ヘルシンキの電車は誰もに優しかった。
最近、都内を歩くと、来年のオリンピックに向けて街のバリアフリー化が進んで来ていることをひしひし感じます。
例えば、公園や駅などにも高齢者、車椅子ユーザー、お子様連れの方向けのトイレ「だれでもトイレ」も増えてきました。(個人的には「だれでもトイレ」という呼称だと、本当に必要な人が必要な時にすぐ使えない場合も多いのではと懸念してしまいますが。。)
日本で電車利用がハードル高いのはなぜ?
ただ、駅の場合だと、車椅子ユーザーの場合、一番メインの車椅子で電車に乗ることがまだまだハードルが高いのです。。
なぜ、ハードルが高いのでしょう?
車椅子介助者である私の視点でいうと2つの理由があります。
1:電車とホームの溝が広い電車が多くスロープが必要→スロープ準備のため、駅員さんの手を借りる必要がある。
2:電車に車椅子スペースが無い→電車が混んでいると、周りの乗客の方から良い顔をされない&肩身の狭い思いをする。
1に関しては、駅員さんは本当に親切な人が多いです。だから、きっと嫌な思いをすることは無いと思います。だけど、お願いをするのも「申し訳ない。。」と思って、逆にストレスを感じてしまうのです。あと、お願いをするという手配が必要になってくるので、気軽には乗れないかなあと。
2に関してですが、乗客の人も意地悪な気持ちな人ばかりでは無いと思いますが、まあ、混んでいると邪魔に感じてしまいますよね。。
電車が快適に乗れる海外都市
現在、NOTEで足が不自由な母との旅行で気づいたことについて書いている私。では、この2点がクリアになった、電車での移動にストレスを感じたり肩身の狭い思いをしなかった都市についてちょっと思いを巡らせてみました。
ヘルシンキの電車と車椅子
まず頭に浮かんだのはフィンランドの首都「ヘルシンキ」。
ヘルシンキの玄関口はヘルシンキ中央駅。ここから、例えばサンタクロース村で有名なロヴェニエミなど有名なフィンランドの主要観光地へ行くことが出来ます。
またこの中央駅付近は、目抜き通りであるエスプラナード通りからも歩いて5分くらい。主要観光スポットも周辺にに集結し、ヘルシンキに訪れた旅行者の多くが通ったり利用する駅になります。
駅内はバリアフリーでベビーカーと一緒の方も多く見受けられました。それだけで、心の負担が随分変わります。車椅子で段差をクリアしていくのって、段の高さにもよりますが結構な力が必要。だから「あそこにはあの段差があるから、気合いいれなきゃ」と、私は段差のちょっと前くらいでいつも心構えをしていたんです。そんな力も心構えもここでは全く必要ありません。
あー、快適。快適。
駅正面のドアからホームまで段差はありません。
私が電車に乗って向かおうとしていた場所は「ミュールマキ教会」。圧倒的な光の美しさで有名な教会で、本で紹介されるのを見掛けてからいつかは見行ってみたいと思っていたんです。
「ミュールマキ教会」へ行くには、ヘルシンキ中央駅から国営鉄道であるVRのMラインに乗りLouhela駅で下車をします。
Mラインのホームに行くと、ホームで自転車を押しているを見掛けました。こういう光景を見るとあぁヨーロッパに来たなと思います。
Mラインのホームに行って、さぁいよいよ電車が到着しました。ここで、私は驚きました「えぇ!なんて分かりやすいの。」。だって車両に、「この車両は車椅子と自転車の人向けの車両だよ」と非常に分かりやすく大きくイラストで描いてあるのですもの。
ね、こんな感じです。
実はこの車両は私たちの大分遠くにとまったので「わー、やばい。乗れるかな?」と一瞬とっても焦り。。でも、そんな焦りは杞憂で、すぐ前に別の車椅子&自転車向け車両が停車したんです。
勝手に、一つの電車に対し一車両だろうと思い込んでた私。あぁ、何てありがたい。。
電車に乗るにはドアのオープンボタンを押し乗り込みます。
自動でドアが開く日本と、ちょっとシステムが異なりますのでご注意ください。私は、一瞬、自動でドアが開くのを待ってしまいました。。
ドアを押したら後は乗り込むだけ。段差もないので駅員さんの手を借りることなく乗り込めます。車椅子だからと、何か特別な手配をする必要もありません。
これは電車の中から撮った写真です。降りる時も、このオープンボタンを押します。
電車の中はこんな感じ。分かりにくいですが、手前が母の車椅子、その横に自転車ユーザーさんの自転車が置いてあります。
私達が電車に乗った時は、20代前半くらいでしょうか。1人の男性の自転車ユーザーさんが既に乗っていらっしゃいました。彼は自分の自転車が、母の車椅子の邪魔にならないか気にされ、そんなふとしたコミュニケーションにも人の優しさを感じました。
車椅子や自転車の方向け車両なので、皆、誰かに迷惑を掛けないかと気兼ねすることなくリラックスして電車の旅を楽しんでいます。
のんびり車窓を眺めていると、あっという間に目的地に到着。電車に乗っていたのは大体20分程でしょうか。
Louhela駅からミュールマキ教会は、すぐ。ちなみにミュールマキ教会は入り口までにバリアフリー経路があるので車椅子の方も安心して入ることが出来ます。
光で満ちた礼拝堂。自然光とライトの光のバランスが、爽やかな荘厳さを引き出していて特別な空間でした。
街全体としての取組み
今回は、国営鉄道であるVRのMラインをピックアップして、ご紹介しました。
ただヘルシンキのほとんどの電車は、このように体が不自由な人でも快適に過ごせるような仕組みになっています。そして、電車のみならずヘルシンキの街全体も、体が不自由な人が快適に過ごせるよう整えられているなと感じました。
それはなぜでしょう?
調べてみると、これはヘルシンキ市が実施している Helsinki for all というプロジェクトの大きな成果のようです。このプロジェクトのゴールはwebサイトによると
The goal of Helsinki’s accessibility work is a city in which everyone can move and live with ease, regardless of age and physical condition.
と、年齢や体の障害に関わらず全ての人が安心して暮らし移動出来る街作りとしています(あまりちゃんとした訳が出来ず、すみません。。)
このプロジェクトが2004年に作成したsurakuというガイドラインは、現在のヘルシンキや周辺都市の街づくりのベースとなっています。この内容は、アクセシブルな街にするには具体的にどうすれば良いかを定めたものになります。
また、そのような街づくりは人々の心にも影響を及ぼしていると街を歩いていると感じます。人々の意識として「色んな人がいるのは当たり前だよね、支え合って皆で生きていこう。」が根付いていて、人々がごく自然な形で困っている人がいたら寄り添っている姿には、あるべき社会の姿を見た気もします。