日常生活に大切なステップ動作の見方 〜ステップ動作における反応時間について〜
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本日も臨床BATONにお越し頂きありがとうございます。
臨床BATON475日目を担当します応用歩行・動作特化型セラピストの橋本一平がお送り致します。
そんな私が今回お送りするブログは日常生活に大切なステップ動作の見方〜ステップ動作における反応時間について〜をお届けしていきたいと思います。
前回のブログでは日常生活に大切なステップ動作の見方〜ステップにおける先行的姿勢戦略について②〜を書かせてもらっていましたので、ご興味があれば一度覗いて下さい。
*気になったブログには「スキ」や「コメント」もお待ちしています。
はじめに
ステップ動作と聞いて皆さんはどのようなステップ動作を思い浮かべますか?
前に一歩踏みだす、サイドへのステップ、後方へのステップ、方向転換でのステップ、左右へ曲がるときのステップなどいろんなステップ動作があると思います。
その中で、ADL動作で使うステップはどれになるでしょうか?
、、、全て必要ですよね!
ADL動作においては、いろんなステップ動作を使用することで自宅内でのADL動作を行うことができ、それを使用する患者様や利用者様にとっては欠かすことのできない動作となります。
先ほど、書かせて貰ったようにステップと言っても、いろんなステップあります。
しかし、正直、そのステップを全て把握しているセラピストはどのくらいいるでしょうか?
正直、私の周りでもほとんどいません。
私が新人の時など全くと言っていいほどいませんでした。
では、何故いなかったのか?
それは、ほとんどの方が、ADL動作を分解できておらず、動作として捉えているからです。
ADL動作を動作で捉えているとは、どういうことなのか?
例えば、方向転換動作を練習するときに方向転換動作を練習するということです。
方向転換はいろんな動作の組み合わせになります。
立位、片脚立位、サイドステップ、クロスステップなどの多くの動作や姿勢の要素が入っています。
それをさらに機能レベルまで分解して初めて、動作を分析できるスタートに立てると私は考えています。
しかし、いくら分解してもなかなかステップ動作がADL動作に繋がらない方がいます。
動作ができても、退院して、家や社会で使えなかったりします。
また、ステップ動作ができない人の中には、転倒という事故を起こす場合があります。
では、その方々は何が原因になるのか?
それが、課題数に応じた反応時間、選択に対しての反応時間などが関係しています。
今回は、ステップ動作における課題数に応じた反応時間、選択に対しての反応時間などが関係について書かせて頂こうと思いますので、気になった方は是非、覗いてみて下さい。
1、 動作の反応時間ついて
反応時間とは、「刺激の呈示から反応が開始されるまでの潜時」とされています。
反応時間というものは、ヒトが何らかの刺激に対して、その刺激を情報がとして知覚し、脳内の情報処理過程を経た運動指令をもとに行動することであり、その際に、各過程が分割して行うのではなく、一連の過程を総合的に円滑に行なっていることと言われています。
私の中では、この反応時間が遅れることは、転倒の危険にも繋がるものであると考えています。
では、反応時間とはどのようなもので変動するのでしょうか?
