鈴木を応援(2話)
・映画館は客席ガチャなので苦手(4話)
・山田におすすめのアイスを教える(7話)
・修学旅行の準備がサクサク進んでいる(23話)
・中学の修学旅行で風景だけの写真を注文して親に怒られたことがある(29話)
・3年生の文化祭できぐるみを着た状態で山田とすれ違う(57話)
なんかもっと「ガパチョ」ワード出てきていたと思ったけど、案外少なかった(抜け落ちあるかも)。最後まで顔出しのなかったこのガパチョという人物は、我々「読者」であるという説が有力、というかほぼ確定です。
ずっと名前も顔を性別も謎の「読者」の視点として物語に登場していたんですね。思えば、ずっと谷や鈴木たちと同じ場所で同じ時間を過ごしてきたような感覚で読んでいました。僕らは、ガパチョだった。
共感性の高さで話題を呼んだ本作。自分の中に登場人物たちを、登場人物たちそれぞれの中に自分を探していたような気がします。
人は他者との関わりの中でしか存在できず、自分一人だけでは、自己を規定することができません。多感な高校生たちの群像劇を通して、そのことを改めて教わりました。
谷であり、鈴木であり、山田であり、西であり、平であり、東であり、渡辺であり、佐藤であり、本田であり、ガパチョだった君と僕たちへ———。
ずっとありがとう。
そしてこれからもよろしくな〜!最終8巻は2025年3月、アニメは2026年1月から!!
阿賀沢紅茶先生、2年半の連載お疲れさまでした。