<テレビ感想>眠らない街の、あの病院

ドラマ『新宿野戦病院』が終わって、もうすぐ半年。

にもかかわらず、
テレビで事件が起きた場所が新宿と聞くと、
つい、あの病院がある街、と結び付けてしまう。

歌舞伎町だし、売春とか外国人とか、リアル『新宿野戦病院』



母の味

ドラマの中で、バグライス、という見知らぬ料理が出てくる。

これ、主人公のヨウコが子どもの頃によく食べた、
いわばおふくろの味なんだけど、
ヨウコの母親、リツコが昔働いていたお店が「BUG」で、
そこから来ている名前だとわかったのは、最近のこと。

↑ 公式Xにあった、バグライスのレシピ。

見た目はドライカレーっぽい。その上に目玉焼きが乗っている。
黄身をつぶして混ぜる。

半熟の黄身をつぶして食べる。
これ、日本人なら9割の人が好きだと思う。
しかし私は、残り1割。食感が苦手。もしつくるなら、目玉焼きの黄身はかためでつくりたい。



「すべての仕事は売春である」

パパ活をする女子高生や、
ホストに支払うお金のために風俗で働く女性など、
ドラマに出てきた、体を売ってお金を稼ぐ女性たち。

これは現実の世界にもある。

漫画家、岡崎京子先生は、
漫画の中で、「すべての仕事は売春である」という、何かから引用した
言葉を載せていた。

その言葉を初めて見たとき、そんなことはないと思った。シンプルに。

ただ、よくよく考えてみると、
人生の一部の時間は「お金を稼ぐこと」に使われているし、
消費されてもいる。
ああ、もしかして、そういうこと?

調べてみたら、ジャン=リュック・ゴダールの言葉だそうです。

『pink』に出てくる主人公の女の子の仕事は、
会社員とホテトル。つまり、派遣の風俗嬢だ。

男性に体を売っているので、合法的に売春しているともいえる。

だから、彼女自身が消費されているのに、それについて、なんとも思っていなさそうだった。ただ、それがお金を稼ぐ方法、普通に稼ぐよりたくさん稼げるから、という感じ。悩んでいるようにも見えない。

ホテトルより、会社で働くほうが「つまらない」と感じていそうだった。

著者が考えたこの作品のキャッチコピーは
「愛と資本主義」

主人公は、愛を手に入れようとしていたけど、はたしてあのラストはどうだったのか。

お金で愛は買えない(買える、なんて言う人もときどきいるけど)。
まあ、アダルトなお店に行ったら、お客さんだから、そういう意味では買えるけど。


「きれいごと」だけで、人は生きられない

ドラマ『新宿野戦病院』の登場人物、
舞は、
NPO「Not Alone」の代表をしていて、
さらにSM嬢の女王様もしている。

SMで稼いだお金は、NPOの活動資金にも回しているらしい。

けど、自分がいる新宿歌舞伎町の現実に、「怒り」のような感情を抱えていた。それは、パパ活をする女性や、女性を買う男性に。いくら言っても、大久保公園周辺の歩道に居座り、動こうとしない。

ところが、新種のウイルスが広まったとたん、彼らは街からいなくなった。

舞のしていることはボランティアで、良いことだ。
でも、それを多くの人にほめられたり、認められていたわけではなかった。

自分がずっとしてきたことは何だったのか。いくら言っても話を聞かない人もいる。他人に手を差し伸べることは、無駄や徒労でしかなかったのか。
舞は亨に「むなしい」とも言っていた。舞にも、普通の人と同じように承認欲求があった。

ネタバレにはならないように感想を言うと、
世の中、清濁両方あるのに、舞は、にごったところが許せなかったんだろうな。

前出の、売春する場所を提供していたニュースひとつとってもそう。

Not Aloneの意味は、「一人じゃないよ」
舞が、誰かに言われたほうがいい言葉になっていた。これって皮肉だよな。


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