<テレビ感想>『ザ・ノンフィクション』クズ芸人の「ダメさ」は、反面教師にして(2/3)

ひとつ前の記事の、続きです。


「絶対やり切るんだったら、100万円出してやるよ。絶対やるんだったら」

「やり切るよ」

「絶対だよ?」

「うん」

と、土下座したままで、「悪いな」と言うんだけど、
この「悪いな」の言い方が、100万円を貸してもらう人の言い方にしては、なんか、軽すぎるんですよ。これにはすごい違和感があった。

懇願された室田さん、お金がないから、と「就職祝い」と言って3万円を小堀さんに差し出す。つまり、これ返さなくてもいいってことだよね。

で、この3万円に対しても、「悪いな」と軽いトーンで言った。さっきの「悪いな」と、言い方がほぼ同じに聞こえた。
この、お金を貸してもらうまでのやりとりを見ていて思った。
「この人ヤバい」と。

さらに、このあと食事に行こうと誘った室田さんに、2人分のお金も出させる小堀さん。調子がいい。
室田さんが根っからのいい人で、小堀さんにお金が無いのを知っていたとはいえ。
すごい自然な流れで、おごってもらうことが決まった。

きっと、こんな感じなんだろう。ギャラ飲みでも。透けて見えたような気がした。
小堀さんって、お金を出してくれる人(やさしくて、気前のいい、良い人)を見極める能力が、実はすごいんじゃないか。

そして、結婚相談所に滞納していた会費、11万円を払う。

さらに、何回か入ったことのある地元のラーメン屋へ。突然、店に来ていきなり頼まれたのに、ラーメン店の店主は、小堀さんの「修行させてほしい」という頼みを了承してくれた。
小堀さん、「一生懸命、死んだ気になってやりますんで」と。これは本気だ。

すごい、この行動力。それに運もいい。
が、私のこの気持ちも、数分後に真逆のものになる。

翌日から働けることになり、次の日。

ナレーション「小堀さんは、姿を見せませんでした」

……はい。ああ、そうですか。

ラーメン店の前で待っていた番組スタッフも、あきれたに違いない。
本人に連絡をとり、来させようとしなかったのは、番組的には正しい判断だったかもしれない。(番組スタッフが動かした、演出、ということにもなってしまいそうだし)店主からの電話には、出なかった。

さっき思った、「この人ヤバい」は、間違っていなかったと強く確信する私。

その後、約束した時間から1時間遅刻し、現れた小堀さん。遅刻の理由は、二度寝。ここで、「もう帰って」と言われてもおかしくないのに、面接はしてもらえた。

ただ、テレビに映った履歴書に、「えっ……」と思わず引いてしまった。
学歴・職歴として書かれていたのは、専門学校卒業と、ワハハ本舗に入社と退社、その3行のみ。いや、これだけ? 働いたこと、無いの? ゼロ?

なぜ事務所を辞めたのかを訊かれ、言いにくそうに「約束を破って」と2回も。
店主は「病気だ」と言い、「どんな人でも24時間あって」それを割いている、と約束を守らないとはどういうことなのか、
穏やかな口調ではあったけど、説諭した。

雇えない、と断られた小堀さん。

番組スタッフに「わざとですか?」と、遅刻はわざとやったのかと疑われる。

店主が、自分のネームプレートをつくってくれて、そこまでしてくれるいい人だったのに、と落ちこんでいた。小堀さん、どうやら店主に申し訳ないと思っている。(「どうやら」の部分に、まだ信じられない気持ちが出ている)

さすがにこれは精神的にダメージが大きかったようで、とぼとぼとした足取りで自転車を押す。その向こう側に、「スタッフ募集中」の張り紙が映る。なにこの、ナイスタイミング。

その日の夜、スタッフへのLINEに、

「色々考えたのですが、人生に疲れました。」

「実家も大変
 婚活もダメ
 仕事もダメ
 自分は現世に向いてないのを思い知りました」

すごい落ちこんでいるのがわかる文章の、最後に

「出家したいと思います」

ここでCMに。

「はっ?」と一瞬、よくわからなくなり、ちょっとだけ笑ってしまった。おもしろくて、じゃなくて、この意味不明さ、なんでそうなったのかがわからなくて。気持ちはほとんど「あきれて」出た、ふっという小さな笑い。


小堀さんは番組スタッフに、「(自分は)仕事ができない」と言っていたけど、そこじゃないと思う。
たぶん、ラーメン店の店主が雇わなかったのも、婚活した女性たちがNOを出したのも、
相方の室田さんが言っていた「なめている」「ふざけている」と思われる部分につながるのでは。

結婚相談所の女性にも。
自分の言動のせいで、「本当にそう思っているの?」と人から思われてしまうことに、危機感がない。それはつまり、他人から信用されなくなるってことなのに。

人との向きあい方、例えば、
思ったことを、人に言ったそのときは本気であったとしても、行動ができなくて、言ったこととは違っていたら。
それは、「嘘だった」と思われるし、人から信用されなくなる。

そういえば、室田さんには「絶対やり切る」と言っていたのに、
実際にしたことといえば、ラーメン店での修行の話が自分のせいでなくなったことぐらい。
借りたお金は、どうなったの?

ラーメン店の店主には、「一生懸命、死んだ気になってやりますんで」と言ったのに。それも、次の日にはわかったけど、一時的な感情だったのか。

すごいな。イライラしたりしないけど、テレビを見ていて、こんなに人に対して「あきれる」ことってないかも。ネットニュースの記事に「神回」と書かれていたのは、ああ、こういうことだったのね、と納得する私。
まじめな人だったら、もう、怒りがこみ上げてきてるんじゃないだろうか。

CMが終わり、小堀さんはまた室田さんのところに。ここで、何か精神的に良くない影響があると感じたのか、番組を見るのをやめた。
いや、見なくてもすでに知ってる。ネット記事見てるし。

またしても、小堀さんは室田さんに不義理を重ねる。
「出家する」と言いだし、この時点でよくわからないのに、
室田さんに「上杉謙信も武田信玄も」と武将の名前を出し、自分もその武将のように出家する、と言ったときには、
あまりにもわけがわからなくて、たぶん、私の目が点になっていたと思う。

そして、話を聞いていた室田さんは、小堀さんの頭を殴った。
「人生をなめるな」と、以前、お金を貸したときに言ったことと同じような言葉を使って。

さて、番組の終わりまで残り数分。小堀さんは室田さんに怒られ、殴られたあと、床屋で髪をそってもらい、坊主頭になって戻ってきた。
出家するのは本気、それと謝罪の態度をしめそうとしたそうだけど、これには、笑ってしまう室田さん。

室田さんにお寺を紹介してもらい、3日間の修行体験をした。
ところが、

ナレーション「そして、私たちの暗い予感は的中します」

小堀さんは2日の昼に、逃げ出してしまいました。

ギャラ飲みが増える、年の瀬の、現世へ」

ここで番組は終了。
「眠い」と言って、畳に寝転がっている、小堀さんの頭部が画面の中央に。



というわけで、出家はしないで、髪をそって坊主になった小堀さんは、
俗世間に戻ってきた、と。

なんだか、最後のあたりは急にダイジェストみたいになって、駆け足で終わったような。これは想像だけど、撮影を続けようにも小堀さんが逃げ出してしまい、続けられなくなったから、こんな風に番組を終わらせるしかなかったのでは。

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続きます。次が最後です。


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