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脳卒中後遺症の回復のメカニズム【素晴らしい脳の可塑性】
お疲れ様です。はらリハです。
本日は…
「脳卒中後遺症の回復のメカニズム『脳の可塑性』」について説明します。
結論
ここで伝えたいのは…
『脳卒中により死滅した脳細胞は二度と蘇らないけど脳の可塑性と呼ばれる新しい神経回路を再構築する方法を利用すれば後遺症は回復する』
です。
脳卒中後遺症は脳の病気であり、脳の神経細胞が機能しないことで運動麻痺や感覚障害、言語障害などが出現します。
これらを解決する為には「脳の神経細胞を再び機能させる」ことが必要です。
しかし、脳卒中により死滅した細胞が蘇ることはありません。
※現在は再生医療が進んでおり、これが解決する可能性も出てきています
では、どうすれば脳卒中後遺症が回復するのでしょうか?
それを説明します。
はじめに
先ほども述べた通り…
一度死んでしまった脳細胞は蘇ることは二度とありません。
その神経細胞の働きによる「脳機能」も失われます。
例えば…
☑︎ 運動を司る脳機能が失えば「運動麻痺」が起きる
☑︎ 感覚を司る脳機能が失えば「感覚障害」が起きる
☑︎ 言語を司る脳機能が失えば「言語障害」が起きる
など、
『ある領域が障害を受けるとその領域を司っている機能が使えなくなるのが脳卒中後遺症』です。
では、どうすれば脳卒中後遺症は回復するのでしょうか?
脳卒中後の2つの回復
みなさんは「プラトー」という言葉をご存知ですか⁇
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上記の図のように、脳卒中発症から 180 日を超えると改善が難しいと言われています。
これを専門的にはプラトーと呼ばれています。
しかし、上記の記載はすべて予測であり、この予測は正確でもありません。
なぜこのような予測をしてしまうのか…
その理由はいくつかあります。
[ プラトーの誤った見解はなぜ起きるのか? ]
☑︎ 医療従事者の中には、慢性期の患者は全く回復しないと認識している人が多い。(本当は、10年後でも、20年後でも回復します)
☑︎ お金の節約の為、支払い者(保険会社や医療保険制度など)が、セラピストに対して圧力を与える為、長く続けたくても継続ができない。
☑︎ 支払い者は、数字でしか物事を見ないので、セラピストが行う評価バッテリーの変化が乏しいと、改善していないと誤認する。
…本当に変化していないと思いますか?
☑︎ 新しい治療技術が生まれ、それが効果的な治療であっても、臨床で実践されていない。
☑︎ 回復の潜在性があっても、最も効果的な治療が行われていない。
☑︎ 家族の早く退院させたい希望や、本人の入院生活のストレスをセラピストが敏感に感じる事で、早期的な退院、不十分な回復に至ってしまう。
☑︎ セラピストは「機能的で安全なレベル」を目標に臨床を行う。ここでいう「機能的」は、実用的能力を意味する。歩行の場合、杖や装具を使用しても安全に歩けていれば「機能的歩行」とみなされる。つまり、麻痺からの脱却ではなく、自宅で生活を送る為ならいまの機能で、できる方法も容易に検討しているということ。
では、なぜ発症から3ヶ月の期間では回復が早いのかを説明します。
[神経学的回復] = 自然回復
発症から180日間は…「神経学的回復」と呼ばれており、自然回復の期間です。
この期間では、”脳卒中により傷付けられた神経が回復する”ため、回復速度が非常に高いと言われています。
その為、この期間が過ぎると、冒頭にもあるように 180 日を超えると改善が難しいと言われていますが、180日以降でも回復する可能性は大いにあります。
[機能学的回復] = 学習
発症から180日以降の回復には…
「機能学的回復」と呼ばれる”脳を使って神経のネットワークを再構築することで機能が回復する過程”を利用すれば、発症から10年、20年経過しても、後遺症は改善します。
180 日間は「自然回復」、それ以降は「学習」のイメージを持つとわかりやすいと思います。
では『機能学的回復』とは何か…
ここが表題でもある『脳の可塑性』と大きく関係していきます。
脳の可塑性とは?
