夕焼けの団地
俺は夕焼けの団地を見ると胸が締め付けられる。
団地は地味だ。
でも俺はそんな地味な団地のような平凡でありふれた生活を手に入れられなかった。
だから胸が締め付けられる。
夕方の団地は郷愁を誘う。
物悲しくなって、もう引き返せない人生を憂う。
でもそんな団地が好きだ。
そんな団地を歩くには愛する人が欲しい。
地味な女性だ。
派手な女はいらない。
地味な女性と夕焼けの中、手を繋いで買い物袋を持って帰ることを想像すると、それが本当の幸せなような気がして切なくなる。
カラスが鳴いたらそれはもうエンディングだ。
ドラマや映画で言ったらエンディングだ。
二人が買い物袋を持って手を繋いで、夕陽に背中を照らされながら団地に帰る。
その後ろ姿でエンディングを迎える。
最近は団地に行くことが多い。
団地の中の広々とした場にあるベンチに座って時を過ごすのだ。
どこからともなくカレーの匂いが漂ってくる。
「ただいま。」と帰りたいが、そんな家庭は俺にはない。
失敗した。
人生を失敗した。
でもいいんだ。
こうやってカレーの匂いを嗅げて俺は幸せだ。
知らぬ家族の団らんを、我ごとのように味わって噛み締められるのだから。
おかげで帰り道はいつも少しの笑顔がこぼれる。
そしてとぼとぼと、夕陽に背中を照らされながら帰路につくのだった。
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ごめんなさいね〜サポートなんかしていただいちゃって〜。恐縮だわぁ〜。