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もしもわたしがインディー・ジョーンズなら



20年ぶりに釧路へ帰ってきた。


どういうわけか、父が異常なまでに市役所の食堂をオススメしてくる。なにかしらの手続きがあったついでに食事でもして気に入ったのか、この1ヶ月半のあいだに何度も会話にすべりこませてくる。


私も引越しの手続きでお世話になったので、地下に食堂や喫茶店があることは知っていたが、なにかとバタバタしていたので食事やお茶をしているゆとりはまだなかった。お店の場所にも難があった。


地下のお店が苦手なのだ。どんなにフロアが広くて開放的なつくりでもなんとなく息苦しさを感じる。気のせいなのはわかる。それでも外での食事やお茶のときは、可能なかぎり窓があって外を眺めることができるお店が好ましい。


だからたぶんそこには行かないと思うよ、という会話を父と交わした数日後、野暮用で市役所を訪れた。



オススメされたらまずは行ってみる素直さが私の長所だと思う。おやおや、なんだかレトロかわいい。その部分だけで店先の雰囲気が変わるから、看板の書体って大切だなぁと感じる。

市役所の食堂に名前があるのもいい。入り口の横にまりもの生態について貼ってあるのもほほえましい。



メニューもザ・食堂なラインナップ。日替わり定食が2種類と、丼ぶり、ラーメン、そばうどん、カレーライス。うん、いい。価格も400~500円前後といいかんじ。やさしい。



?????


北海道の、道東の、釧路市役所で、
八王子ラーメン???
……八王子ラーメンてなに???

さっそくグーグル先生に教わる。



なるほど。はじめて知った。
さっそく注文してみる。



【日替わりB定食/500円】

・八王子ラーメン・ライス・漬け物
・小鉢は4種類から選べる


ふむ。見た目は釧路の一般的な醤油ラーメンのようだ。まずはスープを。ん、うまい。私好みだ。それから細めのやや縮れ麺を。うん、うまい。なるほど。違いがないことが判明した。


釧路市役所のまりも食堂にて、釧路ラーメンと八王子ラーメンはほぼ一緒であるという学びを得た。斬新で貴重な体験だった。大満足。(チャーシューは500円のラーメンとは思えないほど大きくぶ厚かった)


はてさて、
喫茶店はどんなふうだろうか。




…………。


" 雰囲気がいい " を通り越して魔界かブラックホールの入り口だ。(すいません)あまりに写真が暗かったのでこれでも明るく加工している。


なんというか、喫茶店にもかかわらず一見さんお断りの空気が漂っているというか、もはや公開秘密基地と言っても過言ではないだろう。この扉の向こうで憩いのひとときを過ごせるのだろうか?(すみません)


『喫茶スター』という店名の昭和キラキラ感も、お気軽にご利用くださいなどとかかげる看板も、なにかの罠のように思えてならない。やや距離を置いて遠くから眺めても圧倒されるものがある。とてもお気軽には入れそうもない。


もしも私がインディー・ジョーンズならば、その好奇心と勇敢さを発揮してなんのためらいもなく扉を開けるのだろう。残念ながら私はインディー・ジョーンズではないし、散歩程度は好きだが特筆するほどアドベンチャーでもない39歳の無職の女だ。


そう。アドベンチャーではない。ないけれど、それなりに喫茶店好きの女ではある。札幌からUターンして1ヶ月半。最初のころは実家近くのお菓子屋さん『柳月』にひたすら依存していた私も、最近ではスターバックスやタリーズやミスタードーナツなどにもお世話になるほど成長(?)した。


そう。成長したのだ。だがしかし、釧路へもどってからまだチェーン店以外の喫茶店へ行っていないことにこのときあらためて気づかされたのだ。んぐぐ、な、なにをやっているんだ私はっっっ。


" 釧路の喫茶店 "
私にとってそれはまだ未踏の地で、ならば市役所というマチを発信する施設で営業するこのお店でデビューするのもよいのでは、と思った。さんざんイジっておいてなんだが、どうやら私はこの公開秘密基地喫茶がかなり気になっているらしい。


39歳。やってみよう。アドベンチャー。
近い将来、私は再びこの魔界への扉、いや、ブラックホールの入り口、いやいや、公開秘密基地喫茶の前に立ち、なんともいえない微妙な形のポップが過ぎるドアノブに手をかけるだろう。


そのときがきたら、ぜひともこの公開秘密基地喫茶(またの名を『喫茶スター』)でコーヒーをのみ、公開秘密結社なるものでも組んでみたいと思う。


ん。楽しみだ。
秘密結社ってなにやるんだろう。



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