カプセルや錠剤が飲めない

俺はカプセルや錠剤の薬が飲めない。
正確に言うと「飲めなかった」。
喉に引っかかって窒息しそうになるから、恐怖で飲めなかったのだ。
でも今では克服した。
それでも未だに飲む瞬間はドキドキするし、たまにすこし引っかかって心臓がドキッとする。
克服する前は独自の飲み方で飲み込んでいた。
まず、喉にカプセルや錠剤が詰まるのは、飲み込む勢いが足りないからだと考えた。
それ以前に自分の喉が細いからという自覚もあったけれど、それはどうしようもない。
ならば薬を飲み込む勢いを強くするしかない。
その為にはどうするかと考えたのだ。
俺はその為に口に薬を含んだ後、水を多めに含んだ。
次に上を向くことで水が喉に垂直に落ちるよう画策したのだ。
でもそれでも飲み込めなかった。
その原因は後々調べて気付いたのだが、上を向くて薬が水に浮いてしまうのだ。
そんな状態でゴクンとやっても水だけを飲み込んで薬は残ってしまう。
それで何回も失敗した。
そしてそこからようやく正しい飲み込み方を調べ始めた。
方法にはオブラートに包んで飲み込むという方法があった。
他にも粉薬を飲む為の専用ゼリーというものがあって、俺はそれにカプセルや錠剤を混ぜて飲んだこともある。
ゼリーだからつるんと飲み込めるのだ。
でも毎回それを使うのもお金がかかってしまう。
そこで最終的に行き着いたのは「普通に飲み込む」ということ。
変なことをしなくていいのだ。
ただ普通に飲み込むだけで良かったのだ。
そこに至ったのは、喉のつくりからして普通の姿勢で飲み込むことが一番詰まらない、という情報を見たからだ。
でもその飲み方で飲んだことはそれまで一度もなかった。
それは普通の姿勢だったら喉と口が90度で交わっているから、そこをスムーズにあの大きなカプセルや錠剤が通過できるはずがないと思っていたから。
それより上を向いて口と喉を垂直に一直線にした方が、よほど飲み込みやすいじゃないかと思っていたのだ。
でもその持論は間違っていたのだ。
それにしても不思議だ。
ご飯や肉の塊はゴクンと飲み込めるのに、カプセルや錠剤になると途端に飲み込めなくなる。
喉がキュッと締まる。
何なんだろう、あの現象は。
ちなみに今、カプセル内視鏡というものがある。
小腸や大腸を検査する為のカメラなのだが、カプセルの形をしたカメラで、それを水で飲み込んで検査をするのだ。
ごく一般的なカプセルよりも大きい。
俺はそれを見た瞬間に憤慨した。
「せっかくカプセルも錠剤も克服したというのに!今度はそれよりさらにデカいやつを出してきやがって!嫌がらせか!」と。
あの大きさは流石に飲み込めない。
小腸や大腸に何もない起こらないことを祈る。
あ、別にそのカプセルを飲み込まなくても検査方法は他にもあるか。
ホッ。
あのカプセルカメラは克服しなくても良さそうだ。
安心した。

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