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アヤちゃんの新刊に、苦しくなって、嫉妬して、でも嬉しかった。
覚悟がいる本だと思って、いつ買って読もうかとタイミングを伺っていた。
アヤちゃんの本はこれが6冊目で、最初に読んだ「尼のような子」は僕にとってバイブルみたいな本になっている。
同い年の同じセクシャリティの男の子が、自分とそう遠くない場所に住んでいて、苦しんでいて、自分の好きなモノには思いっきりときめいて、その対象がヒトとなると笑っちゃうくらい不器用で破滅的で。今読み返すと、誰も死なないダンサー・イン・ザ・ダークみたいだなあと思った。映画でのビョークの歌声はこの本ではアヤちゃんの文章表現に置き換わっている感じ。辛い出来事でもアヤちゃんにかかっちゃうと、その文章力でしっかりきらめかせられちゃう。
こんなの読んだら、そりゃアヤちゃんの生き様がきになってしょうがない。
アヤちゃんには悪いけど、新刊を読むたびに、相変わらず息苦しそうだなぁと確認してはホッとしていた。あぁ自分だけじゃないわーって。
一方で、性分的に不幸を選択してしまうようなアヤちゃんの気質に、そのうちフィジカル的にも自分を痛めつけるんじゃないかってヒヤヒヤしていた。自発的じゃないけどお腹弱い描写もよく出てくるし。ヨーグルトとか納豆とかキムチとか、発酵食品をぜひ積極的に食べてほしい。
アヤちゃんに彼氏ができたらしいと知ったとき、え、何、これからは幸せになっちゃうの?これまでのアヤちゃんはもう見れないの?ってモヤモヤした。自分に恋愛の音沙汰がなさ過ぎて嫉妬したところもあるんだけど。「お前なに勝手に幸せになってんだよ」って。
ネットで、「少年アヤ 彼氏」で検索しても出てこない。モヤモヤ…。
それからしばらくアヤちゃんの情報を遠ざけていた。
しかし新刊が出ちゃったわけである。もしのろ気だらけだったら…うわぁ…そう思うと暫く読む気になれなかった。
でも気になってしょうがない。Twitterで流れてくる感想文が期待を煽ってくる…。こうなったらため息をつきながらでも読むしかない。
明日納品の動画素材がお昼を過ぎても来ないので、酒でも飲みながらアヤちゃんの新刊、読むかと決心。下北のB&Bだったらあるかなと思って行ったらあったので買っちゃった。
以下感想。
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ハッとさせられた場面があった。
アヤちゃんが、もみくんからのプレゼントをもらって「だいじ」という言葉が浮かんだ場面。実家の光景がよみがえった。
僕には自閉症の姉がいる。彼女は物心ついたころから、アイロンで焦がしたガーゼ生地の布切れが好きで、どこに行くにも持ち歩いていた。その焦げた布切れを、彼女は「ダイジ」と呼んでいた。
ガーゼをハサミで切って、それを水で濡らして、アイロンをジュゥっと押し当てて「ダイジ」を作る。冬場は石油ストーブの上でジュゥっと焦がす。そうやって定期的に量産する「ダイジ」を姉は30数年間片時も放さず持ち歩いている。「だいじなモノ」と言うより、それ自体が「ダイジ」というとっておきのモノ。
そんな経験があったので、もみくんからのプレゼントを「だいじ」って表現していたことがたまらなかった。そんな風に思えるプレゼントを渡してくれた彼がどんなに「だいじ」か。泣きそうになって本を閉じた。焦げたガーゼのにおいを思い出す。そういえば自分にとっての「だいじ」は、上京資金としてほとんどメルカリに出してしまったな…でも売れる程度のものなら「だいじ」じゃなかったのかも、なんて考えたり。
でも、恋愛のへたくそさは案の定というか、アヤちゃんの息苦しそうな様を含めて、やっぱり愛おしかった。読む前の、すっかり幸せになって遠くへ行っちゃいましたって報告の惚気け本だったらどうしようという懸念は、読後ほちっともなかった(ちょっとはあったけどそう感じているのはこちらの精神状態によるものなのでアヤちゃんは悪くない)。
やっぱり今後も見守りたいし、何より自分も進まなきゃという気になって、読み終わって一息ついたら、なんだかワクワクしてきた。
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息苦しい、ほんとに息苦しい。世の中って。生きるって。
さっきまでいたスタバも、入る前はカップルだらけだったらどうしようとハラハラしていた。そんなまざまざとマイノリティを実感させられる場所で今回のアヤちゃんの本なんか読んだらダブルパンチだ(ほんとに些細なことで嫉妬してしまう)。
僕はアヤちゃんでもあり、もみくんでもある。お金がないところもそっくりだ。そんな二人が幸せになろうと頑張って生きている。こんな世の中を。超偉いよ。だから俺も頑張る。二人を見守ろう。ほんとに見てるだけだけど。
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←この本だけは手放せなかった。俺にとっての「だいじ」。