母親に褒められて育ったせいで現実とのギャップに苦しんだ話
小さい頃から母親には褒められて育った。
もちろん怒られたこともあるけど、基本的には母親は俺をよく褒めてくれた。
小学生の頃、カフカの変身を読んでいたら、「こんな難しいのがわかるなんてすごいわね。」と感嘆してくれた。
また、友達の仕草を真似した時なんかも、「◯◯ちゃんはほんと人の特徴をよく見てるね、うまいうまい。」と笑ってくれた。
だから俺は母親が好きだったし、自分のやっていることにも自信を持っていた。
見た目もハンサムで可愛らしかった為(母親がそう言ったんだ)、それも母親から褒められて、有頂天になっていた。
外見的特徴は何より分かりやすい。
その頃は自分のことをカッコいいと本気で思っていたので、それを母親にも後押しされて天狗になっていた。
小学生の頃からこんな難しいカフカの変身を面白いと読んでいるなんて、僕は特別な人間なんだ。
人の特徴を瞬時に捉えてモノマネができる僕は、芸能人にだってなれるに違いない。
見た目だってカッコいいし、実際にモテている。
今、思えば盛大な勘違いなのだが、当時はそんなことはわからない。
純粋に自分がいかにすごい人間かと酔いしれていた。
それもこれも母親のせいだった。
もちろん母親に悪気はない。
でも純粋な子供というものは、人の言うことを真に受けるものだ。
当時の僕は母親からの絶賛を一身に受け入れてしまった。
周りの人間とは違う、僕は特別な選ばれた人間なのだと。
それは子供の頃や若い頃特有の感情なのだが、当時はそんなことがわかるわけもなかった。
そしてそれらの勘違いは、大人になってから僕を苦しめる原因となった。
そんな心持ちだから、当然何をやっても出来るはずだし、一番になるはずだ。
でも現実は違う。
自分より賢い奴もいれば、もっとカッコいい奴なんて腐るほどいる。
中学までは良かった。
中学までは地元の奴らしかいなかったから。
いわば井の中の蛙だったから、現実を知る由もなかった。
でも高校に行くと違う。
自分の住む地域以外から、色々な奴がやってくる。
上には上がいることを思い知る。
そこで僕は愕然とした。
そして傷ついて落ち込んだ。
悔しかったし、自分が惨めになった。
それからは常に自信がない。
何をやっても自信が持てないし、実際に大したことのないレベルだとわかっているのが辛い。
本来はそれを努力で克服していくわけだけど、僕はもう何だか嫌になってしまった。
僕はすごいのに、何で一番になれないんだという感覚が抜けない。
これは母親の呪縛だ。
この自惚れは大人になってからも残っている。
だからいつまで経っても自分の実力を認められない。
本当は出来ない大人のくせに、過去の出来事に縛られて、しかもそこにはプライドもあって抜け出せない。
人をバカにする癖も残っているし、まぁそれは毒舌ということで味のある性格ともとっているけど、でも根底には人を見下す意識がある。
それは人間の真実だとわかりつつも、何だか嫌だ。
爽やかなのは気持ちが悪くて鳥肌が立つと思っている反面、心のどこかで純粋に爽やかな心持ちにもなってみたいとも思っている。
でも全ては過去の呪縛のせいで恐らくこれは死ぬまで変わらない。
もうこんな歳になっても未だに意固地で自分の実力が認められないんだ。
暗く長いトンネルはいつまでも続く。
本当は、本当は、俺も明るく生きたかったと思うところもある。
俺は教訓を得た。
子供は褒め言葉を間違って理解する。
俺のように一生苦しむ可能性がある。
褒めてその子がうまくいけばいいが、俺のように勘違いをして道を逸れてしまうと目も当てられない。
俺の人間性の問題もあるが、例えばこれは教育にも通ずる。
教え方一つで心の形成に重大な影響を及ぼす。
でも結局は俺自信の問題でもある。
母親のせいなんかじゃない。
母親の影響はあったが、母親のせいにはしたくない。
俺だ。
俺がもっと努力をする人間であれば、いくらでも立て直せたのだ。
自分の非を母にぶつけるなんて、大好きな母親にそんなことをする自分なんて嫌いだ。
努力をしろ、努力を。
いつまでも人のせいにするな。
グダグダいう暇があったら努力をするんだ。
わかったか、このクソやろう。
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