【随筆】美しいものと恐怖と(端的に僕について)
美しいものを数えようと思った。
背後から、ただ忍び寄ってくる真っ黒な不安から逃げるように。
この世で一番美しいものは何だろう。紺色の空に浮かんだ黄金色の月だろうか。それとも青空に透ける白百合の花びらだろうか。
もしかしたら猫が運んできたツバメの骸の、きらきら輝く青い羽根だろうか。それとも灼熱のアスファルトに焼かれた甲虫の、黒光りする体だろうか。
僕にとっての「美しいもの」は少しだけ拗れて、捻じ曲がっている。眠る君の鼻筋と睫毛の生え際を、とても美しいと思うのと同