脳外臨床大学校 活動報告 No.3【症例検討会 〜健側の⼿を洗うには?ADL 動作から掘り下げる〜】
〈8月6日 図書委員からの活動報告 担当:あき〉
※動画は山本先生がFacebookの公式 脳外臨床研究会に動画を貼ってくださっています!
症例検討会の流れ
①実際に動作を見る
②グループに分かれ、まずは率直な感想を共有
③検討していきたいテーマを発表
④またグループに分かれそのテーマに沿って「着眼点・原因・評価・アプローチ」を考える
⑤グループごとに発表
⑥山本先生だったらどう考えるか(これがとてもすごかった!^^)
大まかにこのような流れで行われました。
動画について
手洗いについての動作の動画です。洗面台の前に椅子があり、そこに座っている右片麻痺の男性。右手を上げるも上がりきれないため左手で持っていき、手を洗います(主に左手で右手ばかりを洗う)。
最後に右側上にある紙タオルに手を伸ばし、手を拭いています。
グループごとに話し合い、全体に感想を共有
・丁寧に一本いっぽん洗えている。開かないけど硬くなく柔らかさがありそう
・なんで立ってじゃなくて座っているのだろう
・移動面はどうなんだろうか
・手を洗う姿をみて高次脳には問題がなさそう
・感覚はどうなんだろう
・梗塞なのかな?出血なのかな?
・右手は洗えてそう、でも左はどうだろう。左手の甲は洗えているのかな?
・鏡を見ているのはなんでだろう
・保持はできているが、肘の緊張が高くリーチは難しそうだな
今回のテーマ
「左手の掌や甲、指、指の間まで丁寧に洗うにはどうしたらいい?」と話し合いがしやすいように課題が提示されていました。
その中でも今回は司会の⽅に「まずはどこに着⽬するか?」「そこに着⽬した理由は何か?」「その評価はどうするか?」に重きを置 いて話し合いって4グループに分かれ40分ほどの話し合いとなりました。
「左手を丁寧に洗うには」に対してのグループ発表
〇Aチーム
両手で洗うことを着目として考え、原因は能力面と環境面にあると考えた。
環境:椅子を上げたら腕の緊張が落ちるのか評価したい
両手だけで洗うのではなく、片手で洗ってもいいんじゃないか
能力面:麻痺側の肘、手首、手指の筋緊張がどれくらいなのかな?
麻痺からやっていくのか、筋緊張からやっていくのか評価をして優先順位をつけアプローチへつなげていきたい。
〇Bチーム
・着目点は右上肢と右下肢について。また手順を考えていった。
・努力的に右手を洗おうとしているのは撮影をしているから?日常的にはどうしているのか知りたい。下肢については杖も近くにおいていないし、装具も使っていないためどうなんだろう。
・手順については水の方に手を伸ばしたり、ペーパーに手を伸ばしたと思ったら石鹸の方に手を伸ばしたりしたので、被殻出血の手順の問題なのかな?
・評価は運動麻痺、筋緊張の要素を見る。肩を見ると肩甲帯が悪いのかな??
・アプローチは機能的には麻痺へのアプローチをしていく。右上肢が固定できたら洗いやすいのではないか。(筋緊張よりかは運動麻痺の要素が強いかな?)
〇Cチーム
泡立てることに関して着目してみました。
評価に関しては泡立ちに関しては接触面がないとできない(スピードも)。左手右手が協調的でないとうまく洗えない、感覚も悪いとうまく洗えないからそこを評価していきたい。
接触面に関しては2次的な要素があるためROMを評価していきたい。スピードもなければ泡立てないため右手の随意性は見えるのかな?
