臨床を変える側方(サイド)ステップの見方〜動作開始時に着目して〜
いつも脳外ブログ 臨床BATONをご購読頂きありがとうございます。
本日も臨床BATONにお越し頂きありがとうございます。
臨床BATON411日目を担当します脳外臨床研究会 触診講師・触診アシスタントの橋本一平がお送り致します。
そんな私が今回お送りするブログは臨床を変える側方(サイド)ステップの見方〜動作開始時に着目して〜をお届けしていきたいと思います。
前回のブログでは明日の臨床を変える後方歩行の見方〜後方歩行の新たな可能性を考える②〜を書かせてもらっていましたので、ご興味があれば一度覗いて下さい。
*気になったブログには「スキ」や「コメント」もお待ちしています。
はじめに
皆さんは、臨床の中でサイドステップを評価・治療しますか?
また、自宅復帰に必要な動作としてサイドステップにアプローチしていますか?
私自身は、新人のときは全く意識せずに、何となくサイドステップをアプローチに取り入れていました。考えていたこととしては、「なんか側方バランスが悪いのでやっておこう」とか「なんかふらついているから」程度の理由でサイドステップを行っていました。
しかし、実際には、全然良くなりませんでした、、、
当たり前ですよね?サイドステップを行っていますが、分析・評価をしていないからどの可動域や筋肉が必要で、年齢によっても特徴があるサイドステップを何も考えずに行っていたのでは、できなくて当たり前です。
サイドステップは日常生活において欠かすことができない動作と私自身は考えています。
特に、家事動作や洗面動作など側方移動を伴う動きが多い応用動作には必須であると考えています。
本当に使っているの?と感じている人もいると思います。
実際に意識的ではないと思うのですが、多くの場面で使用しています。
「サイドステップなしで生活をしろ」と言われたら、できる自信が私にはないです。
意識的にできたとしてもなかなか効率の悪い動作になってしまい、何をするにも時間を要してしまいます。
そんなサイドステップを分析・評価・アプローチすることで、患者様・利用者様の自宅復帰を助けることになります。
その中でも今回はサイドステップの動作開始時における特徴から考えて、臨床に繋げていこうと考えていますので、是非読んで頂ければ、明日からの臨床の新たな視点になると思いますので、少しでも興味がある方や初めて聞いたなと言う人は読んでみて下さい。
1、 サイド(側方)へのステップとは
ステップ動作は外乱を受けた場合などにバランスを回復するための姿勢制御戦略の1つとされています。足関節戦略や股関節戦略によってバランスを回復することが困難な場合、ステップ動作によって新たな支持基底面を形成する踏み出し戦略で用いられています。
そして、加齢による立位姿勢制御の低下については、前後方向よりも側方において著しいとされ、側方の姿勢制御能の低下が転倒の危険性と強く関連しているとされています。
また、側方への転倒に関しては、大腿骨頚部骨折に直結する危険性が高いと言われているので、サイドステップを分析・評価することは重要になります。
側方ステップ動作において、動作開始時のCOPの変化としては、ステップ側下肢の方へ移動して、その後に支持側下肢へと移動して足底離地が行われています。
これは、COGとの解離を生じることによって、COGの支持側および側方への移動を推進する動きになっています。上記の移動に関しては前方歩行時にもみられるCOPの変化と同様の動きになっています。
この動きを知らなかった時には、動作時の誘導や介助方法において、とりあえず、支持側の下肢に移動させることで、ステップ側が移動しやすくなるとばかり考えて行っていました。
そのため、実際には、支持側ばかりを意識してしまい、ステップ側の移動ができなかった経験がありました。
しかし、上記のことを知ってから実際に臨床で実践してみるとステップ側がスムーズに降り出すことができて、誘導や介助が行いやすくなったのを覚えています。
文献での知識が臨床で活かすことができ、とても嬉しく、大切であると思える機会になったと思います。
是非、皆さんも知識として得たことは本当かどうか実践してみて下さい。
2、側方ステップの加齢的変化について
側方ステップでは、加齢に伴う変化があり、それに伴い、分析・評価の仕方が変わると考えられます。下記に加齢的な変化を検証したものがありますので、示していきます。
結果として、反応速度には有意差はありませんでしたが、体重移動は若年群よりも中高年群で有意に増加した。COP-stepは中高年群で有意に増加あり、COG-supportについては、若年群ではほとんど変位を示さなかったが、中高年群では明らかな支持側への変位がありました。
これにおいては、若年群ではCOP-stepを可能な限り減少あるいは消失させ、支持側へのCOGの移動を抑制していると考えられています。その結果、COG-supportとCOP-supportとの解離がより大きくなり、ステップ側への大きな加速を生み出すことが可能となっているとされています。中高年群ではCOP-stepを活用してCOGを支持側に移動させることによって、COG-supportとCOP-supportとの解離が減少し、ステップ側への加速を抑制しているとされています。また、肩峰や大転子、肩、骨盤の動きは若年者と比較して大きくなっています。
若年群では、体重移動時間にもあるように動作のスピードを早く行っても可能な筋活動や切り返しや体重移動時の筋肉のレスポンスが早いためではないかと考えています。
実際に高齢になると反応が低下しますし、脳卒中などの障害がある患者様ではさらに反応速度は遅くなります。皆さんも治療をしているなかでなかなか筋肉のレスポンスが返ってこないことは多くないでしょうか。
また、脳卒中に限らず、覚醒が低下しているなどでも反応速度は遅くなりますよね?
