韓国の両親と、フランスの娘について
私が暮らす韓国では、5月は「家庭の月(가정의 달)」と言われています。5月5日「子どもの日」、8日「両親の日」、15日「先生の日」というように、家庭に関わる記念日が集まっているからだそうです。
「子どもの日」には家族で遊びに行ったり、子どもにプレゼントをあげたりする家が多いようですが、3歳児を育てているわが家はいつもの週末と同じく、野原を散策しただけで、特別なことはしませんでした。
しかし、「両親の日」は何もしないわけにはいきません。結婚1年目の時は、つわりの終わりかけで身動きがとれず、韓国文化や夫の家族についても知らないことが多かったので、義両親に1通のメッセージを送って終わってしまいましたが、結婚5年目の今では、義父と義母それぞれに“現金”を贈るのが定番になりました。
日本で生まれ育った私は、親にお金をあげるという文化に馴染みがなく、両親の日や誕生日、旧正月などの節目節目に親にお金を渡す夫や親戚の姿を見て、最初はびっくりしました。でも今では自ら封筒にお金を入れて準備するという、この変わりよう(笑)。毎回何を贈ろうかと悩まなくて良く、気に入らないものをあげてしまうという失敗もない。私たちも楽だし、義両親も嬉しそうなのです。
金額はその時々で変動します。経済的に厳しい時期なら無理をせず、臨時収入が入った時なら少し多めに、という感じで。あとは、できる時や義両親が必要としている物がある時だけ“贈り物”を。今年は現金と、在韓日本人女性が営むカフェの手作りレモンケーキをプレゼントしました。韓国で贈り物と言えば、高価な物や量が多い物が好まれる傾向ですが、義両親は質素倹約派な上に私たちの懐具合を知っているので、ささやかな物でOK。その辺はとても助かっています(笑)。
そして最後は“身体で奉仕”です。リンゴ農家を営む義両親は、これからの季節、毎日山ほど畑仕事があります。5月の今はリンゴの花摘み作業に追われているので、両親の日を含む週末は、2泊3日義弟家族と一緒に、延々と農作業を手伝ってきました。
リンゴの木をよく観察すると、通常、花が5つほど固まって咲いています。その5つの内、中心にある大きめの花だけを残し、他を全部摘み取っていきます。厳選した花がその後少しずつ成長し、リンゴの実となるのです。
今回は夢にまでリンゴの木が出てきそうなくらい、たくさん花摘みした気がしますが、切らなきゃいけない花はまだまだいっぱい。近々もう一度手伝いに行かないといけないかも?!
さて、そんな「家庭の月」を過ごしている真っ最中ですが、遠く離れたフランスの家族について書いたエッセイが、WEBマガジン『Stay Salty』に掲載されました。国際結婚(日•韓)&ステップファミリー(日•韓•仏)であるわが家について書いています。
【不定期 連載エッセイ】
第2回『フランスにいる娘のこと』
ステップファミリーとは、再婚や事実婚により血縁のない親と子が家族になることを指しますが、わが家は私(日本)、夫(韓国)、息子(日•韓)、フランスで暮らす夫の娘(韓•仏)という構成のステップファミリーです。
ヨーロッパなどでは多国籍な家族って珍しくないのかもしれませんが、日本や韓国で、わが家のようなステップファミリーの形を見聞きしたことがなかった私は、新婚の頃、参考になるようなブログや書籍がないかと探したことがありました。しかし、これというものが見つからないまま時が過ぎ…。
結婚から4年目の2021年、やっと「こういうお話が聞きたかった!」という1冊を見つけたのです。それは、ドイツ人男性と結婚し、オーストリアで田舎暮らしをしている女優・中谷美紀さんのエッセイ『オーストリア滞在記』。
パートナーの娘との交流や、前妻との関係、娘との共通言語であるドイツ語を地道に学ぶ様子などが綴られていて、私は勝手ながら同志を見つけたような気分になり、夢中になって読みました。
こんな風に自分の経験や境遇を言葉で伝えることが誰かの参考になるのなら、私も書いてみようと思い、今回初めて、夫の娘との出会いから今日までについて綴ることにしたのです。
Instagramのストーリーでエッセイ掲載のお知らせをした直後、「私自身がステップファミリーなんだ」と、学生時代の友人が連絡をくれました。「住む国が違うとやはり習慣や言葉も大変だけど、血じゃないと強く思うよ。血の繋がりをこえる繋がりって絶対ある」と。まさかこんな感想を聞かせてもらえると想像もしていなかったので、とても嬉しかったし、書いてよかった!(Mちゃん、ありがとう)
今年は毎日の仕事&子育てに加え、フランスの娘の韓国訪問や、義両親の畑の手伝いで秋まで一気に駆け抜けることになりそうですが、秋の終わりには3年ぶりに日本の家族に絶対会いに行きたい。それが切なる願いです。