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【メインストーリー】君に会いたい。 蓮二編
各人物のプロフィールはこちらをご覧ください。
二人のはじめての出会いはこちらをご覧ください。
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蓮二は私立女子校の校門横の街路樹の影に立ち、
腕を組んで周囲に視線を向けていた。
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黒髪を自然に流し、制服のシャツの第一ボタンを外したラフな着こなしが目を引く。
道行く女子生徒たちの視線がちらちらと彼に向けられ、
「あのカッコいい人、誰?」などと噂をするが、蓮二は気にも留めない様子でじっと前方を見据えていた。
しばらくすると黒髪を靡かせた制服姿の麗奈がやってきた。
瞳は夕日に照らされ美しく輝いていたが、蓮二の姿を見つけるとその瞳を丸くして彼を見つめた。
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「あれ?蓮二さん?どうしてここにいるんですか?」
と尋ねる声には、ほんの少しの驚きと柔らかな笑みが混じっていた。
蓮二は視線を彼女に向け、口角を軽く上げて笑いかけた。
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「やっときたか、麗奈。偶然近くに用事があってさ。」
自然体の笑顔と共に、腕を組んでいた手を解き、彼女の横へと歩み寄る。
麗奈が顔を傾けて微笑みながら
「本当に偶然ですか?」と聞く。
「ああ、まあな。でもせっかくだし一緒に帰るか。」
と言って二人は歩き出した。
蓮二と麗奈は夕日の中、並んで歩き始めた。
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空は茜色に染まり、彼らの影が長く伸びていく。
麗奈が蓮二に合わせようとして歩調を早めるのに気づいた蓮二は、
ふっと笑みを浮かべ「しょうがないな。」と言いながら、
わざとゆっくりと歩いた。
柔らかな風が吹き、麗奈の黒髪がふわりと揺れた。
蓮二は何気なく彼女の横顔に視線を向ける。
夕日に照らされた麗奈の顔に、蓮二は思わず息を呑んだ。
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蓮二には麗奈がキラキラと輝いているように見えた。
美しさに見惚れながらも、言葉にはせず、ただそっと目を逸らした。
「今日の学校はどうだった?」
蓮二は何気ない調子で尋ねたが、その声にはどこか親しげな響きがあった。
麗奈は少し考えるように視線を前に向け、
「いつも通り…かな。でも、放課後に友達と少し話してて遅くなっちゃいました。」と微笑む。
彼女の笑顔に蓮二は軽くうなずき、
「ああ、それで俺を待たせたわけだな。」
と、意地悪そうな口調で返した。
「蓮二さんが待ってるなんて知らなかったから… !」
麗奈は慌てて言い返しながらも、笑いを含んだ声だった。
その反応に、蓮二は肩をすくめながら、「冗談だよ。」と軽く笑った。
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二人の間には穏やかな沈黙が流れ、歩く音だけが響く。
蓮二はポケットに手を突っ込みながら、
「お前、こんな時間に一人で帰るの危ないだろ。」と呟いた。
麗奈は彼を見上げて、
「でも、こうして蓮二さんが来てくれたから大丈夫ですよ。」
と素直に言った。
その言葉に蓮二は一瞬だけ照れたような表情をしたが、すぐにいつもの余裕の笑みを浮かべ、
「まあ、俺がいれば安心だろ。」と自信ありげに答えた。
道端の街灯がひとつ、またひとつと灯り始める中、二人は肩を並べて歩き続けた。
夕暮れの中、どこか心地よい静けさと、微かな期待が漂っていた。
君に会いたい。 蓮二編 終わり