筋力増強訓練についてPARTⅡ~なぜ、特異性の原理が大切なのか~
皆さんおはようございます🙇♂️本日も臨床BATONへお越しいただき、ありがとうございます。
最近子供が野球を始めた事で毎日のようにキャッチボールしているのですが、日々上達しているのを見ていると継続の大切さを改めて実感している304日目担当のジュニアことPT吉岡勇貴です。やる気に満ちているこの時期をどのように生かしていこうか悩み中です(^-^)
★はじめに
前回筋力増強訓練についての復習を簡単にお伝えしていきます。
筋力増強には必要な原理原則があり、それが下記の一覧となります。
この原理原則とは何か?筋力とは?筋肥大とは?個人?という内容について前回はお伝えしています。簡単に言うと臨床の筋力増強訓練では同じ運動の繰り返しが行われている事が多いが、個人に合わせた筋力増強訓練を考えていく事が大切である事をお伝えしています。
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筋力増強訓練について~筋肥大は必要?~|脳外ブログ 臨床BATON|note
その中でも今回は特異性の原理という部分に着目していきます。なぜなら、【特異性とはそのものに備わっている特殊な性質】というような意味があるだけに考え方や取り組み方で色々な方法が選択出来るのではないかと僕自身は考えています。
各々の特徴を把握した中で患者さんに適したもの(目的に適したもの)を組み合わせて筋力増強訓練を行う事でより効果的な訓練になっていくと考えています。
★収縮様式
・等尺性収縮(アイソトニック)
関節運動を伴わない運動で筋肉の長さが変わらない状態で筋肉が収縮します。よって最大の抵抗との釣り合いがとれる最大収縮となります。
例えば、スクワットをした際に膝を曲げていき途中で止めた状態で保っている時や手で荷物を持っている時などは等尺性収縮が使われています。
このような時に強い筋活動を必要としますが、日常生活上では等尺性収縮というより後から述べる等張性収縮が主に活動してくる事が考えられます。
しかし、臨床上膝関節疾患があり関節運動によって痛みを伴うような患者さんであれば、まず等尺性収縮による関節の動かない収縮を出していくこともあります。
この場合だと最大収縮というような大きな力ではなく筋収縮を感じる程度の抵抗感で行っていき徐々に関節運動を伴うような運動を行っていきます。
・等張性収縮(求心性・遠心性収縮)
収縮様式は下記のようになっています。
一般的に求心性収縮より遠心性収縮の方が筋力の増加が大きいとされている。筋力増強という目的の中だと遠心性収縮を選択していく方が良いと考えられます。
しかし、臨床上筋力増強訓練の様子を伺っていると求心性収縮を用いているケースが多いではないでしょうか?僕自身も振り返ってみるとそのような選択になっている事が多いです。
なぜ、そうなってしまうのか考えた時にまず遠心性収縮が出来ないもしくはコントロールが困難となっている事が多いからです。
ここに関しては求心性収縮での筋力がどれくらいなのか確認が必要となってきます。求心性収縮が弱い中で遠心性収縮のように伸びながら筋収縮を行う事は困難であり、目的とした筋へのアプローチが難しくなってしまいます。それに気づかず続ける事で関節への負担が大きくなる事で痛みを伴ってしまったりという事にも繋がりかねませんし目的とは違った筋が増強される可能性もあります。
強い力を発揮するにはある程度の土台が整った状態で取り組むことで他への悪影響を少なく出来るのではないかと考えられることから、まず求心性収縮での筋力向上を図っていきながら遠心性収縮も徐々に追加していくことが望ましいのではないかと思います。
僕自身は高齢の患者さんと訓練に取り組む機会がほとんどであり疲労感を考えた時に求心性収縮を選択する事がほとんどでした。なぜなら、『キツイ』運動をした後に特に効果がないとなると筋力増強訓練に取り組むモチベーションの低下もしくは強度の高い動作等はしたくないといったことも考えられるからです。
しかし、実際には求心性収縮運動だけの単純な1つの運動ではなく、遠心性収縮のような負荷の強いものも加えていきながら筋力増強訓練を継続させていく事が筋の形態変化の筋肥大・筋の質的部分へと繋がっていくのだと感じています。
ここでもう1つ考えなければならないのが遠心性収縮を行う事でどのような動作が獲得できるかいうと難しい所です。着座動作や階段昇降といった動作で大腿四頭筋は遠心性収縮に働きますがそれだけが全ての要素ではないです。しかし、以前までは大腿四頭筋の遠心性収縮の練習を反復する事で獲得しようと訓練していましたが上手くいかない事が臨床上多かったのが事実です。なので、求心性収縮と遠心性収縮どちらが良い悪いとかではなくどちらも必要ではありますが、現状の患者さんにとって必要なものを選択して欲しいと思います。
・等速性収縮
