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Timed Up & Go Testをもとに転倒に対してのアプローチを考える ~機能的要素と運動要素に分けて考える~

本日も臨床BATONにお越しいただきありがとうございます。
第70日目を担当するのは、脳神経外科病院にて急性期~回復期のリハビリテーションを担当している清水啓史です。

前回は「歩行自立の判断に悩むセラピストの方々へ~病棟内の移動自立に必要な知覚・認知情報とは~」についてお伝えしましたのでぜひどうぞ!


本日のテーマは、
Timed Up & Go Testをもとに転倒に対してのアプローチを考える
~機能的要素と運動要素に分けて考える~についてです!

PTの方々であれば臨床において必ず一度は実施したことのあるテストではないでしょうか。私も頻繁に使用します。
皆さんはTimed Up & Go Test(以下TUG)をどういった目的で実施されますか?
TUGは下肢の筋力やバランス、歩行能力、転倒リスクとの関連性が高いとされており、最大歩行、片脚立位保持、下肢筋力、ADLとの関連が多数報告されています。

私はTUGが転倒との関連が強く、患者様の転倒リスクを評価するために実施していました。
測定値をカットオフ値と比較して転倒リスクがどの程度あるのかを確認する方も多いのではないでしょうか。
しかし、これだと「転倒しないためにはどうすればいいのか?」という部分に繋げることが出来ていませんでした。
今回はTUGを運動要素機能的要素に分けて、転倒しないためにどうすればいいのか?ということを考えていきたいと思います。



TUGとは

1986年にMathiasらによって高齢者のバランス能力を評価できるように「Get up and Go」テストが開発され、その後にPodsiadloらによって現在のTUGが考案されました。

参考文献
Mathias S, Nayak US, Isaacs B. Balance in elderly patients: the "get-up and go" test. Arch Phys Med Rehabil. 1986;67(6):387-389.
Podsiadlo D, Richardson S. The timed "Up & Go": a test of basic functional mobility for frail elderly persons. J Am Geriatr Soc. 1991;39(2):142-148. doi:10.1111/j.1532-5415.1991.tb01616.x

TUGが考案されたのは、高齢者のバランス能力を評価するためであるので、TUGの目的はバランス能力の評価なのです。

現在では、通所・訪問リハビリテーション計画書で「6分間歩行試験」もしくは「TUG」のどちらかを測定する必要があるため、介護現場においても重要視されるようになってきました。



TUGの方法

【準備物】ストップウォッチ椅子コーン(目印となるもの)
準備が簡単に行えるのは非常にありがたいですね!

TUG方法

歩行条件に関して原法では「通常の歩行速度(楽な速さ)」とされていますが、「最大の歩行速度」で実施する方が測定時の心理状態や教示の解釈の違いによる結果の変動を排除できます。
つまり、「最大の歩行速度」で測定することにより、高い再現性を得ることができるのです。

参考
日本理学療法士協会 E-SAS TUG測定方法
http://jspt.japanpt.or.jp/esas/pdf/e-sas-s-tug.pdf




TUGのカットオフ値

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