建設現場でがんばる若いゼネコンマンへ 〜その10〜
【一級建築士と1級建築施工管理技士(2)】
前回、一級建築士の学科試験合格まで、お話ししました。
いよいよ製図試験に向けて、講義が始まりました。
しっかり、製図版も購入し、準備は整っていました。
学校はもちろんそのまま"日建学院"です。
製図の講義は、ビデオではなく"人"なんですね。
いわゆる学校スタイルで、講義は進んでいきます。
はっきり言って、よくわかりませんでした。
これは、先生の善し悪しでは無く、全く僕の問題だったと思います。
"何がわからないか?"
もはや、何がわからないかも、わからなかったと思います。
まあとにかく、絵が描けないですね〜。
演習問題で、まずはエスキスを行うんですが、これが全然出来ない。
プランがまとまらない。
演習問題は何回あったかな?
確か6〜8回くらいあったかな?
その間、講義時間内にエスキスがまとまったことは、正直一回もありませんでした。
講義も後半になればエスキスだけで無く、そのまま製図に入り、しっかり図面の精度まで先生にチェック・評価をしてもらえます。
A〜Eランクまで評価があったと思いますが、最高で"D"だったと思います。
それも、エスキスのみの時で、そのDも当然合格基準には達していませんでした。
何せ、まとまっていないので、当たり前です。
とにかく、「エスキスがまとまらなければ、絶対に合格出来ない」と言われていましたので、製図試験直前期には、演習問題を中心にひたすらエスキスの訓練をしました。
その結果、一度も完成図面というものを描き上げたことが無いまま、製図試験の日を迎えました。
この日も、僕は決めていたことがありました。
それは、
『最後の一秒まで喰らいつく』
です。
最後の一秒まで、全力で図面に向かう覚悟をしていました。
そして、試験が始まりました。
テーマは、正式なタイトルは忘れましたが、図書館だったと思います。
試験時間は4時間(だったかな?)
問題を読み、エスキスを始めました。
設定条件からパズルのピースをはめるように、どんどん部屋を配置していきます。
『お、なんかいい感じにはまったぞ』
割りと早い段階で、一旦いい感じにはまりました。
『さあ、ここからの調整が・・・』
なんて思いながら、見直します。
『あれ?はまってる?』
『直すところ無い?』
『これ、いけてる?』
『あ、いけてる!』
『これだ!』
その瞬間、全身がぞくっとしました。
咄嗟に時計を見ると、開始まだ30分しか経っていませんでした。
また、更に鳥肌が立ちました。
『まだ時間はたっぷりある』
『もしかしたら、本気でいけるかも?』
そう思うと、一心不乱に図面を描き始めました。
一度も完成図面まで描いたことはありませんでしたが、さすがに描き方は勉強していました。
なので、知ってる知識は総動員して、怒涛の如く描き進めました。
線の太さ、濃さ。
文字のバランス。
丁寧に丁寧に。
心に決めていた通り、最後の最後まで筆を動かし続けました。
最後の一秒まで。
一回も完成図面を描いたことが無かったのに、描き切れたことは一度も無かったのに、本試験で初めて完成図面を描き上げました。
もちろん、やり切った感でいっぱいでした。
ただ、それでも合否については、全くわかりませんでした。
製図試験も合否は、葉書で届きました。
(今はネットでわかるんですかね?)
しかも、届くのは"12月24日"。
クリスマスイブです。
その日も仕事でした。
自宅に帰り、郵便ポストを見ると葉書が・・・。
【合格】‼️
嬉しさ半分、"信じられない"という驚き半分。
というのが、正直な気持ちでした。
と同時に、これ以上無い安堵感。
この日は、最高のクリスマスイブになりました。
と書いてしまうと、"まあ普通に勉強して、受かっただけじゃん"と思われてしまうかも知れません。
しかし、思い出して頂きたいのが『学科も製図も、試験直前まで合格圏のはるかに外側にいた』ということです。
"直前の伸びがすごいでしょ"なんて言うつもりもありません。
何しろ、全くその実感は無かった訳ですから。
なので、自分で言うのも変ですが、『これこそ奇跡』なんだと思います。
それは単に合格したという事実だけでは無くて、"学科がどの程度出来たのかわからない中、突破出来たこと"、"製図のエスキスがわずか30分で出来たこと"、場面場面の奇跡の積み重ねが合格に繋がったと思います。
そして唯一、僕が頑張ったことがあるとすれば、試験直前まで愚直に学科の過去問を繰り返し、試験直前まで愚直に製図のエスキス演習を繰り返して、本試験に臨んだこと。
そして何より『最後の一秒まで諦めないで喰らいつく』ことが出来たことだと思います。
その"諦めない気持ち"が奇跡を引き寄せた気がします。
じゃないと、説明がつかないんですよね。
「もう一回受験しろ」と合格の直後に言われていても、『絶対に無理』と自信を持って言えたので。
そしてこの翌年、僕は"1級建築施工管理技士"も取得します。
しかし、一般的に現場担当としては「一級建築士を取ってから1級建築施工管理技士を取るのは順番が逆」と言われていました。
何故か?
当たり前ですが、施工管理技士はより現場に関する知識・知見を求められるので、「現場担当であれば普段の仕事と直結しているところも多く、合格しやすいだろう」ということです。
それに、建築士と同じように学科・実地と二段階試験になっているんですが、学科について建築士が5択なのに対し、施工管理技士は4択。
これを踏まえても、「建築士の方が難しい」といわれていました。
施工管理技士の学科試験は、建築士の学科試験の前に行われました。
建築士試験の前哨戦のような感じです。
大抵は、"施工管理技士の学科試験を突破し、その勢いで建築士試験に臨む"という流れでした。
僕の結果は、
【不合格】・・・。
絶対に建築士に合格したいその年の、建築士に合格するなら受かって然るべきの施工管理技士の学科試験に落ちました。
これは、本当にショックでした。
特に自信があった訳ではなかったと思いますが、『ここをクリアするのが前提』となんとなく自分でも思っていたので。
しかも、この不合格がわかったのが、建築士の学科試験の直前だったと思います。
『一級建築士は今年もダメか・・・?』
この時はさすがにそう思ってしまいました。
一番落ち込み、一番危機感を持った時だったと思います。
しかし、運良く建築士は合格出来ました。
建築士に挑戦中の先輩からは「お前、逆なんだよ!」と突っ込まれました。
そして、建築士を取得している者は、施工管理技士の学科試験が免除されるということで、僕は翌年実地試験のみ受験して、無事に1級建築施工管理技士を取得することが出来ました。
まあ、ちょっとミソがついたということで、施工管理技士試験も、僕にとって思い出深いものになりました。
そして、この2つの資格がこれまでの僕を、そして今もこれからの僕を支えてくれる大きな武器になっています。
今でも思うのは、
『あの時、精一杯喰らいついて良かった』
『奇跡を与えてくれた神に感謝』
ということです。
"努力は必ず報われる"とは言いませんが、"自分なりにでも、精一杯がんばっていれば、自分にとって良い道を示してもらえるのかな?"という気がします。
なので、この気持ちの持ち方は、今でも自分の行動の『軸』になっていますね。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?