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象は世界最大の昆虫である:極私的読後感(19)

18世紀末から19世紀初頭にかけて、ドイツで高校(ギムナジウム)の教師を務めたヨハン・ゲオルク・アウグスト・ガレッティ先生が、授業で放った様々な失言を学生が記録したもの(失言録)が、本書の底本である。

その失言の内容は、本当にバカバカしくて、今の世界にとっても全く無価値である。その為、読むと大変に清々しいほどのバカさ加減に、大変読み心地の良い一冊となっている。例えば、

269 イギリスでは女王はいつも女である。(p.78)

とか、

475 ドイツでは、毎年、人口一人あたり22人が死ぬ。(p.131)

といった具合である。本書には、こういう失言が705も纏められているのだ。当時の学生に、ガレッティ先生はどれだけ愛されていたのかが、逆説的な意味で伝わってくる、まさに奇書である。

ただ、むやみにバカバカしいわけではなく、

50 アレキサンダー大王は、その死に先立つこと21年前に毒殺された。

・・・やはり頭がおかしくなりそうだ。

そう、そういう本なのだ。こういうコロナで陰鬱になりがちな今には、ピッタリの一冊である。

705 こうであったとは、そうではなかったことである。

はい、まぁ、その通りなんですがね。




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