皆さんも寝起きや眠気がある時には反応が落ちる経験があると思います。
このような反応速度はさまざまな原因によって変化します。
そのときは、まずは覚醒を上げることを行ってから評価・治療していく必要があります。
また、若年群では転倒の危険性というのは中高年群と比較しても少ないと思います。
しかし、中高年群では、加齢に伴う反応速度の低下や筋肉のレスポンス低下に伴い、スピードを出すことができません。
というより、スピードよりも重視しないといけない要素である安全性や安定性が必要になりますので、反応としては自然なことであると考えても良いと思います。
ここで、私自身はそれを考慮した中でアプローチすることも大切ではありますが、効率性やスピード上げていくことは重要であるとも考えています。
効率性を上げることは動作時に使う筋活動などを抑えることができ少ない活動でパフォーマンスを上げることができます。また、スピードに関しては、上げることで「生活の幅」や「患者様や利用者様の間に合わない」を解決することにつながると考えています。
少し矛盾していることを言っていると感じたと思いますが、安全性や安定性は大事ではありますが、それでは実際に家に帰った時に使えるものになっていないと生活期を経験して感じました。
安全や安定していても、効率性やスピードがないと動作自体が使えるものになっていませんし、実際の患者様や利用者様が使っていなかったりします。
時間がかかるということは実はそれだけで疲労したり、動くことに億劫になったりする原因にもなると考えています。
肩峰や大転子、肩、骨盤の動きは若年者と比較して大きくなっていることについても効率性を低下させている原因となっています。実際にこの反応に関しては代償動作であると考えています。骨盤周囲の筋活動の低下により代償動作を使用することで、動作を行おうとしています。
しかし、この反応は効率の良い反応とは言えません。また、この動作が大きくなると重心の移動が大きくなり、支持基底面から重心が逸脱する可能性が高くなることで転倒にも繋がる動作になりかねませんので、何が患者様や利用者様にとって必要な機能や動作であるかを専門家として見極めていかないと考えていますので、皆さんも是非、そんな視点で見てもらえると少し見方が変化するかもしれません。
まとめ
今回は、側方ステップについて、書かせて頂きました。側方ステップは、アプローチとしては手軽なものであると思いますが、実際に分析や評価すると奥深いものになっています。
また、自宅復帰には欠かせないものであると私自身は感じています。だからこそ、分析・評価する事で、患者様や利用者様の自宅復帰に繋がります。また、自宅復帰が最終ゴールではなく、自宅復帰して自分で生活することが必要になります。その中で、動作の効率性を高めることは大きな要素になると私自身は感じています。
皆様は自宅復帰がゴールになっていませんか?
自宅復帰は過程であり、自宅で継続した自分の生活ができることが大事であると考えていますので、自宅の生活をイメージしながら必要な動作や機能は何かを考えながら評価・治療を行なって頂ければと思います。
次回は、今回の続きで側方ステップの筋活動の話を中心に評価や治療のことなども書けたらと考えていますので、読んで頂けると幸いです。
今回も最後まで読んで頂きありがとうございました。
参考文献
日常生活活動の分析~身体運動学的アプローチ~ 第2版 医歯薬出版株式会社
側方ステップ開始動作時における姿勢制御の加齢変化 理学療法学21(3) 267-273,2006
サイドステップ動作に関する身体運動学的研究 理学療法学第36巻2号49ー57,2009
横歩き時間と動的バランス能力との関連性について 理学療法学29(5) 789-792,2014
若年者と高齢者における前方・側方ステップ動作について 理学療法学25(3)357-362,2010
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