【小噺 #6】絆

優斗（兄）と翔太（弟）は、まるで鏡に映ったように瓜二つの双子だった。二人は幼い頃から同じ服を着て、同じ髪型をし、周りの人々を困らせては楽しんでいた。両親でさえ、時には二人を見分けることができないほどだった。

小学校五年生の夏、些細なことから始まった喧嘩が大きくなり、兄の優斗が階段から転げ落ちて大腿骨を骨折した。大層な怪我だった。

高校二年の夏、二人は友人たちと海水浴に出かけた。その日、突然の強い潮流に巻き込まれ、二人は沖へと流された。必死に手を取り合うも、パニックに陥った二人の意識は徐々に遠のいていった。

気がついた時、二人は病院のベッドの上にいた。医師たちは奇跡的な生還だと喜んだ。しかし、二人の意識は戻っていない。

翔太には美咲という中学時代から付き合っている彼女がいた。彼女は毎日病室に通い、翔太の回復を祈り続けた。意識を取り戻した翔太を見て、こみ上げる喜びと同時に何か違和感を覚えたものの、それが何なのかわからなかった。

***

ある日、二人で映画「君の名は。」を観た時、翔太は冗談めかして「オレと兄貴が入れ替わったら面白いよな」と言った。美咲はその言葉に妙な引っかかりを感じたが、すぐに忘れてしまった。

映画館を出たあと、夕焼けに染まる空を眺めながら、美咲がぽつりと口を開いた。「心って、どこにあるんだろうね。」

翔太は少し考え込みながら歩いていたが、笑って答えた。
「そりゃ脳にあるんじゃないの？ だって、全部考えてるのは脳だろ？」

「でも、それだけじゃない気がする。悲しいときは胸が痛くなるし、怒るときは体全体が熱くなるじゃない？」美咲の言葉に、翔太はふっと目を細めた。

「そう言われると、確かに心ってどこか一箇所だけじゃないのかもな。体のあちこちに散らばってるのかもしれない。」

「うん。だから、誰かの心が違う体に入っても、その人自身を完全には隠せないんじゃないかな。」美咲の言葉に翔太は立ち止まり、少し照れくさそうに笑った。

「そうかもな。でも、俺の心はちゃんと美咲の隣にいるから安心しろよ。」

その言葉に、美咲は立ち止まった彼を振り返り、ふわりと微笑んだ。
「……そっか。じゃあ、私も安心していられるね。」

美咲の笑顔は夕陽に溶け込むように柔らかだった。

***

時は流れ、翔太と美咲は結婚し、可愛い娘にも恵まれた。彼らの家庭は誰が見ても幸せそのものだった。休日には家族で出かけ、笑顔の絶えない日々を過ごしていた。

ある夏の日、家族で川遊びに出かけた時のことだった。娘が急な流れに巻き込まれそうになり、翔太は躊躇することなく川に飛び込んだ。娘は無事だったが、力尽きた彼はそのまま流され、帰らぬ人となった。

葬儀の後、夫の遺骨と対面している美咲に、葬儀屋がぽつりと呟いた。「ご主人、昔大腿骨を骨折されたんですね。ほら、ここに痕が残っています。」

その瞬間、美咲の中で、十年以上も前に胸の奥に抱えた違和感の正体がわかった。翔太は一度も骨折などしていないのだから。

美咲は夫の遺骨を前に微笑みながら涙を流した。
「それでも、あなたはあなたよ。一緒にいられて幸せでした。ありがとう。」

その言葉には、心と体を超えて寄り添い続けた夫への感謝と、二人が紡いだかけがえのない愛の日々が込められていた。

構想：私
執筆：Claude 3.5 Sonnet with ChatGPT