
入れ歯には一生なりたくないと強く思った話
『歯』が大切であることは誰もが知っている周知の事実だと思う。
歯磨きしなくてもやってけるよぉなんてほざく人の何割が虫歯で何割がいつか入れ歯になるかは知らない。でもそう言う人を信用してはいけないということだけは知ってる。
私が歯をいかに大切であるかを知ったのは幼少期。あれは多分、保育園時代。
よく聞くのは幼少期虫歯になって歯医者に行って治療された時のトラウマ。
あのキュイーーンという馬鹿でかい音がスキな人なんて世の中にいるんか?そいつはドMか?
確かにあの音も苦手。でも私が歯を大切だと思わずにはいられなくなったトラウマは他にある。
それは、親戚で集まった時のこと...。
多分85歳を超えていたと思うけど、私にはひいおばあちゃんがいた。
元気と呼べるほどの元気はなくて、座っている印象が強くて口数も少なかったひいおばあちゃん。
私はひいおばあちゃんを『おおきいおばあちゃん』と呼んでいた。
子どもがスキなのかもよく分からないくらい絡みもないし、ひ孫全員謎な人物だと思っていた。
おおきいおばあちゃんが1人で歩いているところなんて見たこともなかったし、誰かにサポートされていることが多かった気がする。
そんなおおきいおばあちゃんが1人でに立ち上がった場面を、私は今でもよく覚えている。
あの時私を含めたひ孫は和室の部屋で遊んでいたんだけど、隣の居間にいたおおきいおばあちゃんがのっそりと立ってゆっくり私たちの前に現れたの。
何やら無言で手招きをしてきたから、私たちはタンスの前で1列に並んでおおきいおばあちゃんの目の前まで行ったの。
こっからがトラウマの始まり、鮮明な記憶。
おおきいおばあちゃんは、私たちに笑顔を向けてきたの。
『初めて見た、おおきいおばあちゃんの笑顔』
そんなふうに思った幼少期の私。
歯も見えるほど、おおきいおばあちゃんは笑っていた。と思ったら、おおきいおばあちゃんは口から何やら取り出してきた。
私は小さかったから、それが何なのかすぐには分からなかった。
孫全員に何かを見せびらかしてきた。私の目の前に‘それ’が現れた時、私は衝撃で言葉を失った。幼少期ながら、言葉を失う経験をした。
‘それ’の正体は、"入れ歯"だった...。
それから、私たちにこう言った。
「ちゃんと歯を大切にしないとねぇ、こうなるんだよ。」
そう話していたおおきいおばあちゃんの上の歯は無かった。
あの時の衝撃、それから言葉。
大人になった今でも覚えている。
ワンナイトした人の名前を忘れることがあっても、マッチングアプリの存在を忘れることがあっても、絶対にあのトラウマだけは忘れない。
おおきいおばあちゃんは私にトラウマというものを植え付けてくれた。
今思えば、体現して教えてくれていたのだと思う。
でも、何の脈略もなく、歯の話があったわけでもなく、急にひ孫に入れ歯を見せてきたのは怖すぎた。
それから、あの時入れ歯を見た全員が大人になった今、詰め物も銀歯もなく過ごせているのは、凄すぎるのでは...?
おおきいおばあちゃんのあの行動がなかったら、1人くらいは歯を大切にすることが出来なかったかもしれない。私自身、あの体験がなかったら虫歯と友達になっているかもしれない。そう思うと歯ブラシと友達になれて本当に良かった。
恐怖体験をさせるって、今現在はたぶんあんまり褒められることじゃないよね。トラウマを植え付けさせて実感させるのは、良くないのかもしれない。
もう少し歯の大切さについて知らせるってやり方があるんだと思うけど、あの時があったから今がある。
少なくとも私はそう思っている。
歯を大切にしなさいってのは分かるし、ムシムシガガガームシガガガーの虫歯建設株式会社の音楽も相まって、虫歯が怖いのも分かる。
分かっちゃいるけど歯磨きが億劫と思っているそこの貴方!
一回虫歯建設株式会社の歌を聞いて、虫歯の恐怖を知った上で、自問自答しなさい。
『将来入れ歯になりたいか』ってね?
そんなのなりたい訳なかろう!!!!!
だったら今すぐにでも歯ブラシを買い替えて心も入れ替えるべきだし、今までのチリツモがあるのなら山となる前に歯医者に行きましょう。
もう遅いなんてことはありません。
今ある歯、全てを大切にしましょう。
PS.あの時入れ歯を見せてくれたおおきいおばあちゃんへ
今は天国にいるおおきいおばあちゃん。
あの時歯の大切さを教えてくれてありがとうと面と向かって伝えることは難しいけど、今でも感謝しています。
私が健康な歯を守りたいと思えたのは、紛れもなくあのトラウマがあったから。
あの時の思い出、これからも忘れません。
どんなに忙しくても、どんなに酔っ払って帰ってきても、何があっても、私は歯を守るよ。
歯ブラシと大親友になって、入れ歯とはフォーエバーグッパイ出来るように。
あのおおきいおばあちゃんの入れ歯が、私の入れ歯人生の最後であるように。
私は死ぬまで自分の歯で美味しいものを噛んで笑っていたい!!