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Daxi~洗礼を受けた聖女~
原作 中村 宙史
天正6年6月
三木合戦
書写山圓教寺
織田信忠『……秀吉めの三木城包囲網はどうじゃ?何か動きはあるか?』
織田信孝『いえ、なきものと…』
織田信雄『………』そわそわしている
織田信忠『伝令はおるか?!毛利は上月で止まっておるのか?』
伝令『は?……はは!物見の報告によらば上月城から先には動きはござりませぬ』
信忠 急に立ち上がる
織田信忠『ふっ…ハハ…好機なり!』
織田信忠『儂はこれより東播磨一帯の三木城の支城を落としつつ、補給路を断ちにまいる!』
織田信雄『…あ!?兄上!そ、それでは上月は?!』
織田信忠『信雄……戦は先々を読んで動くものじゃ…尼子も織田の非情さを覚悟の上で織田についたはず!秀吉にでも任せおけ!』
織田信忠率いる織田軍は東播磨での活動を再開、上月城救援のために派遣した軍勢と信忠の軍勢で6月から10月にかけて神吉城・志方城・魚住城・高砂城を攻略。
三木城に対峙する平井山本陣と包囲のための付城を築く。これによって別所氏は補給が困難になる。
荒木村重『尼子は此方についておったではないか……親が親なら子も鬼だったか…』
天正6年10月
荒木村重『儂らこれより織田家を見限り!毛利につく!』
荒木村重『儂らが有岡で籠城すれば新たな三木城の補給路が確保出来る、儂らはこの勢いで織田軍を揉み潰し、織田信長も討つ!』
荒木村次『父上!羽柴陣営より黒田殿が…』
荒木村重『捕らえよ!』
荒木村次『は!』
黒田官兵衛『離さぬか!村次殿!村重殿御目通りを!!』
荒木村次『もう…遅い…父は織田と袂を別つことを決めもうした……連れてゆけ!』
村重が官兵衛の目線を横切る。
黒田官兵衛『!!む!む、村重殿!其方!正気か!』
荒木村重『官兵衛……儂は信長という男が怖いのじゃ……』
黒田官兵衛『な、なれば!』
荒木村重『じゃからよ!信長が酔狂なうつけであるだけなら再び儂は奴が差し出す餅を刀ごと呑みこんでやるつもりじゃった!!
然し、信長はうつけでは無かった……己の野望を果たす為なら尼子殿の様な者の命を瑣末に扱う化け物じゃった! 』
官兵衛の顔を恐怖で引き攣った笑顔で見ながら
荒木村重『人の言葉を介せぬ化け物の下で働く気は失せたのよ……官兵衛、貴様も地下牢でゆっくり考えるのだ…どちらに付くかをの…』
官兵衛『村重殿…』
抵抗を止め荒木兵に地下牢へ連れて行かれる官兵衛…
それを見つめ見送る村重。
高槻城
岡島惣兵衛『ユストゥス様!一大事にござりまする!』
高山右近『サンチョか…いかがした?』
岡島惣兵衛『荒木殿が…村重殿が織田に反旗を翻したとのよし!』
高山右近急に立ち上がる
高山右近『サンチョ!その話は誠であろうな?!有岡城にはフキ(妹)や長房が……ミカエル!』
生駒弥次郎『は!これに!』
高山右近『其方、内々に織田や羽柴に悟られぬよう、有岡城の村重殿に謁見しフキ、長房の助命嘆願を理由に謀叛を納めてまいれ!』
生駒弥次郎『は!承知仕りましてござりまする!』
ナレ
しかし、この右近の策は失敗した。
右近は村重の与力であるため、暫く村重を選ぶか信長を選ぶか迷ったが…
オルガンティーノ神父
『ユストゥス……如何なる事があっても信長に反抗してはなりません。信長に降るが正義であります!……がよく祈って決断しなさい。』
高山右近『は!私は人質さえ解放されるならば…織田殿に従いまする』
ナレ
イエズス会員 オルガンティーノ神父の神託を優先し村重を見限り
右近の従兄弟であった中川清秀も共に村重を見限りこれが荒木村重敗退の大きな要因となり…
荒木村重『村次!毛利は!』
荒木村次『……』首を横に振る
荒木村重『なれば、本願寺はどうじゃ!』
荒木村次『……』
荒木村重『何故じゃ!何故誰も分からぬ!人の言葉を介せぬ化け物を信ずる道理が何処にあろうか!!』
9月2日 夜半…有岡城。
荒木村重『すまん…ダシ…皆の者…』
有岡城に妻子、与力の人質家族を置いて数名の家臣とともに村重が逃亡する。
ちよほ『皆の者怯えるでない神が守うてくれまする』
侍女『お方さま!Daxi(ダシ)様、殿が……』
ちよほ『どうなさいましたか?』
侍女その場に崩れ落ちる。
侍女『我らを見捨て有岡城から逃げられたとのこと…』
ちよほ『……村重様!!』
12月16日 京 六条河原
津田信澄『首を刎ねよ』
津田信糺『……くっ!は、はは!』
信糺がゆっくり手を上げる
次々と首を刎ねられゆく荒木一族
侍女『Daxi様!いやあぁぁ!』
ザッシュ
乳母『Daxi様だけは!Daxi様!お逃げを!』
ちよほ『皆々、最期まで私に付いて来てくれて有難う……』
ちよほ『みがくべき心の月のくもらねば ひかりとともににしへこそ行』
六条河原の人混みに混じった乞食の様な姿の男(荒木村重)が ちよほの最期を見届けている。
乞食の様な姿の男(荒木村重)
『すまぬ!すまぬーー』
泣き崩れる
時は流れ……
1586年
大坂城
羽柴秀吉様のおなーりーー
羽柴秀吉『官兵衛、此度は何様じゃ』
黒田官兵衛『此度は先の天災により崩落した内ヶ島殿の帰雲城の処理についていかがなさいますか殿下のお考えをいただきたく……』
羽柴秀吉『内ヶ島のう、あれは悲惨であったのぅ……しかし、我らは生きておる故、これからの事を考えねばならぬからのぅ……』
黒田官兵衛『内ヶ島殿の直接の主は金森長近殿ですが、我らも支援をすべきかと…』
羽柴秀吉『長近のぅ……信長様時代からの臣であるが三河の狸めの出方も気になる、長近が狸めに調略されると、ちと厄介じゃの……』
羽柴秀吉『……道糞!、そなた、確か長近とは茶の湯で交流があったのではないか?
どうじゃ?長近は、信ずるに足る男か?』
道薫『……は…恐れながら、長近殿は豊臣家に身を尽しておりますれば……私のような……裏切りはしないと存じまする…』
黒田官兵衛『……!村重…ど…の?!』
道薫『……官兵衛殿……この様な場に私のような、愛した家族を…一族を…だ…し…を…うっうっうっ(泣き崩れる)捨てた、、道に掃き捨てられた糞のような者が、、、すみませぬ……官兵衛殿にも酷いことを…すみませぬ…』
黒田官兵衛『………村重…と、の…』
この年の5月4日、荒木村重は無惨に処刑された愛した一族、奥方に悔いいるようにその生涯をとじたのであった……
完