全可動域にわたって同じ速さで最大張力を発揮することができる収縮方法です。アイソトニックやアイソメトリックと比べて筋力増強を図るのにより効果的だと言われています。
しかし、全可動域に対して等速で等負荷をかけるということが徒手的には困難となります。なので、マシンを使ってのトレーニングが一般的となりますが、病院・施設等では難しいのが現実です。
ここまで筋収縮様式について書いてきましたが、それぞれに特徴的な要素があり、患者さんに必要なものを選択することが重要になってきます。
そして、この収縮様式に加えて下記の条件も選択の仕方によって色々なバリエーションを作る事が出来ます。
★収縮速度
低速(スロートレーニング)では筋肥大が期待されています。スロートレーニングでは関節への負荷や血圧上昇といったリスクがありません。その中で従来よりゆっくりとした運動をすることで、持続的な筋発揮による血流の制限、筋内の代謝環境の変化と関係している。これによって筋肥大・筋力増強効果が認められている。
高速では筋パワーが期待されています。筋パワーとは筋力×速度で構成されており、日常生活の動作能力には必要だと言われています。
その筋パワーを増加するのに必要な負荷量は以下のように言われています。
例えば、僕自身は高齢の患者さんであれば低速トレーニングから開始し神経的要因から筋発揮が促されてくれば高速の運動も組み合わせていく事を意識しています。高速トレーニングに関しても徐々に回数を増やしていきながら、負荷量も考慮して取り組む事で様々な効果がうまれてくると考えています。筋パワーを発揮する為には筋力×速度なのでまずは筋力を高めていく事が必要となってきます。
★関節角度
関節角度特異性は筋が短縮した状態で訓練する事で効果が発揮されます。また、等尺性収縮の際の関節角度もしくはその前後角度で筋力は増加するとされています。
例えば肘関節屈曲90°の状態と肘関節屈曲10°では90°の方が筋力増強の効果があり、またその前後の関節角度でも同様に筋力増強の効果がるとされています。
しかし、ここで考えなければならないのはその等尺性収縮の関節角度で筋力増強することが何の動作に繋がるのかを考えなければいけません。
僕自身もよく筋力を強くすることが目的になっていることが多かったです。筋力を強くすることは悪いことではないですが、どの動作に繋がるのかを考えた中で取り組めるとより効果的だと臨床上感じます。ここの繋がりが少なくなると筋力増強訓練の反復、ADLはADL動作の反復だけになってしまうので非常に勿体ないと思います。僕自身それをやってしまっていたのでなかなか患者さんのADLが拡大せずに悩んでいたように思います。
まとめ
今回は特異的の原理という部分に着目してきましたが、筋力増強訓練という何気なく臨床で行っている訓練でさえ色々な選択肢があり、それによって効果にも変化があることは臨床上でもとても感じています。それに個人で目的・目標が違い、または身体的な機能にも違いがある事から筋収縮様式・速度・負荷・動作・関節角度が同じでは効果的だとは考えにくいです。
だからこそ、患者さんに適した筋力増強訓練はどうような組み合わせがベストなのかを常に考えながら、期間に応じて再考していくことも非常に大切であると考えています。
そして、前回の原理原則を含めて考えていくと多くのバリエーションが筋力増強訓練には含まれている事がわかります。
ここまで考えていくと非常に面白くなってきませんか?僕自身はとても面白く感じています。それに加え筋の特徴によっても色々変わってくる部分があるのでより一層バリエーションが増えていきます
(次回はその辺りを踏まえた内容にしていきたいと思います)
最後に僕自身は筋力増強訓練をする事がADL拡大に向けてどうように影響を与えているのかを明確にすることが重要だと感じています。
そこの繋がりがないと何回かお伝えしていますが、筋力増強訓練・ADL動作訓練の単発的な訓練が繰り返されるだけになってしまい、患者さんは状態が変化しない事に不安や焦りを感じてしまいいろんな面に影響を与えかねないと危機感を感じています。
目的・目標をもってその為になぜ筋力増強訓練が必要なのかを説明しながら取り組めるとより効果的だと考えています。
筋力増強訓練についてはいろんな選択肢があるからこそ、これを機会に筋力増強訓練についてもう一度再考して頂けるきっかけになれば幸いです。
最後までご購読頂きありがとうございました。今後とも臨床BATONをよろしくお願い致しますm(__)m
参考・引用文献
小林 拓也 他 筋力増強運動における運動速度と収縮様式の違いが骨格筋の微細損傷に及ぼす影響.理学療法学.2014年41巻5号p.275-281
市橋 則明:筋を科学する.理学療法学.第41巻第4号.217~221貢(2014年)
パワーの為のトレーニング原理.NSCA.JAPAN Volume20,Number4,pages 16-26
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