【書評】名前のない仕事 – UUUM創業者・鎌田和樹氏が語る組織成功の秘訣
今日は、まだ読んでいない方にぜひ手に取ってほしい一冊をご紹介します。それは、UUUMの創業者である鎌田和樹氏が執筆した『名前のない仕事──UUUMで得た全知見』です。
この本は、現代のクリエイティブ産業や組織運営において、見過ごされがちな「名前のない仕事」の重要性を深く掘り下げています。今回は本書を紹介していきます!
社長 鎌田和樹氏の歩み – 苦難と成長の軌跡
鎌田氏のキャリアは、光通信という通信会社での電話営業から始まりました。電話帳のあから順に電話をかけ、アポイントを取るという地道な営業活動。しかし、実際には多くの困難が待ち受けていました。電話帳の「あ」から順に電話をかけ、アポイントを取るという従来型の電話営業手法に従事しました。噓を塗り重ねて何とか商談に持ち込むべく営業している中で、実際に電話をかけた相手の親族が出た際に「一度話をしたことがある」というニュアンスを伝えたものの、相手が既に2年前に他界していたことが判明し、心が折れる経験をしました。
挫折からの再起 – ゼネラリストとしての成長
電話営業の厳しさに心が折れた鎌田氏はバックレました。しかし、光通信から別の部署への異動を提案されます。そこで彼は総務的な役割を担うことになり、「何でも屋」としてのキャリアを再スタートしました。社員の引っ越しサポートや総務業務全般を通じて、多様なスキルと柔軟な対応力を身につけ、ゼネラリストとしての基盤を築き上げました。この経験が後にUUUMの設立に大きく役立つこととなります。
「名前のない仕事」とは? – 組織の隠れた柱
「名前のない仕事」とは、従来の職業や職種に当てはまらないが、組織やプロジェクトの成功に不可欠な業務を指します。本書では、以下のような具体例が挙げられています:
クリエイターのサポート:YouTuberやインフルエンサーが円滑に活動できるよう、動画制作の支援やスケジュール管理、メンタルサポートなど、多岐にわたるサポート業務。
新しい職業の創出:従来存在しなかった職業を社会に認知させ、職業として成立させるための取り組み。
総務的な役割:社内の「何でも屋」として、前例のない業務や雑務をこなすことで、組織全体の円滑な運営を支える役割。
なぜ「名前のない仕事」が重要なのか?
これらの業務は一見地味に見えるかもしれませんが、実際には組織の基盤を支える重要な役割を果たしています。見えにくい部分での貢献が、プロジェクトの成功や組織の持続可能な成長に直結するのです。
UUUMの社名の由来 – 「うーん、うーん」と悩んで生まれた
会社名「UUUM」には、興味深い誕生秘話があります。創業期、鎌田氏とHIKAKIN、そして社員たちが社名を検討する際、みんなで頭を抱えて「うーん、うーん」と唸っていた時の様子がそのまま社名になりました。当初は「いいね株式会社」という案も検討されていたそうですが、最終的には、この悩んでいる時の声から着想を得た「UUUM」に決定したのです。
クリエイターを守る決断 – 熊本地震時の対応から見えるUUUMの本質
そんな、「UUUM」はYouTuberのサポート業務に徹する会社となります。
2016年4月、熊本地震が発生した日は、UUUMにとって大きな決断を迫られる日となりました。その日、あるクリエイターのタイアップ動画が公開予定でした。地震発生後、クライアント企業から「テレビCMも放映しているため、予定通り動画を公開してほしい」という強い要望が寄せられました。
しかし、鎌田氏とUUUMは、震災という非常事態下での動画公開は適切でないと判断。クリエイターの意向や視聴者への配慮を最優先に考え、公開を見送る決断を下しました。この判断に対し、クライアントから約3000万円の代償金が請求されます。鎌田氏は即座にその支払いを受け入れ、同時に、そのクライアントとの今後の取引を終了することも決定したのです。
「クリエイター・ファースト」が導く持続可能な成長
この一連の出来事は、UUUMの経営哲学を如実に表しています。目の前の利益や取引関係より、クリエイターの信頼を選択する。この揺るぎない判断基準があったからこそ、多くのクリエイターから信頼を獲得し、持続的な成長を実現できたのです。
特筆すべきは、この判断が単なる理想論ではなく、実際のビジネスシーンにおける具体的な行動として示された点です。3000万円という大きな損失を受け入れてでもクリエイターを守るという決断は、会社の理念が机上の空論ではないことを証明しました。
この経験は、UUUMの企業文化の根幹を形作ることになります。「正しいと信じることを、たとえ高いコストがかかっても実行する」という姿勢は、クリエイターたちとの間に強い信頼関係を築き、結果として会社の持続可能な成長をもたらしました。短期的な利益よりも、長期的な信頼関係を重視するこの判断は、現代のビジネスにおいて重要な示唆を与えています。
本書から学べること – 組織運営とクリエイティブ産業の未来
ゼネラリストの価値
鎌田氏は、専門職が評価されやすい現代社会においても、ゼネラリストとして多岐にわたる業務をこなすことの重要性を強調しています。幅広いスキルと柔軟な対応力を持つゼネラリストは、組織の多面的なニーズに応える存在として価値が高まっています。
クリエイターサポートの実践
UUUMでの具体的なクリエイターサポートの実践例として、動画制作支援やスケジュール管理、メンタルサポートなどが紹介されています。これらのサポートを通じて、クリエイターが自身の創造力を最大限に発揮できる環境を整えることの重要性が語られています。
新しい職業の創出
YouTuberやインフルエンサーといった新しい職業を社会に認知させ、職業として成立させるための取り組みも本書の重要なテーマです。職業の定義や教育、法制度の整備を通じて、柔軟な働き方や新しいビジネスモデルの創出が可能となり、社会全体の活性化につながります。
なぜこの本を読むべきか – 組織運営の新たな視点を得るために
『名前のない仕事──UUUMで得た全知見』は、従来の職種や役職にとらわれず、多様な業務を柔軟にこなすことの重要性を再認識させてくれます。鎌田氏の実践的な経験を通じて、ゼネラリストや「何でも屋」としての役割が組織やプロジェクトの成功に不可欠であることを学ぶことができます。また、クライアントとの困難な状況における意思決定を通じて、会社の価値観や哲学が組織の信頼と持続可能な成長に如何に影響を与えるかが明らかにされています。この本は、組織運営やクリエイティブ産業に関わるすべての人々にとって、有益な知見と実践的なアドバイスを提供する一冊です。特に、柔軟で多面的なアプローチが求められる現代のビジネス環境において、「名前のない仕事」の価値を理解し、評価することが組織の競争力向上につながります。
鎌田和樹氏の実践的な経験と深い洞察が詰まったこの一冊は、あなたのビジネスやキャリアに大きな影響を与えることでしょう。
ぜひ、この機会に手に取ってみてください!
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