脳の可塑性についてMerzenichらは以下に報告しています。
猿の第3指を切断し、切断後の体性感覚野における変化を調査した。
その結果、体性感覚野における体部位再現が第2指と第4指の領域が切断した第3指の領域を占めるように変化することを報告した。
簡単に言うと、脳の神経配列は変化するという報告です。
この報告から、可塑性原理が始まり、回復のメカニズムに脳の可塑性が存在し、解剖学的、生理学的変化が起きることが証明されました。
また、Nudeらによるリスザルを用いた実験では、よりリハビリ医学に多大な影響を及ぼしました。
人工の梗塞を作り、肩関節、手関節、手指に麻痺を作り、麻痺側だけで餌をとる課題を訓練し、訓練前後における一次運動野の再現度を調査した。
その結果、手指を主に使用する運動課題は、使用した手指を支配する領域の拡大がみられ、前腕を使用する課題では、使用した前腕を支配する領域が拡大することを明らかにした。
その一方で、手指の課題の訓練後では前腕の領域が縮小し、前腕の課題の訓練後では指の領域の縮小も認められることも報告した。
また、人工梗塞の作成後に麻痺側を使用しない場合、運動機能の回復は認めず、一次運動野における手指、手関節の領域は肩の領域に変化した。
ここでは「どの身体部位を使用したか、またどの程度の頻度で使用され学習や経験がなされたかによって脳細胞のシナプス結合が変化」し、行動にも変化が現れることが明かされました。
これらの研究からわかることは…
『死滅し細胞は蘇ることはありませんが、生き残っている細胞を新しい神経回路として活用することはできます』という事です。
つまり、
☑︎ 運動を司る脳機能が失えば「運動麻痺」が起きる
☑︎ 感覚を司る脳機能が失えば「感覚障害」が起きる
☑︎ 言語を司る脳機能が失えば「言語障害」が起きる
これらに対して、脳損傷を受けていない別の脳領域を代用して、新しい神経回路を構築すれば、これらの症状は改善する可能性がある、と言うことです。
では、どうすれば「脳の可塑性(機能学的回復)」を利用できるのでしょうか?
回復に必要なポイント2選
脳の可塑性は闇雲にリハビリをしても起きません。
脳の可塑性を得るには…
☑︎ リハビリ(トレーニング)の質
☑︎ リハビリ(トレーニング)の頻度と回数
の2つが重要になります。
☑︎ リハビリの質
2005年、猿を対象に行われた研究では…
[脳の回復とリハビリ(トレーニング)の質の関係]
◯ 実験の内容
口の広い瓶と狭い瓶の中にそれぞれ餌を入れて、2つの群(A /B)に分けられた猿がそれを取って食べると言うもの。
A:口の広い瓶→簡単に餌が取れる
B:口が狭い瓶→餌をとるのが簡単ではない
◯ 結果
上記の2群に分けられた猿が運動を実行した後、一次運動野(運動の指令を手足に送る脳の領域)を観察した結果…
→ 口が広い瓶から餌を取った猿は約13,000回も手の屈伸運動を行なったにも関わらず、一次運動野に変化は見られなかった
→ 口が狭い瓶から餌を取っていた猿は一次運動野に可塑的変化が生じ、手に関する脳領域の拡大した
つまり…
リハビリは『なんとかできそうなレベルの課題を行うと機能は回復する』と言うことです。
☑︎ リハビリの回数/頻度
1998年に行われたラットの研究では…
[脳の回復とリハビリ(トレーニング)の頻度]
前足を使ったリーチ運動を行なったラットは訓練開始から3〜7日間までパフォーマンスは向上したにも関わらず、一次運動野の脳内マッピング(脳の領域範囲)は大きな変化が見られなかった。
しかし、その後の訓練開始から10日以降になると、パフォーマンスはさらに向上し、それに伴い、前足に対する脳領域が拡大した。
ここでは…
『ある程度、繰り返しリハビリを取り組まなければ、脳の領域には変化が得られない』と言うことです。
脳の可塑性を狙ったリハビリには…
『脳の可塑性が生じる適切な難易度設定を行い、リハビリを繰り返し行うことが回復には必要』です。
難易度がいくら適切でも、頻度/回数が少ないと機能回復はしません。
逆も然りです。
上記のことを踏まえたリハビリを取り組みましょう。
終わりに
ここまで読んで頂きありがとうございます。
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上記で解説しているように…
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