いつか食べた鯖。
私は、レシピ本を買うということは滅多にない。幼い頃、母は定期購読で主婦雑誌を毎月何冊か買っていたし、お菓子やパンのレシピ本を買っては新しい料理を作り、食卓に並べてくれていたものだった。我が家のダイニングテーブルは大きな木のアンティーク風の円卓で、やわらかな黄色と水色の、プロヴァンス製のテーブルクロスが掛けられていた。そこで家族みんなで毎晩ちゃんと「食事」をしていた。
今は、家庭のあり方も変わって、冷蔵庫の中に残っている食材を検索するだけでお料理サイトに飛んで、都合のいいレシピやアイデアをささっと教えてもらえる。私も、それを見ながら、ちょっとスパイスを変えたり加えたりして、なんとなくの、名前のない食べ物を出すことも多い。よく言えば「創作料理」なんだけれど、輪郭のない食卓だなあとこのところよく反省を込めて思っていたので、こないだ本屋さんでちょうどいい家庭料理のレシピ本を買ってみた。それで、鯖のローズマリー焼きを作った。いい本に巡り合えたなと思った。
レシピを見ながら作るということは、完成に向かうプロセスなんだと思った。当たり前なんだけど。完成形がある。それがあるかないかだけでその一皿が纏っている雰囲気が変わって「料理」になる。この整った感じ、週に2回くらいは家庭の中に、作りたいものです。