協調的な要素としては筋の出力、タイミング、組み合わせはどうかを見る
〇Dチーム
・まずは左手を洗えていないことに関してはどう思っているのかをまずはしりたい。
手指の内外転ができれば指の間も洗えるのではないかと話しが出たが、最終的には右上肢を固定することに関しては肘を置けば固定はできるため丁寧に洗うとなった時に母指以外の手指の内外転を先に獲得するよりかは母指の内外転を先に操作性を獲得したほうがいいのではないかというのを優先順位にあげた。
・評価としては母指内外転をするための機能として長母指外転筋、短母指外転筋、母指対立筋、母指内転筋の随意性は出るのかを評価していきたい。
★それを踏まえて山本先生からのフィードバック(思考過程やアプローチまで)★
〇そもそもなぜ「左手を丁寧に洗わなくてはいけないのか」と考えたときに手はどういう時に洗わなくてはいけないのか。現在メディアで「手を洗って下さいね」とわざわざ取り上げられている。つまり世の中には手を丁寧に洗わない人がいるということ(当たり前ではないということ)。
〇手を洗うという行為について
手が汚れているなどの自己認識レベルが必要であるためかなりの高次脳機能が求められる。患者様に手洗いを要求するレベルというのはかなり行為として高度な能力を求めているということになる。(記憶、遂行機能、注意が必要になるため)
そのためこの段階で今その患者がそのレベルに達しているのかを判断しないといけない。(導入するに値するのか)
〇どこでそれを判断するのか
手を洗って、ティッシュを取ろうとしたためこれは指示されていることなのがわかる。右手のリハビリをしている途中なんだなとわかる。(普通なら左手ですぐに紙をとればいいため)求められていることを理解している様子がある➡状況判断はできおり前頭葉の機能はかなりいいと考えられる。そのためリハビリで行為の整容動作(手を洗う)を取り入れるのは間違いではないためそのまま進めていくと判断した。
左手が洗えない理由は高次脳レベルの問題ではなく、運動か動作の問題なのかというのが絞れていく。
〇基本動作、移動面も動画を見ると安定していると判断できるためセルフケアの問題点だと的を絞っていく。
手洗い動作は手と手を洗うものであり特徴は両手動作。右手、左手の運動、両手の運動が必要になる。つまり右手の機能障害があるから両手動作ができないことがわかり、右手動作の獲得が必要になってくる。
〇右手動作を獲得するときに
・洗い方の獲得を目的にするのか→道具を使って行うのか
・右手動作+両手動作の獲得を手洗いの特徴を使ってアプローチするのかを分けなくてはいけない。
ほかのADL動作食事、更衣でも両手動作が多いので手洗いだけで収束させてしまうのはもったいない。代償手段で手洗いを獲得させてしまうと手洗いだけしか獲得できなくなってしまう。
〇必要な機能は?
・リーチ→右手と左手を合わせるために
・手の形に手を合わせられるのか→探索活動
・操作→洗うための指の操作
どこから介入すればこの人が変わるのかと考えたときに
肘が曲がって食事の時右手が使えないのであればリーチから入っていく
更衣も困っていたら探索から入っていく(服に合わせて自分の体を合わせていく)
リーチもでき探索もある程度できるけど、操作ができないのであれば操作から入っていく
〇脳の障害と考えたときに
・随意運動ができていない→両手動作には随意運動が必要。
・筋緊張のコントロールができていない→手を上げたときに上肢が引き込まれてしまう。
・不動に伴う図式障害→左手ですべて行っていたり、視覚代償が必要なため
・全身の筋緊張は?→低緊張。
・手被殻出血の可能性があり放線冠レベルで上位運動ニューロン障害と考える
・運動麻痺
痙性を考えたときに皮質脊髄路障害の障害に伴い伸張反射障害かγ運動ニューロンの過剰運動となる。どっちにしても麻痺の問題で上位運動ニューロンを使う必要がある。
また連合反応と共同運動と考えたときは痙性を強めているのは連合反応によるものであり連合反応(非麻痺側に力を入れすぎてしまうことによって麻痺側が使えなくなっている)と上位運動ニューロンの治療が必要。
まずは上位運動ニューロンの治療をしていく、その後連合反応や共同運動のパターンで運動してくるので麻痺側を固定して非麻痺側の分離運動が必要となってくる(例えば、麻痺側はリーチした状態で非麻痺側を動かすなど)。
・麻痺側上肢の何筋から始めるか
(ちなみに先生は長母指屈筋からの治療から入るようです。長母指屈筋由来の筋緊張発だと考え、治療することで上肢の緊張が落ちると考えているようです!)
という流れで山本先生は介入するようです。そのあとも山本先生の熱い臨床の思考、介入方法の話をしてくださいました!!今後、是非参加していただき聞いていただきたいです!
★私が参加した印象として★
話合いの雰囲気はとてもよく、皆さんの意見を聞くことでいろんな視点を得ることができ、とことん話し合うことができたと思います。そして、なんといってもここの症例検討会での特典は山本先生から症例についての講義や臨床について直接聞けることです!話し合ったからこそ先生の講義を聞くと見れていなかったことなど差異に気づくことができます。
また、スタッフの人たちの工夫が見えた症例検討会で病院でもマネしたくなりました!
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