身体機能の低下に起因する内的因子、環境に起因する外的因子の2つがあります。
内的因子とは、
・脳血管障害、循環器疾患、視覚障害、認知系疾患、関節疾患、末梢神経疾患、運動器疾患などの疾患によるもの。
・疾患以外での身体的機能低下には加齢に伴う機能の減衰によるもの。
・身体的機能だけではない認知機能の低下などがあります。
上記のような、因子の影響により、反応時間は変動してきます。
それらの因子を抱えた中で患者様や利用者様が生活を行うということです。
生活となると1つのことに注意を配るだけではなく、多くの課題を同時にこなしていかないといけません。その中で、ステップ動作などを駆使してADL動作を行なっていく必要があります。
2、ステップ方向における反応時間について
方向:ステップの方向SRT、2CRT、6CRTは条件(ステップ時における条件の数であり6CRTで1番条件が多く情報処理が複雑な状態)、
SRT:視覚刺激に対して定められた脚をステップする。2CRT:脚の左右の選択、6CRT:脚の左右の選択、と方向の選択
ST(シングルタスク)、DT(デュアルタスク)は課題
SRT、2CRT、6CRTの順にRTが優位に延長しています。情報処理が複雑になるにつれて反応時間の延長がみられます。
ST、 DTにおいては、刺激の種類が二つになることで反応時間が遅くなったことが表からもわかります。
ステップの方向においては、どの方向においても条件と課題が増えることで、反応時間が遅くなっていることがわかります。
予想通りと言えばそうなるのですが、このようにしっかりと数字で示されているからこそ、そこに根拠が生まれてきますし、自分がどのように考えて、評価やアプローチしているかということが経験だけでしていることではないという自信にもなると思います。
このことからも、条件や課題を増やしていくことは反応時間を延長させることになり、人によっては転倒に繋がる危険が増加することになります。
では、私たちはどうしていくのが良いのでしょうか?
3、評価やアプローチについて
当然、それを踏まえた中で、評価やアプローチを考えていかないといけませんよね。
評価においては、条件と課題に分けて行うことが大切になります。
私もよくしたことですが、条件と課題を分けずに評価してしまうことが多かったように思います。
条件を決めているにも関わらず、そばで話しかけてしまったり、別のことをさせてしまったりと評価をしっかりとできていないのに条件や課題を勝手に増やしてしまい、患者様や利用者様が混乱している状態になっていました。
私がよくした失敗は動作中に説明をしてしまうことです。一見、良さそうに見えるのですが、患者様や利用者様からは「話に注意を向ける」という課題を増やしてしまっていることになります。
それを良かれと思い、評価中に話をしていました。
条件と課題を決めて評価すると考えたのであれば、不必要なことは入れてはいけません。
それでは、自分が本当にしたい評価が薄れてしまい、評価できなくなります。
結局、何を評価していたのか、分からなくなったら本末転倒です。
アプローチでも一緒です。
これも私の経験なんですが、1つ1つしたことに対して再評価をすることで、本当に効果的な治療であったかを判断していかないといけないのに、いろんなことを行ってしまい、結局、何が効果があって効果がなかった、もしくは効果が少なかったなどが分からず、いつも取捨選択せずに色々することが多く、効率的に効果あるアプローチができていなかったと思います。
だからこそ、評価やアプローチにおいても条件や課題に考慮して行っていくことで、問題点に対して明確な評価やアプローチを行うことができます。
評価やアプローチをする際には、同時にいろんなことをしようとしていないかということを客観的に観察してみて下さい。
それだけでも、評価やアプローチの質が変化してくると思います。
是非、少しずつでも良いのでやってみて下さい。
今回も最後まで読んでいただきありがとうございました。
少しでも考え方の参考になれば幸いです。
参考文献
日常生活活動の分析~身体運動学的アプローチ~ 第2版 医歯薬出版株式会社
側方ステップ開始動作時における姿勢制御の加齢変化 理学療法学21(3) 267-273,006
サイドステップ動作に関する身体運動学的研究 理学療法学第36巻2号49-57,2009
横歩き時間と動的バランス能力との関連性について 理学療法学29(5) 789-792,2014
若年者と高齢者における前方・側方ステップ動作について 理学療法学25(3)357-362,2010
THE ANNUAL REPORTS OF HEALTH, PHYSICAL EDUCATION AND SPORT SCIENCEVOL.27, 53-56, 2008
横歩き時間と動的ハバランス能力との関連性について 理学療法科学 29(5):789–792,2014
ステップ動作におけるステップ方向と 距離の制御方略に関する分析 理学療法科学 30(6):993–998,2015
ステップ動作における単純反応時間と選択反応時間の分析 理学療法科学 32(6):783–786,2017
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